第66話 1年生の終わりと成績表

 1年生の年間行事の中に遠足後に文化祭というのが予定されていたが、遠足事件後は学園側がバタバタしていて一年生は中止になったらしい。


 運動会は途中で中止、遠足では魔狼襲撃事件、文化祭は中止。


 なんかトラブルばかりの1年であった。

 こんなにトラブルが続くのは学園創設以来初めてらしく、入学式でしか見たこと無い学園長は心労の為に吐血して入院中みたいだ。


(クラスメイトの誰かがトラブルメーカーなのか? ……みんな考えているかもしれないが、そんな事は考えてはいけない。 それは誰も幸せにならなそうだから……。)




 ☆



 冬になり遂にマイホームの住宅部と店舗部が完成した。


 住宅は目立たないように普通の外見にしている。

 外壁はクリーム色のレンガ風になっているボードを採用して雨で汚れが落ちる特殊加工をしている。

 屋根にも特殊加工されたボードが張られていて少しの衝撃では割れないようにしてある。

 人族の平均寿命が100年位なので一応100年は大丈夫な作りにしてある。


 店舗部は見た目が夢のお菓子ハウスになっている。

 家というか小さな城かな……。

 本来はひっそりとしたレンガ風の店舗予定だったが、デザイナー心が悪さをして外見だけ遊んでみた。

 外壁にはクッキー型のボードを張り付けてあり、窓や屋根部分はいろいろなお菓子の形をしている。

 色は周りの住宅に馴染むようにしてあるがインパクトは凄い事になっている。

 普通の店舗に特殊加工のボードを張って遊んでいるだけなので外観にクレームが入れば直ぐに変更出来るようにしてある。


 住宅部の入り口付近に小さな噴水を作り、リラクゼーション効果のあるポーションを循環させて流している。



 まだ店舗を作っただけで、人を雇ったり商品の検討も終わって無いからオープン予定は半年後の夏頃を予定している。


 今のところ1階のお菓子部は日替わりのお菓子を1種類だけ販売して席などは作らずに店頭販売のみにするつもりだ。


 2階の雑貨部は適当に失敗したポーションやアクセサリーを置いて雑貨屋の雰囲気を出していくつもりだ。

 失敗作と言っても見た目は悪くなく、効果が期待したものにならなかっただけで欲しい人には売れるだろう。


 ちなみに【虹結晶】のセシリアは住宅地下1階に作ってある研究室に移動してある。



 ☆



 そんな感じで冬が過ぎ、学園の1年生が終わろうとしていた。


 1年生が終わるなら付いてくるものが成績表。


 この時期だけはみんな自宅に帰される。


 冬休み期間は2ヶ月間もあるので戻るときは2年生になっている。


 という事で自分、ブラット、エレナは帰るための馬車に乗っている。


「はぁ~。 やべえ、オヤジに怒られる…。」


「そんなに悪かったの?」


「たぶんブラットは計算とか文字が壊滅状態にゃ~。」


「ああ、ブラットの両親は鍛冶屋と食堂で商売してるから計算とか文字がダメだと厳しそうだね。」


「そうなんだよな……。」


「私は単純に勉強不足を怒られると思うにゃ。」


「というかエレナが勉強してるところは見たことあるけど、ブラットの勉強してるところを見たことが無いんだけど?」


「私も放課後のブラットは修練所でしか見たこと無いにゃ。」


「……俺もしてないけど、レイも勉強してなくね?」


「僕は入学前から低学年部分の勉強は終わっているんだよ……。」


 正確に言えば高学年の基礎部分もだけどね……。


「ずるいな……。」


「そう言えばレイの成績はどうだったにゃ?」


「……成績部分は良かったよ?」


「成績以外に何があるんだ?」


「担任のコメント欄が酷いかもしれない。」


「そんなことあるのか……? ちなみに何て書いてあるんだ?」


「『落ち着きがなく、もう少し考えてから行動しましょう。 他人の意見をもっと聞くと良いでしょう。 成績は良いですが、授業中に別のことを考えてるように見られますので……』その後もいろいろと書かれてる。」


「……結構な事を書かれてるな。」


「……そうだにゃ。」




 ☆



 家に着いたら両親と妹が出迎えてくれた。


「おかえり! レイ。」

「レイ、おかえりなさいね。」

「にぃさま。おかえり~」


「ただいま、お父さんは久しぶりだね。」


「ちょうど仕事のキリが良くてな。 レイの帰宅に間に合って良かったよ。」


「にぃさま~。」


 妹が腰にしがみついてきて離れない。


「相変わらずフローラは可愛いな~。」


「えへへ~。」


 可愛いから頭をナデナデする。

 なんかコーデリアさんやシンシアさんより背が高いな?


「フローラは大きくなったね。」


「うん!」


 将来は自分と同じ位の身長になるかもしれないな。


 ☆



 夕食の時にお父さんから遠足時の事を聞かれる。


「レイは魔狼に襲われて怖くなかったか?」


「数が多くて少し怖かったけど、大丈夫だったよ。」


「あの辺の山に大量の魔狼が出たって事は魔素がかなり濃くなってるのかもな。 今度俺達のパーティーが暇な時に周りの魔獣を全滅させておくかな。」


「私が学園の近くに住んでいたら魔狼位は軽く全滅したのにね~。」


「えっ? お母さんは回復専門の魔法師だよね?」


「ん? レイ、ソフィアの通り名は【死神メイサー】って……。 いや、忘れてくれ。」


 お母さんから危ない気配がした……。


「私達の強さになれば魔狼は雑魚だから余裕よ?」


「魔狼が雑魚なんだ?」


「そうだな。魔狼は単体は初心者冒険者でも余裕なレベルで、群れてれば少し苦戦するレベルだからな。 ベテランになればいくら来ても負けるやつはいないな。」


「お父さん達は凄いんだね~。」


「まあ、俺も【魔剣召喚】が無くてもそこそこ強いからな。」


「【魔剣召喚】を使ったら?」


「はっはっは、【魔剣召喚】を使ったら山ごと無くなるよ……」


「それはヤバいね……。」


「そう言えばレイ、成績表は?」


「これです……。」


 成績表をお母さんに渡す。


「……レイ。」


「はい。お母さん。」


「この担任のコメント欄は何かしら?」



 ……。


 両親に怒られた。




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