第64話 遠足、その後。

 ロナルド先生と一緒に学園へ戻ったら、コーデリアさんとシンシアさん、マーティナさんが思いっきり泣いていた。


どうやら自分が身を犠牲にし、魔狼に殺されたと思っいたらしい……


まあ、数匹の魔狼ですら危険なのに、80匹近い魔狼を引き連れて逃げたら、それは死んだと思うか……


 しかし、そこまで心配されると、本当に申し訳無い気持ちになるな。自分的には割りと勝算があり、無事に帰って来れると思っていたけど、みんなは囮役として1人で死に行ったと勘違いされたらしい。

後日、お詫びとして何か甘いものでもご馳走しよう。


ああ、ブラットとエレナは流石は幼なじみというところか、自分が勝算も無しに囮になるはずがないと確信していたらしくて、無事を疑わなかったらしい。


「だってレイは危険回避が凄いから無謀な事はしないだろ?」

「そうだにゃ。レイは保険や勝算がないとあんな事しないにゃ。」


「信頼されてる……のか?」


「レイとはずっと一緒だからな、大体分かるぜ」


「それもそうか」



 ☆



 そして、ブルーノは無事だった。


 背中の傷は少し残るらしいが後遺症もなく元気になるみたいだ。

 しかし、お母さんみたいに瞬時に超回復させる様なチート回復師は学園にいないみたいで、少しの間は入院するらしい。

 お母さんの簡単に使っている傷跡すら分からなくなるほどの回復魔法はやっぱり普通ではないのだなと痛感した。


 ブルーノの職種である【ホワイトナイト】のおかげで守りも出来るアタッカーというか盾職らしく、職種効果で危機に陥ると堅くなり、自然回復も上がるのでなんとか助かったのもあるみたいだ。



 それにしてもブルーノは友達を庇って重傷とかかっこいいなと思う……普段の性格もイケメンだし、外見もイケメン。


 ブルーノはパーフェクトなイケメンですか?


 そして、入院してる間、別クラスの女生徒や上級生が噂を聞いてお見舞いフィーバーしたらしい。


 物語なら彼が主人公かもしれないと思ってしまった。。



 そんなブルーノを毎日のようにお見舞いに行った同級生は1人しか居なかった。


 それはマーティナさんである。


 エレナの話ではマーティナさんはブルーノに助けられてから、今日お見舞いを行くうちに、ブルーノを好きになったらしい。

 あと、背中の大きな傷を凄く責任を感じているのだとか。


 しかし、ブルーノを好きになったマーティナさんにはライバルが多そうで大変だな……。


そのことをエレナに話したら、「にゃ~」とか溜め息をつかれた。


どういうことだ?




 ☆


 それから自分達のクラスだけだが、授業が1ヶ月間の中止になった。


 理由としては、今回の事件はかなり大事で学園の出資元である聖教会の方からは偉い人が何人も来て事情確認の為、先生やクラスメイトのみんなから話を聞いたりしていた。


 聖教会が出資している学園や学校でも命の危険がある授業をやるところはいくつもあるらしいけど、それは基本的に生徒が覚悟を持って授業を受けていることが前提で、今回みたいな低学年の一年生が命の危険にさらされる事はあってはならないので、再発防止などの指導と先生の再教育があるみたいだ。


先生の再教育があると話していた時の嫌そうな表情が印象的だった。

何でも聖教会の再教育はかなりハードな内容という噂らしいが、実際、何をするかなども知らされていないから、今から不安なんだとか……


 あと、クラスメイトの家族で希望者は聖教会のお金で学園に来てもらい保護者会が開かれた。


 うちの町からはエレナのお母さんが代表として来ていた。


 自分のお母さんは妹が居るし、ブラットの両親は仕事が忙しいからみたいだ。


 どうせ自分達はすぐ実家に帰るってのもあるから来なかった。


 みんなの親も理解があり、モンペみたいなクレーマーな親は居なかったらしい。


ああ、そう言えばクレームではないけど、エリーさんはエレナに対して、もっと上手く立ち回るようにと注意されていた。

自分としてはエレナとブラットは生徒の中ではかなり活躍した方ではないかと思っていたが、エリーさんの求めるものは自分が想定しているよりも遥かに高いらしい。

週末に帰ってきた時、エリーさんの猛特訓があると聞いたエレナの絶望感のある表情としっぽが明らかに力を失っていった姿は当分忘れられない気がする。

というか、それだけ厳しい特訓をしているからエレナは強いのだろう……


自分ももっと修行の時間を増やすか?


ちょっとコーデリアさんとシンシアさんに話して、朝のトレーニング時に軽く模擬戦もいれるか?


 そう言えば、コーデリアさんとシンシアさん、アランの親はなかなか簡単に来れる距離ではないらしいので来なかった。


エルフの里も気になるが、アランの故郷である魔大陸は凄く行きたいな……


ちょっと前に実家へ帰った時、お母さんに魔大陸についてきいたら、大人になるかお父さんを倒せるようになるまで行くのは禁止と言われてしまった。

お父さんを倒せる強さって、ほぼ行かせる気は無いのだなと理解したけど、魔大陸には魔人族以外を受け入れない守護神みたいなものがいて、その強さは単体のお父さん以上だからという、理由があった。

お父さんより強い守護神って、どんな感じの人なんだろうと興味があったので聞いてみたら、レイには秘密よと言われたのだ。


ちなみにお母さんの話ではエルフの里も一般人には入ると迷う呪いが発動するらしいので、お母さん達もエルフの里には行ったことが無いらしい。



 ☆



 遠足事件で学園が休みの間、1ヶ月近く自由な時間が出来たのでいろいろなことをしていた。


まずは日課の修行量を増やした。


これはエリーさんの影響もあるけど、やはり自分達が弱いから、先生たちの足を引っ張ったことにより起きた事件でもあるなと考え直したのだ。

まあ、クラスメイトは正真正銘子供なので一切の責任は無いが、自分はやはり精神的には大人なので、自分がもっと強くなれば良かったのではと後悔していた。

全く魔狼に敵わないのなら諦めまもつくが、周りに人がいない状況ならば魔狼を倒せたのだ。

ならば、もっと自分が修行を頑張っていれば結果は変わっていたかもしれない。


増やした修行は、朝にコーデリアさんとシンシアさんからの攻撃をひたすら回避するか受け流す事をした。

昼はエレナやブラットとの模擬戦、夜は【魔導操作】や属性付与などひとりで出来る精密さを上げることに集中した。


身体を鍛えるのも大切だが、やはり【魔導操作】こそが自分の利点だろうから、どんなに忙しくても【魔導操作】などの訓練は毎日続けていた。



 あと修行以外には、先日購入した土地に建設予定の住宅と店舗の地下部分だけ完成させた。


 2つの土地にはずっと別色の防音シートをしており、防音シートが目隠しみたいになってるから近所には、店舗の方は販売予定のお菓子を配り、住宅の方は説明だけしておいた。


 ちなみに店舗側の持ち主を金髪巨乳美人の容姿でマカロンという名前にした。


 住宅側は年配男性でビターという名前にした。


 そして、住宅側の地下と店舗側の地下は地下2階部分が繋がっている様にして地下通路を使い、2つの建物を行き来出来るようにした。

 

 住宅側の地下1階は遠足の時に考えた【虹結晶】と【虹魔石】の量産施設になっており、魔獣の血液が入ったカプセルがびっしり並んでいる……地下室はかなりシュールな感じで、聖教会にバレたらヤバいのではないかと、ちょっと不安になったが【虹結晶】などはどうしても欲しかったので、リスクを恐れず決行した。

 


 先に住宅側を完成させてから、店舗側を造ろうとと考えている。


 住宅はパネル式にして工期を一気に短縮し、約1ヶ月で完成させる予定で、店舗は【魔導操作】による魔素型枠?で鉄筋コンクリートにする。

 鉄筋や生コンクリートも【魔導工房】で作り終えて【ストレージ】に入っているから、あとは組み立てるだけになっている。

 店舗の工期は2ヶ月後位の予定で開店は内装次第になる。

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