第59話 バリー

【バリー視点になります。】




 夏の暑い教室での授業がやっと終わり、このまま直ぐに寮へ帰るか、修練所に行こうかを迷っていたら、珍しくクラスメートのレイに話しかけられた。 普段は真っ直ぐ帰るのに何だろう?


「最近のバリーは生傷が多いけど、今日もこれから修練でもするの?」


「確かに、この傷は修練が原因だけど。 今日は修練をするか迷っていてね。」


「ん? なんか悩んでるの?。」


 そう言えば、レイはエレナさんと幼なじみだったか。 レイに話してみようかな?


「エレナさんにアスレチックで勝ちたくてさ、修練しているんだけど、今のところ全敗なんだよな……。」


 アスレチックとは、丸太で作られたトラップ部屋をいかに速くゴールするかの競技なんだが、俺はアスレチックのスピードにかなり自信あったんだけど、この前にエレナさんと初めて勝負してみたんだけど、絶望的な差で負けてしまい、それからは鍛えながら何度か挑んでいるけどエレナさんには全敗していた。


「ああ、その敗北感はよくわかるよ。 僕なんて幼なじみだから特にね……。」


 レイの言葉からは妙に重さを感じるときがあるんだよな。


「だけど、レイは魔法ありの勝負なら、かなり強くないか? 何度かエレナさんにも勝てているって聞いたことあるよ。」


「確かに、最近になって模擬戦でもエレナに勝てるようになってきたけどさ、新しい戦法を考えて試すとエレナに勝てたりするけど、すぐにエレナが新しい戦法に慣れて、あっと言う間に負け越すんだよ。」


「俺達の学年でエレナさん、ブラット、アランの実力は化け物級と言われているらしいからな。 他のクラスにいる友達が話していたよ。」


「それは言えてる。 しかし、何でもありの条件での模擬戦や森での戦いならブラットやアランは、ほとんどエレナに勝てないだろうね。 エレナはそれくらいに強いよ。」


「まじかよ。 エレナさんはそんなに強いのか。」


「うん。 エレナが模擬戦で氷属性魔法を使ってたりするのを見たこと無いでしょ? 僕も親から雷属性付与の使用を止められているけど、エレナも親から氷属性魔法の使用を止められてるんだよ。」


 レイの話では、レイやエレナさんの使う属性魔法は強過ぎるために、人へ向けた使用は禁止されているみたいだった。

 俺達の年齢でも属性魔法を使える人はいるけど、実用レベルまでの練度はほとんどないけど、レイやエレナさんの場合は使わない理由が違うのか。


「俺にはエレナさんに勝てないのか。」


「でもさ、なんでエレナと勝負を始めたの?」


「最初はさ、おれの職種が【シーフ】だからアスレチックなら誰にも負けないかなと思っていたんだ。 だから似た職種の人に勝負しては全勝していたんだけどさ。」


「それで【レンジャー】のエレナに勝負を挑んだのか……。」


「おれも最初は自信があったんだよ。だけどエレナさんと競争したら完敗でさ、なんかエレナさんと勝負してたらおれも少しは上に行けるんじゃないかと思い始めたんだ。」


「バリーすごいな……。」


「しかし最近は勝負する度にドンドンとメンタル削られていって修練するか迷っているんだよ。」


「間違いない……。 けど勝負するんじゃなくてバリーのアスレチックで頑張っているところを見てもらって、アドバイスを貰えば?」


「おお! それは良いアイディアだけど、エレナさんはそこまでしてくれるかな?。」


「僕が聞いてみるよ。」


 エレナにバリーの件を相談してみると……


「たまになら良いにゃ。」


「俺はたまにでも良いからお願いします!」



 そして俺は1ヶ月位、アスレチックを挑み続けた。




 ☆




「バリーの取得しているスキルに身体強化的なのは無いのかにゃ?」


「いや、俺はそういうタイプのスキルは無いな……。 あるのは【鍵開け】【サーチ】だよ。」


「ん~。 バリーには言いづらいけどにゃ~。」


 何の事だろう……?


「何かダメなとこがあれば言ってもらって大丈夫だよ。」


「なら言うにゃ、バリーはアスレチック修練のスピード勝負を挑むけど、バリーの特性はスピードじゃないにゃ~。」


「え?」


「1ヶ月近く見たけど、スピード系の成長速度が運動系の才能が無いレイより悪いにゃ~。」


「おいエレナ! 僕が見学してるの知っていて、僕までディスるなよ!」


 今日たまたま見に来ていたレイが文句を言ってくる。


「レイはほっといて、私は狩り全般が得意なタイプの【レンジャー】にゃ。 だけどバリーは先行して【索敵】や【罠解除】する事に特化したタイプの【シーフ】な気がするにゃ。」


「そう言われると確かにすんなり納得が出来ちゃうな……。」


「正確なところはわからないにゃ。 不得意な事もあとはバリーの努力次第で何をしても可能性はあるにゃ。」


(1ヶ月近く手伝ってくれたエレナさんの意見だ。)


「修練の方向性をエレナさんが言ったみたいにしてみるよ。」


「頑張るにゃ~。」


「1ヶ月も修練に付き合って貰ってありがとうな!」




(よし、今あるスキルを伸ばす感じて頑張るぞ!)



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