第57話 物件探し

 ダンディー執事と謎の青年に【虹魔石】を売却して大量の資金を手に入れたので、次の日に自分は不動産で物件を見てまわろうと思っていた。


 もちろん今日も金髪巨乳美人に変身して来ていた。


 不動産屋に入るとカウンターに眼鏡をかけたお姉さんが座っていたので話をかける。


「すいません、小さな食堂と雑貨屋を開業出来る物件を探しているのですが、良いのはありますか?」


「商売ですと大通りが良いですか? 大通りで店舗の密集地は価格が上がります。」


「立地よりも……間取りと値段がのっている物があれば見せて欲しいのですが……。」


「それでしたら大通りで空き物件のリストをお見せしますね。」


 空き物件を見せてもらったけど、食堂なら20席位の客席に厨房が5坪位で4千万コルト。

 雑貨屋などに使える店舗は什器や棚が付いていて10坪位の広さで1.5千万コルトか……。


 これより大きくなると学生の自分では管理したり、対応するのが出来なさそうだと思った。


 大通りにある物件は築年数が全て20年は超えていて、ボロそうだ。


 悪くはないけど、良くもない感じがするな……。


 しかも、間取りが悪いのが多い気がする。


 よく考えたら大通りじゃない方が、のんびり経営が出来て良いかもしれないな……?


「ちなみに、住宅地に店舗を開いても良いんですか?」


 前世の日本みたいに区分けされたりするのかな? その辺を調べてくるのを忘れたな。


「住宅地では騒音や風紀に気を付ければ店舗を出しても大丈夫です。後は日照の関係で建物の高さが制限されています。」


 日照による近隣との高さ制限などは日本と同じだな。

 それなら感覚的に迷惑にならないようにするのは問題なさそうだ。


 なら、いけるか?


「住宅地で店舗として使える空き物件はありますか?」


「住宅地ですと、空き物件は今のところちょっと無いですね。店舗ではなく住宅しかないです。」


 そんな希望通りにはならないか……。


「それじゃあ、土地だけを150坪位買うとしたら、いくら位になりますか?」


「住宅地の相場が坪100万コルト位で、現在空いている土地で近いサイズだと、120坪のところしか無いですね。」


 土地だけで1.2億コルト位か……。


 建物に関しては考えがあるから資金は足りそうだな。


 地図も見せてもらったが、立地も悪くは無いかも。


「ちなみにそこの土地の高さ制限や地下の制限はありますか?」


「高さは4階位で地下なら2階位ですね、厳密な制限は無いですよ。下水道とかは道路上にあるから大丈夫です。」


「それでしたら、現地を見て良さそうなら買います。」


「いろいろな経費を含めると1.3億コルト位ですので、ローンとか組みますか?」


「いえ、現金一括で!」


「えっ!?」





 ☆




 不動産屋のお姉さんと一緒に土地を見に来たら、近くに公園があり、穏やかな住宅街だった。


 雰囲気が気に入ったので、即決で購入した。 


 店舗で失敗してもセカンドハウスにすれば良いだろう。


 と言うか、流石は異世界。


 お金さえあれば土地が買えてしまった。


 【認証の指輪】すら提示されなかったからな。


 土地を購入する際に名義を2つにして、土地を40坪と80坪の2つに分けてもらった。



 ☆



 寮に帰ってから、自分は先ほど購入した時に建てる予定の店舗図面を書いていた。


 購入した土地の80坪側には3階建て地下2階の店舗と庭に倉庫を作り、40坪側の土地には普通の2階建て住宅を作るつもりだった。


 そして、両方共に地下2階まで作り、2つの建物を地下通路でつなげる予定だ。


 店舗に関しては急いではいないから、【建築】スキルの使い心地を確かめながら、1人で地下スペースから作ろうと考えていた。


 多分、計画通りに作れば半年後には完成すると思う。


 住宅側は木造で作り、店舗は鉄筋コンクリート造にする。 倉庫はプレハブみたいなので良いかな。


 店舗部は1階でお菓子販売、2階は雑貨屋、3階は休憩室や空き部屋。地下部分は秘密の部屋を作っている。


 当初は食堂にしようとしたが、よく考えたら料理指導とかの人材育成がいろいろ大変だから止めて、自分の作るお菓子販売のみにする事にした。


 厨房も企業秘密的な感じで住宅部の地下1階に作る予定にしている。



 さて、まずは地下から作る為に、材料揃えないといけないし、やることが多いな……。



「(ますたー おつかれさまです。)」



「……?」


 声が聞こえた気がしたので部屋の周りを見回しても誰もいない。


 寮の狭い部屋に、誰か知らない人が居ても怖いけどな……。


「しかし、幻聴が……?  最近社畜ばりに動いてるから疲れてるのかもな……。 今日は早めに休むかな。」



「(ますたー ここです。)」


「………。」


 声が聞こえた方を見ると、【巨大血液濃縮循環機】しかない。

 しかも【虹結晶】辺りから聞こえた気がした。



「やばいな、【虹結晶】から声が聞こえるぞ……?」


「(はい、そうです。 ますたー。)」


「えっ……。 マジで聞こえる?。 【虹結晶】に意志があるの?」


「(はい、すこしまえにきがつきました。)」


「何で意志が芽生えたかは解る?」


「(それは、わかりませんが、ますたーのきおくがながれてくるかんじがしました。)」


「というか意識して会話しないと聞こえづらいな。 その【血液濃縮循環機】から出した方が良いかな?」


「(このなかがここちよいです。)」


「ふむ。 スキルによる不思議現象が起きるのは今更だな……。 僕はレイだからこれからよろしくね!」


「(わかりました。 ますたー。)」




 こうして、意志のある【虹結晶】と寮の部屋での奇妙な共同生活が始まるのだった。


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