第53話 そんなアナタに良いものが……

 運動会の中止になった次の日の教室にて。



 シンシアさんはみんなの前で土下座をしていた……。


「ご、ごめんなさい……」


 シンシアさんはエルフ族の子供だから、6歳だとしても見た目が4歳位にしか見えないのだが、そんなシンシアさんに泣きながら土下座をさせていることが、みんなの良心にダメージを与えていた。



 例え、みんなが止めてもシンシアさんが自主的に土下座していても……


 罪悪感か半端ないのだ。



「シ、シンシアさん、土下座は止めましょう! みんな怒ってはいないのですから。」 


 先生が土下座を止めさせようとするが……


「せっかく、みんなが、がんばって、いたのに……」


「いや、あれは事故ですから。次から気を付ければ大丈夫ですよ。」


「みなさん、だけでなく、全学生に、もうしわけ……」


 どうすれば良いんだよ、これ……。




 そう思っていたら、エレナがボソッと話しかけてきた。


「レイ、この空気をなんとかするにゃ……多分だけど、シンシアさんの失敗はレイが関与しているから、半分はレイの責任のはずにゃ」


「えっ……あのシンシアさんの暴発は僕にも責任があったの?」


本来なら自分に責任があると言われても、誰だろうと納得は出来ないだろうが、エレナが言うのならそうなのだろうなと納得してしまった。


何故ならエレナがこういう事を言っているときは、ほとんどが正しいからだ。


「多分そうにゃ、だから何とかするにゃ」


「無茶振りだよ……。」


「私の【野生の勘】がレイに任せろって言ってるにゃ。」


「……エレナ、適当な事を言ってない?」


スキルがレイに任せろって……言うか?


「にゃ~?」


う~ん。


どうするかな……


 実はいうと自分に解決策がある。


 正確には解決させる為の【魔導具】があることはあるのだが……シンシアさんに渡すか迷っていたんだよな……。


 しかし、エレナの【野生の勘】が良いって言うなら、まあいいか。


「シンシアさん」


「れ、レイくん?」


「シンシアさん……今回シンシアさんは確かに全生徒に迷惑をかけたかもしれません……しかし、将来シンシアさんが凄い【魔法使い】になったとしたら、みんなは昨日の出来事をどう思うと思います?」


「どうなるのか……分からないです……」


「僕のお父さんが起こした事件みたいに、皆さんの笑い話みたいな良い思い出になるかもしれません」


まあ、多分、ならない可能性の方が高いかなと思ったけど、今はそんなことはどうでも良いだろう。


「良い思い出……でも、私にそんな、凄い【魔法使い】には……」


「そんなアナタに良いものがありますよ。」


「えっ? よ、よいもの……?」


「はい、現状が解決出来るスペシャルアイテムです。まあ、最終的には今後のシンシアさんの頑張り次第ですが……シンシアさんならば出来ると僕は信じています。」


「スペシャル、アイテム……!」


 シンシアさんはハッとした様な顔つきになる。


 若干、適当な事を言ってるから軽く流して欲しいな……。


「そうです! 僕が昨日の夜、シンシアさんの為に、とある【魔道具】を用意しました!」


「わ、わたしの為に……?」


「そうです。これがシンシアさんの為に作った【魔力低下のネックレス】です!」


 ジャジャーン という効果音が付きそうな感じでネックレスを取り出す。


「これを、わたしに?」


「はい。効果は装備すると常時【魔力】を低下させるだけのものですけど、シンシアさん位の【魔力】量なら力を出そうと思えば出せるので、無意識下で手加減してくれる【魔道具】だと思ってください。」


 正確には総合魔力を一定値まで低下させるという謎仕様なのだが。


これをつければシンシアさんの全力【魔力】が10だとすると、あの謎ドーピング【魔力】は300位の異常な上乗せをしてくるのを50位まで抑えてくれるというものだ。


これならばシンシアさんの全力の5倍に抑えられるから、ある程度はシンシアさんの方の努力で何とか出来るだろうと思った。



 ……そこで先生が口を出してくる。


「レ、レイくん? 能力低下を常時発動する【魔道具】は基本的に【呪い】系統に入る【魔道具】で、本来ならば国が厳重に管理するべき【魔道具】なんだよ? 6歳の君がどこでそんな危ないものを……」


 の、【呪い】系統の【魔道具】……?


 知らぬ間にヤバい【魔道具】を作ってしまったのかな。


 いや、しかし今更シンシアさんに渡さないのもな……。


 シンシアさんは目をキラキラさせながらこちらを見ているのだ。


 そこに希望が有るかのように……。


「先生! そんな事は今のシンシアさんには些細な事です! シンシアさんはどう思いますか?」


「はい! それを使って、挽回したい、です!」


「いや、しかしレイくん。【呪い】はね……。」


「先生、ネックレスなので服の下に隠せます。それとも先生にはもっと良い解決策があるんですか? あるならば、僕は即刻この【魔道具】を破壊しますよ?」


「いや……解決策はないが……」


「先生、わたしは、レイさんの、【魔道具】、なら例え、呪われても、大丈夫です!」


「………。」


「レイくん、君は……。」


 ロナルド先生、そんな詐欺師を見るような目で、生徒を見ないでください……。 


 いや、詐欺師みたいなものか……?



「よし、俺は何も見てないぞ! 問題だけは起こすなよ!」



 そして、ロナルド先生は逃げた……。



 シンシアさんが喜んで【呪い】の【魔道具】を着けている姿を見た、みんなの無言の視線が自分に刺さり痛いな……。





「(……コーデリアのライバルが出現したにゃ。)」


「(えぇ……。)」




 なにかエレナとコーデリアさんがヒソヒソ話をしてるな?




 後日、シンシアさんには別の【魔道具】も追加で渡しました。


【魔力認識のメガネ】

 付けると魔力を感じられる様になる眼鏡。


 自分の【魔眼】みたいに【魔力】をはっきりと見ることは出来ないが、感覚的にどれくらいの【魔力】があるかを感じられるようになる眼鏡を作った。多分、シンシアさんも成長すれば眼鏡無しでも【魔力】を感じられるようになるだろう。




 こうしてシンシアさんは魔力暴発闇落ちロリメガネっ娘という属性もりもりな子になった。


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