第51話 運動会 1年目 前半
今日は【チェスガン学園】の全学園生が参加する運動会の日。
この運動会はスキルありのガチで危険な競技だが、本来の目的はクラスメートたちが力を合わせて競技に勝つことで仲良くなってもらいたいということらしい。
だから運動会の結果は成績に影響しないと言われている。
しかし、みんなやるからには勝ちたいと言うのが、ほとんどの生徒の考えである。
自分も前世ではあまり運動会ってやる気はなかったんだが、スキルありということならば勝ち目があるんじゃないかと思い、やる気満々だったりする。
ちなみに、うちのクラスの競技種目と参加選手はこうなった。
50メートル走(エレナ、ブラット、ブルーノ、バリー)
障害魔法レース(レイ、シンシア、クライブ、コーデリア)
干し肉食いレース(バリー、アラン、エレナ)
二人三脚(レイ、コーデリア、シンシア、クライブ)
玉当て(全員参加)
綱引き(全員参加)
闘技戦(ブラット、ブルーノ、アラン、マーティナ)
リレー(全員参加)
大体1人2種目+全員参加の競技をする感じだった。
それにしても運動会という名前もそうだが、なぜか前世に似た競技名や流れになっている……これは絶対に転生者の影響があるだろ……。
まずは学園長の挨拶から始まり。
資金出資をしている聖教会の偉い人?挨拶。
そして準備体操を全員でやった。
☆
第1競技 50メートル走。
この50メートル走は何故か全学年による合同勝負だから、ほとんど1年は勝てないらしい。
高学年と1年生とでは年齢差が4歳……子供時代の4歳差はかなりデカい。
そもそもなんで学年別にしないのか、先生に聞いてみたら先生もよく分かっていないらしい。
この先生は何となくだがポンコツ感があるんだが……大丈夫かな?
ブラット、ブルーノ、バリー、エレナの順番にどんどん走っていった。
「先日の走りを見て分かってはいましたけど、エレナさんは高学年と競っても速かったですね。」
コーデリアさんはエレナが高学年と一緒に走るのを見て驚いていた。
確かに自分もエレナが高学年に対してもいい感じに健闘しているのを見て凄いなと思った。
自分には到底無理なレベルだ。
「そうだね、エレナは昔からいろいろと規格外だったよ……ちなみにエレナのお母さんがエレナに対して幼少期から狩りの英才教育をしてたから、森の中ならもっと凄いらしいよ。」
それでもエレナは速かった……とは言っても、3年生と同じ位のタイムで、ブラットとブルーノも頑張ったが2年生の上位と同じ位のタイムだった。
「……レイくんの町は凄く強い人いっぱい居るみたいですが、何故なんですか?」
「確かにブラットのオヤジさんも強いらしいけど、たまたまなんじゃないのかな? 町自体は特に目立ったものがないところだし」
「レイくんのお父さん1人でも過剰戦力になるこんよ!」
コーデリアさんの隣の席で応援していたクライブくんが興奮気味で話に加わってきた。
コーデリアさんはお母さんのファンだけど、実はクライブくんもお父さんのファンらしい。
クラスメートの中にファンが2人も居るだなんて、自分の家族はどれだけ人気のあるのだろう。
「クライブくんは詳しいんですね」
「商人として情報は大切だこん! コーデリアさんも何か知りたいことがクラスメートだから、今なら無料で教えてあげるこんよ」
そう言えばクライブくんの話では、お父さん1人で全王国騎士団員以上の強さらしい。話を聞いた時は都市伝説みたいなものかと思っていたが、それだけ【魔剣召喚】というスキルがぶっ壊れ性能みたいだ。
「本当ですか? それでしたら、安くて美味しいスイーツが食べられるお店を教えて欲しいです!」
「それなら【チェスガン】中のスイーツ店を後で教えて上げるこんよ。だけど、高いお店の方が美味しいと評判のお店は多いこん」
「私、あまりお金が無いので安い方が良いんです……」
「コーデリアさんはスイーツが好きなの?」
女子はこの世界でも甘いものは好きなのかな?
そう言えば【モロット】の食堂で働いていた従業員もみんな甘いものが好きだったな。
「はい、私の将来の夢は小さくても良いのでスイーツ店をひらきたいんです。」
「へぇ、良い夢だね」
シンシアさんは超古代都市のことを調べたくてエルフ族の集落から出てきたって言うし、ふたりはやりたいことがあって出てきたなんて凄いなと思った。
自分たちなんか親の薦めで勉強に来ただけだし、将来の目標は漠然と冒険者になって世界中を旅したいって感じだしな。
「ありがとうございます!」
☆
第2競技 障害魔法レース
変な名前のレースだが、前世でいうネットや壁などの障害物の代わりに、先生たちが【魔法】スキルで邪魔をするレースだ。
ちなみに障害の種類は重力フィールド、ツルツルの氷山越え、竜巻内のボール取り、手足拘束でのぴょんぴょんらしい。
名前は物騒な感じだが、一応は安全なアスレチックみたいなものなのだろう。
「よし、クライブくん、コーデリアさん、シンシアさん頑張ろうね!」
「「はい!」」
この競技で大活躍してみせる!
……と最初は思っていたが、結果は惨敗だった。
「僕達がこの競技に参加したことに何かしらの意味はあるはずだ……」
何となく言ってみたら、クライブくんに……
「それっぽいこと言ってるけど、レイが足引っ張っていたこん。」
「ごめん……。」
この競技は参加選手全員の総合タイムが低いクラスから順位を付けていくのだけど、自分とコーデリアさん、シンシアさんは重力フィールドでかなり出遅れて、氷山越えでコーデリアさんはスイスイ進んで行った所でコーデリアに引き離され、シンシアさんは運良く竜巻内のボール取りをすぐにクリアでき、その時点で自分のダントツビリは確定していた……。
「レイくんって、例の見えない手のスキルを使えばもっと楽にクリア出来たんじゃないですか? 私も氷山越えではスキルを使いましたし」
「そうなんだけど、あれでクリアすると知らない人には自分が空を飛んでいる様に見えて目立つかなと思って使わなかったんだよ」
修練所で使う分にはそこまで目立たないが、全学年の見ている中で使うのは悪目立ちし過ぎる気がしたので使うのを止めておいたのだ。
「それこそ完全にスキルに頼るんじゃなく、補助的な感じでスキルを使えばバレないこんよ」
「あっ……そういえばそうだな」
【ハンド】を使い、引っ張ってもらうようにすれば良いのか……あれ、この【ハンド】の使い方って戦闘でも役に立つんじゃないか?
今度試してみよう。
☆
第3競技 干し肉食いレース
この競技はパン食いレースの干し肉版だ。
この世界にもパンがあるのだから、パン食いレースで良いじゃん!と思うが、なぜか干し肉が高いところに吊されている。
この競技はエレナ、バリーくんが大活躍でアランくんは苦戦していた。
エレナとバリーくんが得意でアランくんが不得意ってことは【器用さ】が関係するのだろうか?
バリーも【シーフ】だけあって、干し肉を一発で咥えてダッシュしていた。
「それにしてもアランはこういうの得意かと思ったのに苦手だったわね……まさか、ジャンプ力はあるのに干し肉が咥えられないって、想定外過ぎるわね。」
隣でマーティナさんとブルーノくんが話しているのが聞こえてきた。
この2人は何故か一緒はいることが多い気がするな。
「確かに、人選ミス感は仕方ないけど、みんなに振り分けると誰かは苦手競技に当たるからね。」
「その点、Bクラスは勝てる人ばかり出てるわね。」
「あそこの先生はロナルド先生にライバル心があるとか聞いたよ。」
「………なんか小さい先生ね。」
ロナルド先生は小さい先生だとクラスメートから影で言われているが、ライバルの先生も小さいのか……
☆
第4競技 二人三脚
これはそのままで男女ペアがやる二人三脚だった。
自分とコーデリアさん。クライブとシンシアさんのペアだった。
「コーデリアさん頑張りましょう!」
「はい。 頑張ります!」
脚を結ぶと身長差で肩が組めない……。
よってコーデリアさんが自分にしがみついてる感じになっている。
コーデリアさんの顔が少し赤い、しがみついている感じが恥ずかしいのだろうか?
「コーデリアさん大丈夫?」
「は、はい。だいじょうぶです!」
これは珍しくまあまあ良い結果だったが、クライブとシンシアペアには負けた。
「クライブくんには勝ちたかったなぁ。」
「仕方ないですよ。 向こうは身長差も少ないし、2人共わたしたちより速いですからね。」
「なにかの競技で勝ちたいな……。」
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