第49話 露店での噂話

 自分は【チェスガン】に来てから、【魔導具】や雑貨などを作る事が楽しくなり、身体を鍛えながら空いている時間にいろいろなアクセサリーや雑貨などの【魔導具】をいくつも作っていた。


 【魔導具】作成に失敗は無いが、たまに凄い性能の【魔導具】が出来たりするので、高性能な【魔導具】は自分用に取っとき、普通性能や微妙な性能の【魔導具】を露店にて販売をし、次の発明資金に換えていた。


ちなみに高性能な【魔導具】になる確率はランダムなのか分からないけど、体感的には1割くらいかなとおもう。

【魔導具】作成にはまっている理由のひとつにスーパーレアの当たるガチャを引いている感覚だからかもしれない。

めったに高性能は出ないが、出たら凄い嬉しいのだ。


 ☆



 【チェスガン学園】での授業が終わり、放課後に露店の情報交換をクライブとしていたら、あまり聞きたくない噂話を聞いてしまった。


「そう言えば最近、僕は小遣い稼ぎで露店の手伝いしてるこん。それで、最近よくお客さんに【魔導王】の継承者か?って聞かれるんだこん。【魔導王】じゃないこんって言うと、お客さんはそのまま帰っちゃうこん。あれは商売の妨害みたいなものだこん!」 


「ぶふぁっ! ゲホゲホ……」


 その【魔導王】を探しているという話は、完全に【魔導具】を定期的に売っている自分を探しているという予想外な情報が飲んでいたジュースをクライブくんの顔に思いっきり吹きかけてしまった。


「何するんだこん!? 汚いこん!」


「ごめんごめん! それで何? その【魔導王】の継承者ってさ。」


とりあえず、知らない振りをしてクライブくんから【魔導王】の継承者が何なのか聞くことにした。


「最近この街に【魔導王】を継承した子供がいるって噂だこん。 僕も子供だから一応確認の為に聞かれているんだこん。」


「へぇ~【魔導王】か……。」


「その顔は……レイは何か知ってるこん? 情報提供者にお金をくれるらしいこんよ。」


自分は割とポーカーフェイスは得意だと思っていたんだけど……


う~ん。


クライブくんとは付き合いが短いから、本当の話をしたら、お小遣い稼ぎの為に情報を売られる可能性も否定出来ないからな……。


何と言っても【商人】だからな。


「いや、知らないよ……最近になって図書館で魔導王伝説の本を読んだばかりだったから……ちょっとビックリしただけだよ。」


「そんな本があるんだこん? 面白かったこん?」


「面白いけど、なんか嘘臭い話ばかりだったよ。 実在した人なのかすら怪しくなる位にね。」


クライブくんが読めるのは前半部分だけだから、ファンタジー小説みたいな印象を伝えておけばよいかな。


「実在は本当らしいこんよ。 現に【魔導王】しか作れなかった【虹魔石】ってのが王国では国宝扱いとして保存されているらしいこん。 しかも出回っている噂の原因が、その【虹魔石】をとあるお店に子供が持ち込んだらしくて、みんながその子供を探しているこん。」


「……なるほどね。」


 平静を装っているけど、さっきから、なんか変な脂汗が止まらねーよ!


 【虹魔石】は売ったらヤバいやつじゃん!       



 しかも今、部屋の中では巨大サイズの虹魔石を濃縮中だ。


 せっかく気合いいれて作っているのに売れなくなったよ……。




 ☆



 寮の部屋にて


 自分は【虹魔石】をどうしたものか考えていた……。



 今、部屋では【血液濃縮循環機】の改良されたものがポコポコと音をたてながら常時稼働している。


 この改良されたものは、機械の大きさが従来から10倍にしたことにより、濃縮率は劇的に上げられており、大量の血液と【虹魔粉】をスタンバイされ、随時自動投入されている。


 ちなみに、この【魔導具】には最近の露店での稼ぎのほとんどを投入していた。


 なんでこれにそこまでの投資をしているかというと、【魔導王伝説】にある邪神の力を封印したとされる、世界にある14個しかない【巨大結晶】を【魔導具】で疑似的に作れないかな?と考えたからだ。


 【巨大結晶】には意志はないが【自己防衛】機能があるらしい。


 【巨大結晶】から魔素が出ているなら、逆に魔素を濃縮したら【巨大結晶】みたいになるんじゃないか?という発想だ。


 巨大な【虹魔石】を作ることで疑似的に【自己防衛】機能の付いた【魔石】が出来ないかなと思いついてしまったのだ。


 そして思いついたら試してみたくなり、考えてしまったら結果を知りたくなってしまったのだ……。


 とりあえずいきなり超巨大なものを作るのではなく、【巨大結晶】よりかなり小さいサイズのものを作る予定だが……それでも計画ではかなりの大きさになってしまい、デカすぎると部屋内だと邪魔なので濃縮率を上げて、巨大化を抑える事にした。


 そして、たった10センチ位の魔石が出来るのに2年かかる予定だ。


 壮大な計画で失敗する可能性が高いが、実験なので結果さえ出れば良いと思う。


 そして、今悩んでいる事が【血液濃縮循環機】を実は勢いに任せて10個も作っており、それをどうするか悩んでいるのだ。


 これで出来た【虹魔石】を知らない土地で売り払い、巨大な【虹魔石】の資金元にしようと考えていたけど、クライブの話を聞いて悩んでいる。



 いくつか代替え案はあるけれど、完璧に良い案が思いつかない。


 例えば、1カ所の店に全て卸して、その後に雲隠れして、作るのを止めるとか……。



 そう言えば露店に来ていたダンディー執事はどこかの貴族に仕えてる感じだったな?


 変装ペンダントを使い、変装してから大量に売ればバレないかな?


 うん。なんかいけそうな気がしてきた。


 そうしよう。



 この【巨大結晶】を疑似的に作る実験は根拠は無いが将来、自分の役に立つ気がする。




 そうしてレイは大量の【虹魔石】を量産していった。


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