第46話 パラレル思考
ブラットに全身タイツ姿を見られるという事件があったが、自分は頑張って【疑似共感覚体験全身タイツ】を毎日、寮内で着ていたら効果が現れた。
【共感覚を取得しました。】
【魔力感知が共感覚に統合されました。】
【パラレル思考を取得しました。】
おお、【パラレル思考】キター!!
この【パラレル思考】を取得したら、自分が何人か居るみたいな感じになった……。
スキルを取得してから何か思考酔い?みたいな何とも言えない気持ち悪い感覚に陥っていた。
しばらくしたら、この不思議なも慣れるのだろうか?
ちなみに【パラレル思考】の効果はファンタジーの定番スキルである並列思考だと思ってもらえれば良いと思う。
そして【共感覚】はひとつの感覚刺激から複数の感覚が呼び起こされ、特定の数字を見ると赤や黄などの色が付いているように感じたり、音楽を聞いたときに色彩が頭に思い浮かんだりする。
今回取得した【パラレル思考】を使いこなせる様になれば、きっと【魔導操作】に必要な処理能力も向上しているはずだから、今まで以上に【魔導】を同時に何個も使えるだろう。
試しに【ハンド】を5本出してみてペンを1本ずつ持たせ、同時に文字を書いてみようと思う。
今までは同時に別の文字を複数書いたりは出来なかったのに、【パラレル思考】を取得した今ならば5本の【ハンド】位ならば同時に別々の文字を簡単に書いたり出来きた。
これはすごい!
まだ慣れていない状態でこれだけの変化があるのだ……もっと練度を上げれば【パラレル思考】も良くなるだろう。
そうだ、せっかくだから部屋にいる間は常に【ハンド】を限界まで出しておこう。
こうすれば自然と慣れてくるはずだ。
それに最近物作りや学園の授業などが増えたから【魔導操作】の訓練する費やせる時間が少なかったからな……。
そして必要の無くなった、全身タイツは【ストレージ】に永久封印した……。
☆
次の日、授業が終わってから修練所に【パラレル思考】を試す為に来ていた。
【パラレル思考】は1日経つと劇的に馴染んでおり、気持ち悪い感覚は無くなっていた。
その代わり、複数の自分が混在していることに違和感が無くなっていた自分は今後どうなってしまうのだろう?という不安も少しあった。
それにしても、まさか1日で慣れるとは思わなかったな……
ちょっと違うが、もしかしたら自分には多重人格を形成する才能もあるかもしれないな。
修練所にはエレナやブラットが既に毎日の日課の様に自然と模擬戦をやろうとしていたが、自分が珍しく修練所に来たことでエレナが模擬戦をしてくれる話になった。
「ふふふ……エレナ! 今日こそは僕が勝たせて貰うよ!」
「レイにしては凄い自信で……何だか気持ちが悪いにゃ~」
自分が【パラレル思考】により勝利を確信している表情を見て、エレナは珍しく怪訝な表情をしていた。
ってか気持ち悪いって酷くない!?
「自信があって何が悪いんだよ! それじゃあ、いくぞ!」
「そんなに自信があるなら、いつでも始めていいにゃよ~」
自分は周囲に【シールド】を3枚同時展開して、更に【ボール】を20個同時に展開する。
今までも同時展開だけならば問題無く出来たが……脳の処理能力の関係か、展開したものの細かい調整は出来なかったんだよな。
例えば【ボール】を半分に分けて、別方向に飛ばそうとすると片方につられて飛んでいってしまう【ボール】がいくつかあった。
試しに全ての【ボール】に細かい別々の指示を出してみる……すると、脳に負荷がかかってしまう感覚は多少あるが、【ボール】は個別の意志があるかのように自分の別々の指示にしっかりと従ってくれた。
よしよし……良い調子だぞ、これならエレナにも勝てる!
自分はそのまま展開した【シールド】と【ボール】を待機状態にしながら【ボール】を使い、先制攻撃を開始する。
本来なら【ボール】で面制圧出来れば良いのだが、自分の【ボール】展開数ではエレナが【ボール】の隙間を的確に把握して回避してしまうので、現在の自分の能力ではエレナの動きを見ながら的確に【ボール】を撃ち出していくしか無かった。
自分はエレナの動きをよく観察しながらタイミングをずらしたり、エレナがジャンプした後の着地時を狙ったりしながら待機中の【ボール】をどんどん撃ちだしていく。
「にゃにゃ! 的確に攻撃されてる気がするにゃ!」
エレナはそんな事を言いながらも、自分にしか見えないはずの透明な【ボール】を完璧に回避していく。
相変わらず神ががった回避能力だな……
これがブラットなら既にかなりの数の【ボール】に被弾して決着がついている気がする。
まあ、透明な【ボール】を勘や気配だけで的確に回避出来るエレナやブラットが異常な気はするが、この世界では前世で言う達人クラスがかなり安売りされている気がする。
くっ、それなら……
自分は集中力が切れた振りをして【ボール】の精度を微妙に緩め、【ボール】による集中砲火の中にワザと一カ所だけ隙をつくる。
これにエレナが引っかかってくれなくては負けてしまう気がするが……
「にゃ!」
よし!
エレナは自分がわざと作った隙に目掛けて突き進んできた。
そして、わざと隙を作った場所を回くぐった先には大きめな【シールド】を3個も配置し緩く行き止まりを作っておく。
まんまとエレナが行き止まりの場所に入った瞬間、前方3面を完全に塞ぎ、そして後ろと上から残った【ボール】を全て動かし一斉射撃をする。
「にゃ!!」
それでもエレナは諦めずに神ががった回避をしていく。
あの狭い空間ですら回避するとか、化け物過ぎるだろ……自分はエレナの回避能力を侮っていたと思い、焦りながらも全力で【ボール】を追加展開しながら打ち続ける。
やばいな……
ドフッ!
「にゅ!?」
先ほどまで完全な回避能力を見せていたエレナだが、やっとエレナの左足に【ボール】がクリーンヒットする。
よし! いけるぞ!!
自分は今がラストチャンスだと思い、思考能力の限界ギリギリまで【ボール】を追加展開して攻め続けた。
くっ、過剰処理の影響で頭痛が……
しかし、次第に何発かを食らい始め、最後には良いのがエレナの後頭部に当たり、エレナが遂に沈む……。
「初勝利だ!」
自分はエレナに初勝利出来た感動により、ちょっと泣きそうになっていた……
思えば3年近く負け続けていたが……遂にエレナに勝てた!
「エレナさん、大丈夫ですかっ!?」
コーデリアさんはエレナが負けるとは思っていなかったらしく、びっくりしながらもエレナの回復をするためのエレナに駆け寄る。
最初はエレナも後頭部へのダメージにより倒れていたが、数秒で何事も無かったように立ち上がる。
「レイが凄い進化をしたにゃね……何か新しいスキルを取得したにゃ?」
「ふふ、取得したスキルはまだ秘密だよ。もし僕に勝てたら教えても良いけどね!」
「にゃは! ならもう一戦するにゃ? 次は負けないにゃよ」
「はっはっはっ! もう僕はスーパーレイになったから負けないさ!」
☆
「えっと、取得したスキルは【パラレル思考】です……」
エレナとの再度模擬戦をした結果、あっさりと負けてしまった……。
幼なじみのエレナは存在がチートなのか?
数分前までの優越感は泥船の様にあっさりと崩壊し、自分は約束通り取得したスキルをゲロっていた……。
「それにしても、レイはどうやって【パラレル思考】なんて凄いスキルを取得したにゃ? 私もその【パラレル思考】を取得したいにゃ!」
「いやいや! これだけは絶対に教えられないよ!」
唯一の支えである【パラレル思考】さんをエレナが取得なんてしてみろ……自分の勝てる要素が完全に絶たれてしまうではないか!?
小さい人間だと思われても、そこだけは死守しなくては自分のアイデンティティが崩壊してしまうと本能的に感じていた。
それにファッションセンスに人一倍うるさいエレナが、あんな恥ずかしい全身タイツをずっと着るとは思えないしな……って、ちょっとエレナの全身タイツ姿を見てみたいなとも思ってしまった。
しかし、2戦目であっさりと負けちゃったな……
もうエレナには似たような不意をつく攻撃は効かないかもしれないなと落ち込んでいた。
「レイ、また私を倒すために新しいスキルを取得して来るのを楽しみにしているにゃ」
「くっ、今回は初勝利出来ただけでも良しとするか」
最終的にはエレナに負けたが【パラレル思考】の有効性は証明されたからな。
「レイさん凄いです! 何をしていたか解らないですが、凄いのはわかりました!」
自分がちょっと落ち込んでいるのを見て、コーデリアさんは自分を励ましてくれていた。
「なんか今のコーデリアさんだけが僕の救いだよ……」
自分が落ち込むとコーデリアさんだけが励ましてくれてる……そして、明日からまたやり直そうとするのがパターン化してきたな……ということはもうコーデリアさんの励ましなくして、成り立たないのでは無いだろうか?
「コーデリアさんは僕にとってなくてはならない存在になっているのかもしれないな……」
「な、なくてはならない存在だなんで……」
ん?
急にコーデリアさんが顔を赤くし始めたぞ?
どうしたんだろう?
「……またレイの無自覚症という病気にゃね」
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名前・レイ(6歳)
状態・良好
属性・雷
職種・魔導技師2.3 魔導剣士3.9
種族・人族
パッシブ・人見知り、建築、土木、料理
素材の極み、鍛冶、パラレル思考
共感覚
アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン、ボックス
ボール、シールド、ハンド
ストレージ、ウィップ
ブレード、武器強化
サンダーブレード、雷属性付与
サンダーボール、サンダーシールド
魔導工房、魔導具作成
固有スキル・ジョブホッパー
鑑定の魔眼
装備・神木の小太刀
印象阻害の銀ブレスレット
変装ペンダント
身代わりネックレス
重力カウンターの指輪
雷属性擬態の指輪
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