第40話 修練所

 初の授業後に自分、ブラット、エレナの3人で学園内にある修練所にいつもの様に模擬戦をやりに行こうとしていたら、コーデリアさんが話しかけてきた。


「修練所へ行くのでしたら、私とシンシアも一緒に行っても良いですか?」


「えっ? 僕達は木剣で打ち合ったりするけど、コーデリアさんとシンシアさんもやるの? 2人は後衛職なのに大丈夫?」


もしかして自分よりも剣の使い方が上手いとか……ないよね?


もしそうならショックが大きいんだけど……


「あっ、違います! 皆さんの見学というか……。 3人でどんな事をしているのか興味があったので見に行きたかったんです。」


「なるほど。僕は大丈夫だけど、2人も大丈夫?」


確かに3人で楽しそうに修練場に向かう場面を見れば、何をしているのか興味があるだろう。


まあ、実際はただ打ち合うだけのつまらないものだけど……それは2人が見て判断すれば良いだろう。


「私も大丈夫にゃ~。」


「俺も見学なら気にしないぜ。」


当然の様に2人も見学はオッケーみたいだ。


「それじゃあ、コーデリアさんとシンシアさんも一緒に行こうか。」


「はい! よろしくお願いします」


「……お願いします」


 ☆


 自分は修練所に行く途中、暇だったのでコーデリアさんの職種が気になったので聞いてみる。


「コーデリアさんの職種【精霊使い】って精霊を呼んだりする感じなの?」


 自分はこの世界に精霊というものが居るのかが気になっていた。


自分の【魔眼】には大気中の【魔素】は見えるが精霊みたいな生き物っぽいものは見えたことがない。


もしかしたら精霊が見える特殊な体質や眼があるのかもしれないなと思った。


「私は水系の精霊のみ相性が良いのですが、精霊を呼ぶのではなくて自然界にいる精霊にお願いする事で【精霊魔法】を使用しています。」


やっぱり自然界に精霊が存在しているのか……なら自分の【魔眼】で見えないだけか。


それにしても精霊にお願いして、精霊がそのお願いを叶えるってことは意志の疎通が出来る存在が大気中にいるはずなんだけど、なんで【魔眼】で見えないのだろ?


「お願いするという事は【魔力操作】とかはしないの?」


「そうですね。 私の使う【精霊魔法】は【魔力操作】はしません。 ですから皆さんとは【魔力操作】等が無い分で違うと思います。」


「へぇ、ますます気になるな。 魔法を使うのに【魔力操作】がいらないってすごい。 ブラットは【魔力操作】が苦手だから羨ましいね?」


「確かに【魔力操作】無しで魔法が使えるのは羨ましいが、【魔力操作】に関しては俺が苦手なんじゃなくてレイやエレナが巧すぎるんだろ。おやじもレイの【魔力操作】は年齢からしたら異常って言ってたぜ」


確かに自分は生まれた時から意志を持って訓練していたから、数年ずるしているみたいなものだな。


そう言う意味ではエレナが天才過ぎるんだよな。


魔法もスキルも身体能力も異常に高いからな。


一時期までエレナも転生者じゃないのかと疑ってたくらいだ。


「【精霊魔法】も万能ではなく、正確な使いたい魔法のイメージがなければ精霊は願いを叶えてはくれません。だから集中していれば仕えるのですが、集中出来ない環境だと使えないことが多いです。」


「なるほどね。利点もあれば欠点もあるんだね……」


集中出来ない環境って、多分近接戦闘中などは無理かもしれないってことだよね。


それだと使い道が限られるかもしれないな。


「そうですね、苦労は【魔力操作】とあまり変わらないかもしれないです。」


「精霊って見えるの?」


「私は【精霊使い】でも精霊は見えませんね。私以外の【精霊使い】が居れば見えるのかもしれませんが、私の家族の話だと【精霊使い】は特殊な【職種】らしいです。」


「そっか。 それは残念だな。」


 精霊が見えないのか……不思議なスキルだな。


「超古代都市には、精霊を見ることの、出来る人が、居たらしいよ?」


シンシアさんが小さな声で話しかけてくれたのだが、超古代都市って超気になるな。


「超古代都市ってなに?」


「今よりも、発達した文明が、あったとされる、時代の都市……私は、それを調べたくて、集落から出てきた。」


「へぇ、そんな高度な文明があったのか……面白そうな話だね。超古代都市って有名な話?」


モロットでは超古代都市なんて単語は一度も聞いたことがないんだけど。


「分からない……」


「えっと、私が簡単に説明しますと、シンシアの部族には遙か昔から言い伝えられている超古代文明の話があるんです。シンシアは昔から超古代文明の話が好きで、将来は超古代文明の遺跡を探したいらしいんです」


「なるほどね、僕も超古代都市があるのなら行ってみたいね。」




 ☆



 そんな話をしている間に修練所に到着した。


 学園の修練所はかなり広く、試合スペース、アスレチックコース、筋トレスペースなどいろいろあり、既に何人かは修練を始めていた。 低学年の生徒でも頑張っている子はたくさんいるんだな。


 自分達も到着後、準備運動をしてから3人で順番に模擬戦していく事にした。


 まずは自分とエレナが模擬戦だ。


「今日こそはエレナに勝つぞ!」


「やってみるにゃ~」


 エレナと模擬戦をやると、自分はいつも負けている。


 今のところ、エレナとの勝率は全敗である、そろそろ豆腐メンタルが潰れそうだ。


 因みになぜ勝てないかと言うと、自分の攻撃がエレナに全く当たらないからだ。


 最初の頃はギリギリで回避するから、自分がもう少し頑張れば当たると勘違いしていたが、最近は完全に見切られてるんだと分かってきた。 それでも幼なじみには負けられないという、謎のプライドがあった。


 エレナを見ると木の短剣をジャグリングのように何本も上に投げて遊んでいる。 相変わらず余裕そうだな。


ブラットが試合の合図をする。


「それじゃ、はじめ!」


 自分は模擬戦開始と同時に【シールド】を目の前に展開し、その後【ハンド】を5本発動し周囲に待機させる、そして【魔力感知】の範囲を広げていき、全方位警戒する。


エレナは動きが速いから、こちらから攻めても回避されるのだが、それなら守りを固め、エレナの攻撃をガードしてからのカウンター狙いだ。


「相変わらずレイは変な戦い方をするにゃ~。」


エレナは見えないはずの【シールド】と【ハンド】を勘だけで見抜き、最短距離で進んでくる。勘ってそんなチートっぽいものだったか?と思う位な精度だ。

普通、勘だよりなら数回に1回は被弾してなくてはオカシいのだが、エレナの勘による回避率は100%だったりする。


 エレナは【シールド】を回避しながら短剣を3本投げてくる。


 それに対して自分は【ハンド】を使い、短剣を叩き落としたのだが、自分がその動作に集中している間にエレナは視界から消えていた……。 


「くっ、どこだ?」


 眼ではなく【魔力感知】で探ると真上に【魔力】反応があった!


 とっさに前面に展開していた【シールド】を頭上に移動して攻撃を防ぐ。


 バキッン


【シールド】はあまり強度を高くしていないから、砕けるのは予測済みで、攻撃動作で動きが止まっているだろうエレナを【ハンド】で拘束しようとする。


しかしエレナが居たはずのところには既に居なくなっており、【ハンド】は空を切っていた。


エレナはというと、5メートル近く離れていた。


「捉えたと思ったのに! 速すぎるよ。」


「私には【野生の勘】があるから攻撃する意思を感知して回避が出来るからからにゃ。 レイは考えてから動くまでが遅いからダメにゃ。 しかしレイは守りが堅くなったにゃ。」


「仕方ない、今度はこっちから行くよ!」


【シールド】を再度全面に1枚展開、【ボール】を10個同時起動展開する。


【ボール】の撃ち出すタイミングをズラして、ドンドン撃ち出すがエレナは見えているのか?という錯覚を覚える位に全部回避していく。


【野生の勘】はチート過ぎるだろ!


 更に【ボール】を追加で起動展開して立て続けに撃ち出すが、エレナは撃ち出されている【ボール】の弾幕の中、真っ直ぐ回避しながら攻めてきた。


最後には【シールド】の無いところを狙い、腹に攻撃を受けてしまう。


「げふっ……。」


「それまで!」



「また負けたか……。 どうすれば良いんだ……。」


「レイは1つの事に集中すると、他が隙だらけになるにゃ。」


「同時に2つの事を集中して考えるの難しいな。」


 攻撃を受けた腹がズキズキしたのでさすっていると、コーデリアさんが近寄って来て話しかけてきた。


「私が攻撃を受けて怪我をしたところを、治しますので見せてください。」


「えっ? 回復魔法が使えるの?」


 そう言いながらコーデリアさんは怪我をした腹に手をかざす。


そうするとシャボン玉みたいな小さな水球出てきて、腹に水球が吸収されると痛みが突然無くなった。


「お~、コーデリアさんは回復の【精霊魔法】が出来るんですね。 僕のお母さん以外で【回復魔法】使える人を初めて見たかな。 お母さんも基本的には【回復魔法】を部位欠損の時しか使ってくれないから久しぶりかも。」


「えっ? 部位欠損って普通の人は出来きないはずですよ?」


「お母さんは元冒険者だったらしいから、普通ではないはずだよ」


「確かにレイの両親は、有名な冒険者だったはずにゃ~」


「俺もオヤジから聞いたことあるぜ、レイの両親は凄いって。」


「そうなの?。 ……初耳なんだけど。」


「両親のお名前はなんて言うのですか?」


コーデリアさんが聞いて来たので素直に答える。


「お父さんがレオン、お母さんがソフィアだよ。」


「【ソウルイーター】のレオン様のいるパーティーですか! 噂がエルフ族の集落まで届く位に凄く有名なパーティーですよ。」


「それに、私はソフィア様のファンなんです!」


「え……【ソウルイーター】?。 何、その名前……。 完全に悪者じゃん。」


「昔、とある山に危険な魔獣が住み着いて人類に総攻撃をしようとした時、リーダーのレオン様が魔剣で魔獣の群れを山ごと吹き飛ばして、山を湖に変えた時についた名前らしいですよ。 」


「山を湖って、かなり話が盛られてるよね?」


「50メートルある魔剣を天空に召喚して落としたって子供の頃に聞きました。 その跡地には巨大クレーターが出来て湖になってるとか。」


「……。」


こわっ! 何その化け物的強さは。



 そんな話をしながらコーデリアさんと仲良くなった。



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 名前・レイ(6歳)

 状態・良好

 属性・雷

 職種・魔導技師1.5 魔導剣士3.4

 種族・人族


 パッシブ・人見知り、建築、土木、料理

      素材の極み


 アクティブ・魔導操作、魔力感知

       鑑定、クリーン、ボックス

       ボール、シールド、ハンド

       ストレージ、ウィップ

       ブレード、武器強化

       サンダーブレード、雷属性付与

       サンダーボール、サンダーシールド

       魔導工房、魔導具作成


 固有スキル・ジョブホッパー

       鑑定の魔眼


 装備・神木の小太刀

    印象阻害の銀ブレスレット

    身代わりネックレス

    重力カウンターの指輪

    雷属性擬態の指輪



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