第31話 勇者(笑)

 【勇者(笑)視点】



俺は東京の私立の高校に通1年で16歳なのだが……


「おいキモ太、売店でジュース買って来いよ」


「えっ、今から? もう次の授業が……」


「はぁ? お前が授業を受けるのと俺のジュース買ってくるの、どっちが大事か……分かるよな?」


「あ、はい、買ってきます……それでお金なんだけど……」


俺は……高校に入り、この同級生の荒田にキモ太と呼ばれ、毎日のように使いパシリにされていた。


拒否すると殴られ、他のクラスメートに助けを求めても視線を外され、誰も助けてはくれなかった……


「なんだよ、いつものツケで買って来いよ!」


「でも……そろそろ結構な金額に……」


ジュース代やお昼代を定期的に買いに行かされているが、未だにお金を払ってくれたことは一度も無かった。


「なんだよ、ツケだって言ってるだろ! 払わないとは言ってないだろ」


「それじゃあ、いつ払って……」


「それは高校卒業したら払ってやるよ! キャハハハ!」


「それって……」


「あ?」


「買ってきます……」


これ以上言い返すと殴られそうなので、俺は急いでジュースを買いに走った。


こんな虐められている俺に彼女なんてもちろん居なかった。


これで可愛い彼女でもいれば幸せなんだけどな……


 あと、趣味はファンタジー小説を読んだりやアニメを見るのが大好きで、お小遣いは大体が本やグッズに消えるはずだったのだけど……荒田のジュース代とかに消えてしまっていた。


 お小遣いで欲しいものがいっぱいあるのに……


 くそっ、荒田さえいなければ……


 あー!くそっ!


 考えただけでイライラする……こんな時は最近ハマっている無料のVRMMOゲームでストレス解消するかな。




「ふはははっ、オラオラ雑魚は死にやがれ! ブレイブハート!!」


ドゴォーーン!!


「やっぱり、この獄界は面白いな。このゲームは無料なのに謎にクオリティは高いし、最新からキャラがある程度強いのも良いよな。」


俺は最近、雑誌で最新技術の尽くしたVRMMOゲーム・獄界のテスターを募集しているのを見て、ダメ元で応募したら、50名しか当たらないという中、なんとテスターに当たり現在無料で最新技術のゲームの遊んでいた。


最初はテスターなんてめんどくさい指示をいっぱい受けて、バグ報告や感想とかいろいろ書かされるかと思ったらそうでもなく、単純にゲーム攻略をしてくれれば良いと言われた。


それにしても、この獄界ってゲームはクオリティが凄いな……ゲームの中なのに匂いや味も感じられるし、何かを斬ったり殴った時の感覚すらリアルだったので、ゲームをしている時だけは現実の出来事を忘れることが出来ていた……。


強いて微妙な点を上げるなら、ストーリーがよくわからないところだろうか?


まあ、無料でこの爽快感が味わえるのなら、ストーリー位は我慢しようと思う。


【魂レベルが50に上がりました。】


「よっしっ! やっとレベル50か」

 

このゲームは魔獣や魔竜などの敵を倒すと魂の経験値が貰え、魂レベルというのが上がっていき、スキルなどを貰えたりステータスが上がっていったりするのだ。


ちなみに魂レベル50はベータ版の魂レベル上限らしいのだが、魂レベル50に到達すると新しいステージに行くことが出来ると言われており、俺はそれを楽しみにレベル上限を目指していた。


【レベル上限に達しましたので神界に転移します。】


「神界……? うっ……」


な、なんだ?


ゲーム内なのに頭がクラクラするぞ……


そして俺は頭の痛みに耐えられず倒れてしまう。




「……様、……様。」


「あん? なんだここは?」


 俺は気が付いたら真っ白な空間に居た……。


 本当に真っ白で、この世の空間とは思えない程の白さで、きっとこの空間に長時間いたら精神がおかしくなってしまうのではないかと思った。


「やっとお目覚めになりましたね……様。」


 そして、目の前には羽の生えた天使の様な綺麗さとエロさを兼ね備えた超美女が周囲をキラキラしながら立っていた。


 すげえ美人だな……


 ゲーム内のキャラやアイドルが霞んでしまうほどの美しさだった。


「おめでとうございます。……様は獄界オンラインのベータ版で最速で魂レベル上限に達しました。それにより獄界での新たなステージのご提案させて貰いたくて、こちらの空間にお呼びしました。」


「俺が最速なのか?」


あんなもんで最速だったことにびっくりした。


俺は学校にも行っているし、夜も寝ているから、上限に達したのは50名の中でも遅い方だと思ったんだけどな……


「はい。……様は才能が有り余るのでしょう。他の方たちなど、まだ魂レベル25前後ばかりです」


「マジか……そんなに遅いのか……」


「いえ。……様が速すぎるのです。それで、獄界に似た異世界に転生してみませんか?」


「ほう、異世界転生か……よし、行こう」


「もし、行ってもらえるのならサービスも……えっ? 行ってもらえるのですか? 転生ですよ?」


「ああ、構わない。すぐにでも異世界転生してくれ」


あんな嫌な世界にいるより獄界に似た異世界転生した方が楽しいかもしれないと思った。


「……様は迷わないのですね。少々びっくりしました。」


「その代わりチートスキルとかはしっかりくれるんだろ?」


「チートスキル? 少々お待ちを……なるほど、チートスキルとは……はい、チートスキルはいくつか授けられますので安心して下さい。それにしても……様は迷い等は無いのですね?」


「ああ、俺はこの展開を何度も夢見たからな……チートスキルさえくれるなら、どんな異世界でも行くぜ」


「なるほど。まあ、その方が都合が良いでしょう。 私からの連絡が出来る【神託】と【野生の勘】というスキル生存本能を上げるスキルはお渡しします。」


「ん……それだけか? それはチートスキルでは無いだろ?」


俺が欲しいスキルはそう言うのではなくて、無双出来たりするタイプのスキルなんだが……。


神託と野生の勘ってなんかショボくないか?


やっぱりチートスキルと言えば【鑑定】【アイテムボックス】【強奪】とかだろう。


「実は、……様が行く異世界は最初から強力なチートスキルを授けますと身体的に負荷が高すぎるため、危険ですので【神託】や【野生の勘】以外のスキルを最初から付与するのは無理ですが、身体が成長し次第【神託】経由で私が……様にチートスキルを授けようと思っています。」


「なるほど、徐々にチートが増えていくタイプなんだな。それなら仕方ないか」


そう言う事ならば最初だけは我慢してやろう。


「そして、これから行って貰う異世界は職種にスキルが付くので、ある程度、良い職に就けば良いスキルに恵まれやすいです。私の力を限界まで使い、良い職を選べるようにします。」


「それはありがたい!」


「それでは選べる職種を表示しますね。」


【賢者】【拳聖】【剣聖】【勇者】


「おお! すごそうなのばかりだな!」


賢者や剣聖なども捨てがたいが……俺の選択するのは


「まだ時間はあるのでゆっくり選んで良いですよ?」


「いや【勇者】にしてくれ! 一番ハーレムになりそうだ!」


「まあまあ! 素晴らしい選択ですね! (……こいつはチョロそうですわ。勇者には思考誘導スキルを密かにかけやすいから丁度良いですわ。)」


「ちなみに5歳からのスタートになりますが良いですか? 産まれる環境についてはこちらでは管轄外でして申し訳ないです。」


「ああ! 丁度良いよ。赤ん坊プレイはスキップしたかったしな。」


「あと向こうでは基本的には自由に生きてくださって構わないのですが……もし、余裕があれば魔王を倒してもらえると有り難いです(魔王は善人だけどね。)」


「なるほど、好きに生きていいんだな……まあ、気が向いたら魔王退治してやるよ!」


「ありがとうございます、流石は勇者様ですね」



 ★




(なんか貧乏な家に転生したぞ! 俺の5歳までの記憶によると後1年したら学園生活らしいから、そしたらこの家ともおさらばだな!)




 ーーーーーーーーーーーーーー


 名前・アーサー(5歳)

 状態・良好(洗脳は非表示中)

 属性・光

 職種・勇者

 種族・人族?


 アクティブ・剣術、盾術 


 パッシブ・神託(思考誘導は非表示中)


 固有能力・(聖剣召喚は隠蔽封印中)

      野生の勘


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