第25話 魔導剣士

 今日は自宅の庭ではなくて、ブラットとエレナと共に町の外に来ていた。


 自分達は職種を得てから何度も訓練をして、お互いに感覚で職種について解りかけていた。


 今日はそれを実戦で試すために、町から少し離れた所にある修練場にきていたのだ。 ここは常に警備の人がいるし大人も訓練してるから子供だけで来ても安全な場所だった。


「今日、僕は【魔導剣士】で覚えたスキルを試したいから一人で的に攻撃してるよ。」


「わかった。 それじゃあ、おれはエレナといつも通り打ち合いをしてるよ。」

「はいにゃ~。」


 そう言って2人はいつも通り打ち合いを始めたが、いつも以上に打ち合いにキレがあった。

 【職種】を得ただけでここまで変わるものなのか……





 今日、自分が試したいのは【ブレード】と【武器強化】の属性付与だった。


【ブレード】は魔力を固定した透明な剣で、戦闘ならかなり有利な攻撃なのだが、今まで武器に出来るほどの強度が出せなかった。 これで魔法剣が使えそうだ。


【武器強化】は既存武器に魔力を纏わせて強化するもので、若干【ブレード】に似た性能だった。



 ふたつの違いは無から魔力のみで武器を作るか、武器を魔力でさらに強くするかの違いかな。 通常なら武器強化の方が効率的で強いはずだ。


(とりあえず、昨日までの復習で【ブレード】を試してみるかな。)


 自分は【ブレード】、【魔力操作】を使い魔力で剣の形をイメージして固定してみる。


(スキルがあると意外と形成が簡単だな。 今までは武器の形を明確にしないと変な形の武器とかになっていたからな。)


 自分は的に向かって作ったばかりの【ブレード】を使い、斬りつけてみる。


 ガッ


(的が少し傷付いただけかな……。 次は初めての試みだけど、雷属性を付与してみよう。)


【ブレード】を維持しながら、更に魔力を雷に置き換える感じに……。


(固定されていた魔力が流出してる感覚になるな……。 昨日もこの辺で魔力が霧散してしまったんだよな。 だけど、今日は更に試したいことがあるんだよな。)


【ブレード】の外側を魔力で覆い、二重の【ブレード】を作る。それから内部を雷属性に変換する……。 そうすると劇的に安定してきた。


 雷属性を纏った【ブレード】がかなり安定した所で、的に攻撃してみる。


 ブォーーン


 的がバターを切るように簡単に真っ二つに斬れていた。



【サンダーブレードを取得しました。】


(なかなかの威力だな……。 しかも新しいスキルが取得出来た!) 


(今日は気分が良いから、そのまま【武器強化】をやりたいけど、今日は木剣を持ってきてないんだよな……。  あっ!)


 こっそり神木の小太刀を【ストレージ】から取り出す。


神木の小太刀に【武器強化】を使い、魔力で強化してみる。 そして、そのまま雷属性の付与が出来そうだったからやってみる。


 なんと1回で成功した。 元になる武器があると形成も必要無いし、【魔力操作】もかなり楽だったな。


【雷属性付与を取得しました。】


 なんか【武器強化】の方が簡単だな。 しかも見た目がただの木刀だったのが、パチパチと音を鳴らしながら放電している。


(超カッコいい!)


 そして何も考えずに的を攻撃してしまった。


 ドッガーン!



 的と近くの地面が無くなりミニクレータが出来ていた。


(やばい……! 思ったより威力が強かった。)


 周りを見たら大きな音を聞き、大人達やブラット、エレナ集まっていた。


「おい、ぼうず……流石に属性付与のスキルは危ないから親の居る前でやらないと駄目だぜ?」


訓練をしに来ていたおじさんに軽く注意される。


「凄い音したにゃ」


「レイ、すげー威力だな!」


「あと作った穴は自分たちで埋めるようにな。 スコップとかは向こうの用具入れにあるからな。」


「……わかりました。 ごめんなさい。」


「まあ、怪我が無かったから、地面さえ直せば良いから大丈夫だよ。 決して人には向けてはダメだからな?」


「はい、分かりました。」


前世でおじさんだったのに、こんなところでやらかすのは凄く恥ずかしい。


「ちなみにどこの家の子だ?」


自分は近くのレオンとソフィアの子供ですと言った途端、おじさんの表情は激変した。


「あ……ソフィアさんのところの子供か……なら仕方ないか」


「えっ?」


「いや、何でもない……ぼうず、ソフィアさんだけは怒らしたらダメだからな?」


おじさんは自分の肩に手を置き、真剣な表情でお母さんを怒らせてはいけないと教えてくれたのだけど、おじさんの手はちょっと震えていた……


おじさんはどんだけお母さんが怖いのか。


それからおじさんは穴だけはしっかり埋めておけよと言って帰っていった。


「私も一緒に埋めるにゃ。」


「俺も手伝うぜ。」


おじさんとの話が終わると2人から穴を埋めるのを手伝ってくれると言ってくれた手には大きなスコップを持っていた。


「エレナ、ブラット。 ありがとう。」


その後、穴を埋めたのだけど、ここで自分と2人との身体能力の差なのか、土を掘るスピードが圧倒的に違っていた。


 そして、そんな2人が手伝ってくれてもミニクレータを埋め戻すのにかなりの時間がかかった。

 頼りになる幼なじみが2人もいて、自分は幸せ者だと思っていた。





 今日はそのまま家に帰り、報告したらもちろん両親に怒られた。



「まさか、【サンダーボール】ではなく【雷属性付与】を先に使うとは想定外で油断したな。」


「5歳で【雷属性付与】が出来たなんてレイは天才かもね。」


 おかしな威力と両親の反応が気になり聞いてみる。


「【サンダーブレード】の時も威力が強いけど、【雷属性付与】は何であんなに威力が高くなるの?」


「【サンダーブレード】まで覚えたのか……。 まず【サンダーブレード】は【サンダーボール】などと同じで、強さは【魔力操作】の出来次第だ。 だからレイの場合はまだ、そんなに威力はでないはずだ。 そして、【属性付与】は武器次第で威力が変わる。」 


「な、なるほど……。」


「前から気になっていたがレイの木剣は変わってるな? なんか業物の武器みたいな感じがするんだが。」


(あの威力は神木の小太刀が犯人かよ。 どうしよう。)


「すごい良さそうな角材を見つけたから薄くて短いものに加工したんだよ。」


「ふむ……。 ちょっと借りて良いかな?」


 お父さんは【神木の小太刀】を構えてから数回振ってみる。 相変わらずお父さんが武器を振るうと、武器が見えなくなるほど速い。



「……。」



(やらかした武器がバレたかな?)



「レイ、この武器での【魔力強化】は良いが【属性付与】は使用禁止だ。 魔獣相手ならまだ良いが、人に向けてはいけないよ。」


「……うん。わかったよ。」


「あと、この武器は良い出来だから大切にするんだよ?」


(武器についてはあまり突っ込まないのは助かるな…。)


(それに自分も身内に誤爆は嫌だから【属性付与】は禁止だな。)







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 名前・レイ(5歳)

 状態・良好

 属性・雷

 職種・魔導剣士1.6

 種族・人族


 成長スピード 力 3 器用8 速さ3 

        知力8 魔力8


 パッシブ・人見知り、建築、土木、料理

      素材の極み


 アクティブ・魔力操作、魔力感知

       鑑定、クリーン、ボックス

       ボール、シールド、ハンド

       ストレージ、ウィップ

       ブレード、武器強化

       サンダーブレード、雷属性付与


 固有スキル・ジョブホッパー

       鑑定の魔眼


 武器・神木の小太刀


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