第80話 覇気?いいえ、索敵です

 少しずつわかる様になってきた。

 ラルミィの位置、棒をどう振りかぶっているか。何処を叩こうとしているか。


 ここまで分かれば、避けることも受けることも出来る。


「ねえ、なんか目隠ししたまま、従魔とチャンバラしてるんだけど、【気配察知】のスキルって、極めるとあんなことも出来るの?」


 遠目からリューヤ達のチャンバラをのぞいていたのはミキのパーティメンバー。


「出来ないわよ、あくまで分かるのは場所だけで、スキルレベルが上がっても、変わるのは索敵範囲と【隠密】スキルに対する耐性だけらしいし、さらに言えば、気配察知のスキルは使ってないと思うわ」


 恐らく、いや確実に取得すらしていないだろう。自前であそこまで出来るのだから、索敵系のスキルは必要ない。


 一体あの幼馴染は何処に向かっているのだろう? 次は未来を見たり、身体を硬くしたり、睨んだだけで相手を気絶させたりするのだろうか? いや出来るのであれば、是非ともやって欲しいのだけど。


 とりあえず今行うのは、イベント用の荷物をまとめることと、レベル上げだ。装備の方も万全にしておきたいし、後で生産職の知り合いに連絡もしておこう。リューヤは基本的に【鍛治】系統の鉄装備しか扱えないので布製の装備は扱えない、エマは現在店の方がだいぶ忙しいそうだから、今頼むのはちょっと躊躇う。


 「そろそろレベル上げに行きましょうか、時間もあまりないし、寄り道は無しね」


 いつもは露店などで買い物をしたりするのだが、これ以上実力を離されるわけにはいかない。これでもトッププレイヤーの一人なのだから。







 翌日、昨日さんざんやり合ったおかげで、だいぶ慣れてきた。

 というわけで今日は実戦形式だ。相手はナツメとラルミィ。対集団戦だ。実戦形式なので魔法やアーツも解禁。全方位からの魔法やアーツをさばききる必要がある。


 クランハウスからそれを覗いているパーティーがいた。


「ねえコウ、あれどう思う? 勝てそう?」


 パーティーメンバーの一人が、あれリューヤに勝てそうか? という意図で聞いてきた。


「多分無理だな。まず攻撃が当たらない。範囲アーツをブッパしまくっても、多分HPを削りきる前に回復されたり魔法で攻撃されたりして負ける」


 従魔たちとのガチバトルか行われている庭を見ながら言う。いつの間にあの幼馴染は、目隠ししながらバトルを行うなんて芸当を会得したのだろう?

 【分裂】したラルミィの全方位から放たれる魔法を、紙一重で躱しながら、ナツメと肉弾戦を繰り広げている。


 あいつだけなんかやってるゲーム違くない? あいつ召喚士だよな? 狂戦士とかじゃないよな? まあ味方ならいいか。味方なら。


「負けてらんないな。レベル上げに行くぞ、これ以上離されてたまるか」







「エマ、なにか手伝うことあるか?」


「大丈夫。客足は落ち着いてきたし、そろそろ私がいなくても大丈夫そう」


 店には接客用のNPCを雇っているので、エマがいなくても店は回せそうだ。

 つまり今ならエマと一緒に、生産ができるということだ。色々と作りたい魔法道具アーティファクトがあるんだよね。


 空間魔法。新しくラルミィが取得した魔法だ。その魔法の中に【スピン】と言う魔法がある。


 掛けた対象を回転させるだけの効果だが、これは結構応用が効く。


 取り敢えず、一番最初に、思いついたものを、作ってみよう。


「リューヤ、これ何?」


「それはバイクだな。と言っても構造はミニ四駆にすら劣るけど」


 そのバイクは最初に作った試作品だ。一輪駆動だし、アクセルとブレーキだけでいいので、簡単に出来た。

 ……だが、どうも馬力が出ない。魔力量を増やせば、それなりの馬力も出るのだが、それだと割に合わない。飛行スキルを使った方がいい。


 とこの話をエマにすると、エマは奥の部屋へ行き、次に出てきた時はフル装備だった。


「リューヤ、3層に行こう」



 というわけで来ました。北の三層。

 二層のボス? ナツメが焼き払ったよ。一撃だった。


 どうやらここ三層でとれる鉱石が欲しいらしい。


「本当は四層の方がいいけど、リューヤがいるから問題ない」



 本来なら四層の方が大量にとれるらしいがそこまで行くのは面倒なのでここで掘ることにした。

 何故か俺が掘ると、毎回レアなのがとれるんだよな。


 そういえばストックしている料理の中に採掘速度上昇効果のあるものがあったな。食べてからにした方がいいか。


 と言うわけで取り敢えず掘ってみる。


「さすがリューヤ、こんなに大量」


 うんうん良かった大量だな。

 あ、君ちょっといいかな、次の採掘ポイントはそこなんだ、少し横にどいてくれ。うん、ありがとう。


 やってしまった。こんな事になるなら外で食っとくんだった。


 現在【餌付け】スキルの影響下にあるモンスターに囲まれています。いや上げなければいいのにとか思うのは分かるけど、期待に満ち溢れた目で涎垂らしながら、こっちをじっと見られたら、上げたくなるじゃないですか。


 と言うわけでモンスターに囲まれながら採掘中です。


ちなみにうちの従魔たちはオヤツタイムを終えたら、一狩り行ってくると言って洞窟の奥に消えてった。


 まあいっか今回の目的は採掘。このままじゃんじゃん掘って行こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る