第79話 索敵スキル(我流)
俺の生活は午前中に道場でボコられ、午後は爺ちゃん家で色々して、夜はOLFWにログインするといった生活を過ごしていた。
居合い切りに関しては、形だけはできるようになったが、まだ速度や威力が全く足りない。これに関しては呼吸やインパクトのタイミングなどが上手く行ってないからだと思う。
「【模倣】燕返し」
「悪くないが遅いな。もっと最適化した方がいい」
道場での稽古中だが、アーツの再現はやはり難しいな。あれはシステムのアシストの影響で強制的に繰り出しているわけだが、生身となるとどうしようもない部分が出てくる。
「【模倣】燕返し」
そしてそのどうしようもない部分を一瞬にしてどうにかして繰り出してくる化け物がいる。
「【模倣】格子切り」
何とか迎撃する。ちなみに格子切りはマッドレッサーゴーレムの時に使った技だ。覚えているかな? 最近春香が高速微塵切りとか言っているのを聞いたけど、これってそんな生易しい技じゃないんだけどな。
これを覚えるために何度も受けたからな。あれは流石に死ぬかと思った。
「【模倣】八岐大蛇」
「はぁ?」
刹那、九連撃。
「受け流しの腕はまだまだじゃな。まあ教えとらんし無理もないか」
捌けるわけもなく視界がブラックアウトした。
◇
「【肆ノ太刀・燕返し】」
三連撃を繰り出し、再び構えてもう一度。
「【模倣】燕返し」
先ほどの指導をなぞるように三連撃。
「ねえ、ルカ。私には貴方のお兄さんが、アーツ使わずに【燕返し】うってるように見えるんだけど」
クランハウスから庭を眺めていたユキは珍獣でも見たかのように言う。
「うん。私の目でもそう見えるから見間違いじゃないと思うよ」
ユキは私のパーティーメンバーで、妖精族の神官だ。現在はリフォームが終わったクランハウスでくつろいでいるところなのだが、相変わらず意味の分からないことをしている兄に頭を抱える。
なんのためにアーツのシステムアシストがあると思っているのだろうか。本来できない動きをアシストでできるようにするための物なのだが、アシストなしで出来るならもはやアーツは必要ないのだけど。
家の兄はいったい何を目指しているのだろうか。そのうちOLFW流剣術とか言って道場でもはじめたりしないよね? いや本当にやるのなら正直結構通いたいけど。
「そういえばルカ、掲示板見た? 最近PKギルドができたらしいよ。一応ギルメンに注意喚起しといた方がいいと思うんだけど」
「PKギルド、そんなのできたの? まあ人も増えたしそういう人も一定数いるか。規模にもよるけどイベントで会わないように願うね。注意喚起はこっちでやっておくよ」
このゲームはPKが割に合わない。このゲームでPKをする人なんて、そうゆうロールプレイをしている人か、急速にレベルを上げたい人くらいだろう。まあそれを加味しても全く割に合わないのだが。
とりあえず注意喚起自体はしておいた方がいいよね。まあうちのギルドの人が簡単にやられるとは思わないけど。
特に現在庭で刀を振っている人に絡んだ場合は、ご冥福を祈るばかりである。まああの兄を知らない人なんて、今はほとんど居ないだろうけど。
とりあえず次の島イベの持ち物制限に関しても考えなくちゃいけないし、いろいろ準備を進めておかなくちゃね。
「そろそろ待ち合わせの時間だしフィールドに行こうか」
「そうだね。待たせちゃ悪いしレベル上げに行こう」
◇
「ラルミィ、この棒で適当に攻撃してくれ」
「主、それ着けたままするの?」
【模倣】の練習を終えた俺は、新しい技の習得に励んでいた。まあ技というよりは、派生に近いんだけど。確か爺ちゃんの話だと……
「龍也、今お前は広く気配を探っているだろうが、それで感じれるのは、相手ががどこにいるのかという程度だ。何をしようとしているのかまでは分からない」
そう、俺が分かるのは、どこに何かがいる、という程度で、その何かが、何をしているのかまでは分からない。
「そのためには索敵範囲を狭めるのが一番効率がいい。イメージとしては今までの索敵範囲を圧縮することだ。圧縮し明確に自分の近くの相手の動きを読み取れ。それさえ出来ればそれをつけたままでも攻撃を受けきる事ができる」
そう言って目隠しを渡された。
めっちゃボコられた。
……そう言うわけで、
まあそうそう簡単にできるものでもない。ある程度の時間はかかるだろうし、気長にやることにしようと思う。
翌日
……ボコボコにされた。
前言撤回、これは一刻も早く覚えようと誓った。
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