第77話 爺ちゃん家

 とりあえず収益金の分配なんかは追々決めるとして、先に動画をとることになった。

 とはいってもやることは【鍛冶】スキルによる指輪の作成。その後、【錬金】スキルによる魔法道具アーティファクト化を撮るだけだ。特に魔法陣に関してや【転写】などのアーツ、魔インクなどに関しても説明を入れておく。

 ちなみに今回作った指輪は、結構適当に作ったものなので、『魔力回復速度上昇(中)』のような効果は付けていない。そもそもこれはミスリルの鍛冶バサミなどが必要になるので、その辺は秘密にしておくことにした。


 その後、エマのことに関して話した。出会った経緯。裏ボスのクラーケンのキーキャラだったこと。人見知りな正確なこと。魔法道具アーティファクトの武器は売らないこと、などなどだ。


とりあえずはこんなものだろうか? まあ足りなかったらコウが言ってくるだろうし、今回はこれくらいでデータをコウに送ることにしよう。





 というわけで動画が完成した。

 途中で美月や春香の分のチャンネルを作ったり投稿用の動画を取るためにフィールドを回りついでにボスも倒したりしたが、そんなこんなしている間に光輝(AI)がやってくれました。ちなみにその動画に後付けで解説なんかも入れたが、台本考えるのが一番時間かかった。


 あと収益化はゴーレム倒したときの動画で余裕で通ったらしい。あれってチャンネル作る前のだったけどちゃんとカウントしてくれるんだな。


 ちなみに美月と春香もエルダーウルフの動画で収益化が通ったらしい。光輝は面倒だからやらないって言ってた。面倒とか言いながら美月と春香の動画も編集してたんだが……いや、俺の動画は作って、二人の動画は作らないっていうのは確かに不公平だとは思うが、さすがにいろいろ頼りすぎな気がする。金額は多めに渡すとしよう。


 そういえば新しいイベントの告知があった。今回のイベントは、海に囲まれた孤島ににプレイヤーが漂流しその中でサバイバルを行うという設定らしい。


 光輝たちが「島イベキター」と騒いでいたので割とよくあるイベントなのだろうか?

 後、今回なんと一週間にも及ぶイベントらしく、時間加速が行われるらしい。現在は、リアルの一日にゲーム内では4日経っているが、今回のイベントはリアルで4時間、ゲーム内で1週間という感じらしい。

 ちなみにイベント後5時間は時間加速は自粛するようにとの注意書きがあった。OLFWではイベント直後にアップデートがあるらしくゲームはできないようになるようだ。


 そして今回のイベントなんと持ち物制限があるらしく持っていけるものの種類や数に制限があるらしい。何でもかんでもインベントリに入れてたからか、何を持っていったらいいか分からんな。


 とりあえず職業に関するものは個数制限に引っかからないらしいので除外。

 これは生産職に関する救済措置だな。鍛冶道具だけで一枠埋まるとか嫌だし。俺の場合は召喚用の魔石だな。


 後は装備している物も個数制限に入らないらしいから、防具と武器もいろいろと考えなきゃな。


「龍兄、明日の準備終わった?」


「春香か。終ったぞ、あと二階の窓の鍵はきちんとしめとけよ」


 そんなことを考えていると、春香が声をかけてくる。俺たちは現在、爺ちゃん家に向かうため荷物を整えていた。

 まあ長い休みのある日はよく行ってたし、今ではなれたものだ。あまりいい思い出はないが。

 イベントまでは2週間以上の時間があるし一度顔を出そうということになった。


 移動は車と新幹線で大体3時間くらい。車はAIが自動運転してくれるし、新幹線は言わずもがな。それなりに田舎だが諸々一式持っていけば向こうでもログインは可能なはずだ。

 問題はPCをどうするかだが、春香が高性能の最新ノートPCを買ってきたのでさっそくソフトをインストールしてログインしてみた。少し映像が荒いかな、程度でラグもなかったので問題なくログインはできそうだ。


 爺ちゃん家行ってまでゲームするな? 言っただろ田舎なんだよ、畑くらいしか無いんだよ。お隣さんが50メートル以上離れてるからな。爺ちゃん家がWi-Fiつながっててよかった。






「着いたー」


「変わってないな。この辺は」


 そんなわけで着きました、爺ちゃん家。春香は一目散にドアを置けて家の中に入り、続いた俺は荷物を持っていた荷物を玄関に置く。その時……


「ガァン」と乾いた音が響く。


「爺ちゃん、さすがにもうよくない?」


「鈍っとらんか確かめただけじゃよ」


 玄関には木刀を握った俺と爺ちゃんがいた。

 なんてことはないじいちゃんが振るった木刀をこちらも木刀で受け止めただけだ。


 この人が家の爺ちゃん。俺が気配探知の能力を手に入れた原因の人である。


 ……いや、そんな大したことはしてないよ。どっかの漫画みたいに山籠もりする、みたいなことはしてないし。ただ、爺ちゃんの家にいる間は、今みたいに爺ちゃんによく奇襲されてたから、習得せざるを得ないというだけだから。


 爺ちゃんはここから少し離れたところ(約2キロ)で道場を経営しており、暁家の男は全員一度はその道場で爺ちゃんにしごかれる。見込みがある人はそのまま半強制的に技を仕込まれる。父さんも小さいころしごかれたらしい。ちなみに流派の名前は暁流らしい。


 というかうちの流派は普通じゃない。なんでも暁流では受けの技しか教えてもらえない。受けの技をすべて覚えたら、後は敵の技を試合中に模倣トレースする。模倣したら、今度は別の流派と今戦っている流派の技を織り交ぜながら戦う。


 ……という流派なのである。暁流は。


 できるわけねえだろ!!


 一体何をどうしたらそんな思考回路になるんだ? まず模倣からおかしい。相手の技の模倣なんて即興でやるものじゃないし、さらに別の流派と織り交ぜるっても普通じゃない。


 まあその外にも言いたいことはたくさんあるのだが、分かりやすく端的にまとめると、そんなん出来るなら皆やってるんだよ。武術なめんな。

 ……というわけである。


 まあそんなこんなでその暁流を無理やり叩き込まれた俺は、ある程度の動きなら模倣出来るようになったのだ。


 完璧にはできてないよ。完璧にできていたら、模倣後に改編する必要はないからね。あれは完璧にできないからこその苦肉の策だから。


 ちなみにじいちゃんの道場は暁流以外の武術も教えている。俺もそっちが良かったな。

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