第72話 大大剣
枝と根の同時攻撃が始まった。
さすがにこの量を【飛行】で除け続けるのは無理なので、スキルを解除し地上に降りる。
下からの攻撃は動き続ければ避けられることは、分かっている。
なので注意するのは上からの攻撃。枝の叩きつけだ。
威力は高いが避けるのは難しくない。問題は、エルダートレントに近づくと枝の攻撃が激しくなること。下からの攻撃も相まって面倒くさい。
さらに厄介なのが、エルダートレントが遠距離攻撃をガードすることだ。
魔法などの遠距離攻撃を行うと、枝を使って壁を作り、ガードしてくる。枝に当たっているので多少のダメージはあるが、幹に当てた時よりもダメージがかなり下がる。
エルダートレントの残りHPが少ないので、ゴリ押すこともできそうだが、それだとかなり時間がかかる。ずっと
枝をどうにかするにはやはり【飛行】スキルで飛ぶのが一番だろう。枝は、一方向からなら何とかなるかもしれないが、囲まれたらどうしようもない。壁際に寄るのはどうだろう? ……いや、逃げ場を減らすだけだな。
残りのMPも少ないし、やはり【飛行】スキルは無しで考えた方がいいか。
『主、少し良いか?』
『ナツメかどうした?』
『いやスキルのレベルが上がって新しい魔法を覚えたのじゃが、使えないかと思っての……』
ふむ、確かにその魔法なら使えそうだ。
『どうにかして隙を作るから、詠唱の準備をしておいてくれ』
隙を作るといっても、できることは多くない。【飛行】しながら壁伝いに飛ぶか? いや、それだと先ほどと何も変わらない、他に何とかなりそうなのは……
周りを見渡すが、どこもかしこも枝があって飛んだ瞬間に囲まれるだろう。せめて枝の少ない場所でもあれば……
「【ウインドボム】【ハイジャンプ】【空歩】」
リューヤはまっすぐ上に飛んだ。よく考えれば当たり前のことだが、先ほどまでリューヤとナツメは空中で枝をよけ続けていたため、気づくのが遅れた。
空中に居たリューヤとナツメが地上に降りたことで、上の方の枝の密度が劇的に下がった。枝が執拗に追うのは【飛行】スキルを使用した時のみ。
ならば【飛行】スキルを使わずに空を飛べばついてくる枝は格段に少なく済む。リューヤはまっすぐ上に飛びながらインベントリを操作する。
「【飛行】こいつを出すのは久々だな。まあ使えるやつがいなかったから当たり前なんだが」
【飛行】スキルを使い枝を集める。もちろん当たれば大ダメージは確実だが……インベントリから出てきたのは、とてつもなく大きな大剣。
以前大太刀を作った時に悪乗りして、残りのインゴットを、すべてつぎ込んだらできてしまった大剣である。身の丈を優に超えるその大剣は、
「【クイックチェンジ】ウエポンチェンジ」
右手に赤色のガントレット、左手に青白いガントレットが装備される。そしてそのまま大きく振りかぶり。
「【エクスプロージョン】」
大大剣の柄をぶん殴った。
ぶん殴らてた大大剣は重力の力を借りてさらに加速する。その先にあるのはもちろんエルダートレントである。
エルダートレントもその脅威に気づいたのか、リューヤを追っていた枝を戻して防御態勢をとる。
そう、防御態勢をとってしまった。ここでの最善手はリューヤの撃墜だった。そうすればまだ可能性はあった。
だが、プログラムは防御を優先した。
とんでもない質量の大大剣が防御姿勢をとったエルダートレントの枝で作った壁にに突き刺さる。それでも止まらない大大剣にエルダートレントは残りの枝すべてを使ってさらに壁を厚くする。そうすることでやっと大大剣は止まった。そう、エルダートレントはリューヤ最大の攻撃を受けきったのだ。
「【クイックチェンジ】タイプメイス」
追撃がなければの話だが。
急速に落下してくるリューヤがやることなんて一つである。違いがあるとすれば今回敵が単体なので範囲攻撃を使わないという部分だろう。
「【メテオストライク】」
大大剣の柄に最大威力のアーツを叩き込んだ。
大大剣はリューヤのアーツを受けてさらに深く突き刺さり、その剣先はついにエルダートレントの幹に到達しHPを大きく減らした。さらにダメ押しでもう一度【エクスブロージョン】を柄に叩き込み、反動でエルダートレントから離れる。
「ここまでやれば十分だろ。決めろナツメ」
「流石じゃ主、詠唱完了じゃ【フレアストーム】」
ナツメの魔法はエルダートレントを包み込みHPをゼロにした。
ちなみに反動でHPとMPをほぼ使い切ったリューヤは【エクスブロージョン】の反動で吹き飛んだあと空中でフェルスが回収、その後ラルミィが回復魔法を使ってHPを回復した。
「危なかった、着地のこと考えてなかった」
「えっリュー兄、着地考えずにあんなに高く飛んだの?」
「いや大大剣を使うならあの高さまでまで飛ばないと威力落ちるんだよ」
実際あの高さからでも止められたしな。
「リューヤっていつもあんな戦い方してるの?」
「いつもってわけじゃないけど、大量の敵と戦う時はあんな感じで範囲技してるよ」
そう答えるルカにエマは何とも言えない表情をするのだった。
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