第70話 ダンジョンボス

 腹ごしらえ終わったし、先に進もうと思った矢先、ラルミィがいないことに気が付いた。

 先ほどまでみんなと一緒にご飯を食べていたはずだがどこに行ったんだ?


「【コネクト】ラルミィ。どこにいるんだ。そろそろ出発するぞ」


『箱の中。もう少し待って』


 箱の中? 箱ってなんだ。そんなものどこにも……って宝箱! 罠だと思って放置してた。ちゃんと気を付けるように言っておくべきだった。ってあれ? 箱の? 宝箱を見てみると。何やら宝箱がガタガタ動いてるんだけど。いったい何をしてるんですかラルミィさん。


 その後もしばらくガタガタ動いている宝箱を見ているといきなりピタっと動かなくなり宝箱が開いた。中からは予想通りラルミィが出てきた……三つのスキルソードを持って。


 ラルミィの話によると宝箱に隙間があったから、そこから中に入って罠を解除したらしい。宝と罠、両方あるタイプだったのか。ラルミィのスキル欄を見たら【罠解除】のスキルを手に入れていた。そしてスキルソードは三つとも【魔力操作】だった。ルカ、俺を拝むのはやめなさい。運がいいのはたまたまだから。俺は関係ないから。


 ちょうどいいのでルカ、ラルミィ、フェルスの3人が取得。ルカはさっそく使ってみようと銃を借りようとしたが魔力を感じることができず断念。きっとダンジョンを出たら猛特訓する気だろう。使えるようになったら何か一つ魔法道具アーティファクトをプレゼントしようと思う。


 できればミキにも渡したかったが、無いものはしょうがない。きっとミキなら自分で手に入れるだろう……最終的に俺に頼ってきそうな気がする。やっぱ一つは残してミキに売っておくべきだったか? いや、俺のパーティーにいる以上【魔力操作】は必須になってくるし、どちらにしろ全員に取得させるのは確定だったから、ミキが自力で取れたらそれでよし、できなかったら協力するでいいだろう。


 その後もいくつか宝箱を見つけたが中身は同じものが三つずつだった。これはナツメ達は人数としてカウントされてないな。少し不服だがそういう仕様なら仕方ない。


 そして戦闘に関しては、ぶっちゃけやることがない。その理由は先ほどから俺たちについてくるフォレストウルフである。

 【餌付け】スキルの効果の一つ、料理の完成度合いでプレイヤーを助けることもある。これについてよく分からなかったが、現在出てくるモンスターをすべて、フォレストウルフが倒してしまっている。いやなんか強くね? フォレストウルフのほうがかなり一方的なんだけど、モンスターってそんなに個体値激しいの? いや、たぶん【餌付け】スキルの効果だよな。モンスターの強化なんてあったっけ? それに、経験値やドロップアイテムに関しては問題なく手に入るので、後半はただの散歩状態である。


 そんなこんなで特に問題なくボス部屋の前までこれた。フォレストウルフたちとはここでお別れだな。別れ際にインベントリから調理済みの肉を取り出して与える。


 前情報だとボスは道中で出てくるモンスターの上位種なんかが多いらしい。


「難易度はそれほど高くなかったけど一応準備をして挑もう」


「難易度を劇的に下げたリュー兄がそれを言うの?」


「私もそう思う。まあでもあんまり活躍できなかった分、ここで頑張るよ」


「エマに関しては飯の手伝いだけでおつりがくるレベルで活躍してもらったんだけど」


「あれ? てことは私が一番活躍してないってこと?」


 いや、そこは適材適所だと思うけど……うん、あの時ルカが手伝ったらきっと地獄絵図になるな。おとなしくは配膳とかしてくれて助かった。


「【召喚】ナツメ、フェルス。後エマにはこれ、一応貸しとくぞ」


 ナツメとフェルスを召喚し、エマにはクレネードランチャーを貸しておく。エマなら上手く使ってくれるだろう。


「よし、準備完了。それじゃあ突撃!」


 そう言うルカとともに、ボス部屋の中に入った。



「ちょっとデカくない!!」


 うんデカいね、具体的にはゴーレムより。二階建ての建物くらいかな?

 そんなこんなで大きいトレントと戦ってます。名前はエルダートレント。枝が鞭のように襲ってくるため近づくのが難しい。しかもこのボス飛んでいる敵を優先的に狙う習性でもあるのか。飛んでいるとすごい量の枝が一斉に襲ってくるのでうかつに飛ぶこともできない。クラーケンと同じタイプだな。


 そういうわけで、地上で戦っているわけだけど、どうやら魔法が効きやすい相手のようだ。弱点属性は火、耐性があるのは水かな。こういう時ナツメはほんと助かるな。


 問題があるのはルカとフェルスの二人だ。ルカはもともと魔法剣士という職業柄、今回みたいな場合に、器用貧乏になりやすい。しかもルカの場合、魔法はあくまで防御力や機動力のブーストとして使っていることが多いから、さらにダメージが出にくい。


「こうなるならもっとINTあげとくべきだったな」


 まあ実際ルカの戦い方は間違えてはいない。器用貧乏になりやすい魔法剣士は物理か魔法どちらかに特化して片方を補助で使うという方が戦いやすい。今回ルカは物理寄りだったというだけである。


 そしてフェルスもルカと同様に接近して戦うことが多い。魔法は牽制や陽動で使うことが多く、さらに言えば魔法は水の派生の氷である。おそらく氷にも耐性があるとみていいだろう。


 となるとダメージを出せるのが、俺、ナツメ、ラルミィ、エマの四人となるわけだが、ラルミィは現在タンクをしてもらっているから、実際は三人か。


 どこか物理でも通りやすい場所があればいいんだけど、枝が邪魔すぎて近づくのすら難しいからな。

 少し試してみるか。


「【クイックチェンジ】ウエポンチェンジ・タイプメイス、サブウエポン・タイプメイス」


 両手にメイスを持ち【投擲】スキルを使って投げまくる。投げたら【クイックチェンジ】で回収してもう一回投げる。


 そうしていると何本かは枝に防がれずに本体の幹にあたる。HPは……うん少しは減ってるけど投擲によるものかはよく分からないな。


 そうなるとやっぱり直接懐に入って攻撃するのが一番分かりやすいか。


「【クイックチェンジ】タイプ刀【壱ノ太刀・刹那】」


武器を刀に持ち替えて懐に飛び込む。幸い、枝はそこまで硬くないので簡単に切り落とせるが、近づけば近づくほど枝の密度は増していく。


「【ウインドボム】【ハイジャンプ】【空歩】【壱ノ太刀・刹那】」


【ウインドボム】【ハイジャンプ】【空歩】のコンボで枝をよけ、よけきれない場合は【壱ノ太刀・刹那】で強引に押し通る。多少の被弾は気にせず、致命傷になりうる攻撃だけ躱し少しでも幹に近づく。


【飛行】スキルを使わなければ、空中に居ても枝が一斉に襲ってくることはないみたいだな。


「【参ノ太刀・流水】【クイックチェンジ】サブチェンジ・タイプメイス」


 スローモーションになった世界で、もう片方の手にメイスを持ち、枝を伝い幹の近くまで走る。


「【ハイスマッシュ】【弐ノ太刀・五月雨】」


 渾身のアーツを叩き込み、離脱する。


「【ヒール】さてどうだ?」


「結構効いてる。幹なら物理でも効くみたい」


「いや、効きすぎだな。おそらく幹に対しては物理攻撃が弱点なんだろう」


「でも私たちじゃ枝が多すぎて、さっきみたいに幹に近づくのは無理だよ」


 確かに、さっきの俺みたいに枝をよけながら近づくのは難しそうだ。

 つまりルカ達を攻撃する枝をこちらに引き付ければいいわけだ。となれば……


「いけるなナツメ」


「無論じゃ」


俺とナツメは【飛行】で空に飛び立つ。

ここから俺たちは弾幕ゲームかな。

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