第64話 ゴールドスライム

 さて、どうやってゴールドスライムを倒すかだが、速さで勝てないとなると、囲って追い詰めるか、範囲攻撃で攻撃するかの二択だろう。


 囲うのは数が足りない。ナツメとフェルスを出している関係上、6人を超えてしまうため従魔は召喚できない。ナツメとミキは先ほどから続々と湧き出るスライムの対処に追われているので、こちらには来れないだろう。


 となると4人しかいないこの状況だと、囲いきれない可能性が高い。


 フェルスを送還して、ラルミィを召喚するか?

 いや、今のタイミングだと遅いな、分裂して囲うのにもあの速さだと囲いきれない可能性がある。ラルミィで囲うなら初手で行うべきだった。


 もう一つの範囲攻撃だがこれは俺とルカが可能だ。ゴールドスライムにどれほど有効かわからないがやってみる価値はあるだろう。


「ルカ、範囲攻撃だ」


「了解【風刃乱舞】」


「【クイックチェンジ】タイプグレネードランチャー」


俺とルカの範囲攻撃がゴールドスライムを捕らえる。さすがにあの魔法から逃げることはできないだろう。


 ……と思っていたら砂塵の中から高速移動する物体を発見。

 ゴールドスライムだった。


 おい、どうやってよけたんだ?あれを躱すとかどうなってんだよ。


範囲攻撃を躱されたとなると、次はどうするか。あれを使ってみよう。


「【クイックチェンジ】タイプハンドガン」


 武器を拳銃に切り替えてマガジンを取り変える。


 取り替えたマガジンは土魔法のストーンバレット。

 射程と追尾性能を極端に上げたものだ。……速度と威力は察してほしい。


 この弾丸のすごいところは、速度を遅くしたことにより射程が続く限りずっと対象を追い続けることだ。


 ということでオートでゴールドスライムをターゲットにしてストーンバレットを四方八方に打ちまくった。


 その弾丸は弧を描きながらすべてゴールドスライムのところに向かって進んでいく。


 これならどう躱しても別の球がヒットする。攻撃力は低いが何もないよりはましだろう。


 ゴールドスライムは追尾してくる球を1発2発と除けていき、3発目に着弾。その後の球のすべて着弾した……が、HP減ってるのか? あれ。


 まったく効いてないように見える。もしかして魔法に耐性があるのか? となると囲むしかなくなるんだが。どうするべきだろうか。


 コウ達はどうやってクリアしたのだろう。アルミの速さならゴールドスライムに追いついても不思議じゃないな。他の人は雑魚処理に向かったのだろうか? 動画が出てれば確認できたのだが今回動画は出てないからな。


 時間も残り少ないし考えるのは次回でいいだろう。とりあえず今回は……


「ルカ、ゴリ押しだ」


「了解【空歩】【ウインドブースト】」


 ルカが魔法で自身にバフをかける。俺もミキとナツメ以外にAGIバフを掛ける。


「【アジリティエンハンス】【クイックチェンジ】アーマーチェンジ【ウインドボム】」


 できうる限りの最高速度で攻撃を試みるが全く届かない。とりわけ俺とルカの接近に気づくのが速い。シノブさんやフェルスも俺たちよりは近寄れるが、一定の距離内に入るとすぐに逃げられる。


 ん? そもそも何でシノブさんとフェルスは俺達より近づけるんだ? ゴールドスライムの索敵能力範囲は大体わかる。俺とルカが一定の距離に入ると逃げ出すからだ。でもシノブさんとフェルスは俺達よりも近づいても逃げない。


 もしかしてゴールドスライムの索敵には何かの制限があるのか?


 まず考えるのはステータス。シノブさんとフェルスの高いステータスはAGI、つまり速さだ。AGIが一定以上あると近づきやすくなるとか?

 いや、それだとルカが俺と同じくらいの距離で離れられるのはおかしいな。AGIで言えばルカは俺よりずいぶん高いし。

 後はMPが低いとか? 

 いやフェルスはそれなりに魔法が使えるしMP量で言ったらルカと大体同じくらいある。

 後は何だろうな。HPだとルカはそんなに高くないしVITやMNDも俺が高いけどルカたちは低いしな。ステータスじゃないのか?


 次は武器の数とかシノブさんはなんか暗器とかいっぱい持ってたな。

フェルスは小太刀だけだし違うか。


「【潜伏】【加速】【超加速】」


 シノブさんが【隠蔽】を使って姿を隠し【加速】と【超加速】の重ね掛けで一気にゴールドスライムに近づくが、躱されたな。


 ん? シノブさんとの距離が俺達よりも離れた? なんでだ? やっぱりAGIによって索敵距離が変わるのか? いや違うな。それだったらフェルスも逃げられてるはずだし。となると考えられるのは……


 俺は羽を消しバフを消しそのまま歩いてゴールドスライムに近づいた。

 20メートル、15メートルと距離が縮み5メートルほど近づいたところでゴールドスライムが逃げ出した。


 「シノブさん、ルカ、フェルス。ゴールドスライムは、発動しているスキルと魔法の数に応じて索敵距離が変わるみたいだ。全部解除して走れ」


 とそれからは思いっきり走った。アーツにも反応するようで結局囲んでタコ殴りにして何とか倒した。いやータイムアップ寸前だったね。あそこでシノブさんがスキルを使ってくれなかったら絶対わかんなかったな。


結局索敵距離のからくりは発動しているスキル、魔法、アーツの数だった。


 シノブさん 【アジリティエンハンス】【索敵】

 フェルス 【アジリティエンハンス】【索敵】

 ルカ 【アジリティエンハンス】【空歩】【ウインドブースト】

 リューヤ 【アジリティエンハンス】【飛行】【魔力操作】


 とまあ大体こんな感じだろう。【召喚】スキルがカウントされないあたりカウントされるスキルと、されないスキルがあったりするだろうし、シノブさんやルカが持っているスキルを全部は知らないから、詳しくは分からないが、まあからくりが分かってしまえば簡単だな。


 ナツメとミキも俺たちが悪戦苦闘している間、湧き続けるスライムを範囲魔法で倒し続けてくれたので助かった。


 「それで、報酬は?」


 「ドロップアイテム意外はたぶん無いと思うぞ。俺達はクエストを受けたわけじゃないしな」


 俺の時はアーティファクトの作り方が報酬だった。クラーケンを倒した後、店をのぞいたが増えたのはキーアイテムの釣り竿、そしてクラーケンからドロップする素材の一部だった。


 恐らく今回も似た感じで、キーアイテムの収光粉とゴールドスライムからドロップする素材の一部が店に並んでいるのだろう。


 ルカがそれを聞いて少しがっかりした様子だったが、楽しかったかと聞くと、満面の笑みで楽しかったと言っていたので満足したのだろう。


 そんなこんなで裏ボスの討伐は終了した。


 そういえばみんなレベルアップしたよ。無限湧きのスライムの経験値が、かなりおいしかったみたいだね。

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