第65話 アップデート

 後にコウから聞いた話だと、ゴールドスライムのクエストはアルミが受けたものらしい。

 最初は一人でクリアしようとしたが、ゴールドスライムが速い上に、無限湧きのスライムたちが邪魔でクリアできそうにないので助っ人として呼ばれたらしい。


 コウ達が合流してからも何度か失敗したらしく、分かったのは遠距離攻撃は一つも聞かないという事らしい。

 俺たちは魔法で攻撃したが、コウ達は魔法以外にも弓矢や投石、遠距離攻撃のできるアーツなどを撃ったらしい。それが全くダメージを与えられず、そこでようやく索敵範囲に気が付いたらしい。


 索敵方法を検証して、それがスキルやアーツの回数だと気づいた後は簡単で、アルミが速攻でゴールドスライムを捕まえてコウに投げ、コウの大剣で滅多切りにしたらしい。俺たちは取り囲んで殴ったが、アルミの速さなら捕まえられるのか。


 恐らくだが裏ボスの発生条件は、特定のスキルの入手、後はクエストを出してくれるキャラからの一定異常の好感度では無いかと考えている。


 本来はこの時期に裏ボスという存在が発覚して、他のプレイヤーも条件を達成させるために、たくさんのスキルを取ったり、好感度の上昇に努めたりと行動を起こさせる。というのが狙いじゃないか、とコウが言っていた。


 俺のせいで裏ボスの存在が、かなり早めに知られてしまったが、その点はあるプレイヤーが問題を起こして、AIからかなり厳しめの処罰が下ったことにより、プレイヤーが好感度についての考えを改める必要がある、なんてことになる事件があったらしい。なんでも実質、数日間のログイン禁止措置だとか。


 そろそろ魔力操作のスキルソードも出てくるだろう。今回のアップデートで追加されるのかも知れないな。錬金に関してはどうするべきだろうか。人見知りのエマのことは出来れば隠しておきたいし、錬金板を作って売るか?


 いや、今すぐじゃ無くても、魔力操作の有用性が知れわたってからでも良いかもな。そこら辺はコウ達に相談してからで良いだろう。







 ということでアップデート当日。今日は特にすることもないのでどうしようか? たまにはランニング目的じゃなく出かけるのもいいかもしれないな。


 春香は学校でバンドの練習らしい。春香は学校でガールズバンド同好会なるものに参加している。人数は4人で春香はギターをやってるらしい。

 ちなみに我が校では、部活を組むのに3人以上の部員がいる必要がある。春香たちが部活ではなく同好会なのは、顧問が居ないのと、活動がかなり緩いからである。


 ちなみになぜか俺が呼ばれることが多く、たまに教えている。いや、まあ確かに春香に付き合ってベースとかやったことはあるけど、齧ったくらいでほとんど役に立たないと思うんだけど、なんでみんな俺にアドバイスを求めるの? ベースはともかくとしてキーボードとドラムは専門外なんだけど、俺にどうしろと?


 そんなこんなで結局ドラムとキーボードを勉強してアドバイスをできるていどにはなった。まあ覚えるのは得意だからね。指の動きさえ分かれば、後は少し調べてマネするだけだから、弾くこと自体は少しの時間があればそれなりに出来るんだよ。

 そんなに簡単に習得できるならだれも苦労しない? 確かに今は苦労していないけど、トレース技術を身に着けるまでには血の滲むような努力をしたのだ。これ位の恩恵はあっても良いだろう。


 実はOLFW内にもギターやベースなどの楽器があるらしく、二陣の追加とともに同好会の子が全員揃うそうなので、次回からはゲーム内で待ち合わせするらしい。

 また付き合わされるのだろうけど、まあアドバイスぐらいならそんなに時間もかからんしいいか。


 さて、散歩に出かけるか、今年はじいちゃんから遊びに来いと言われてるし、どこかのタイミングで行かないとな。じいちゃん家ではあまりいい思い出はないんだが。春香も行きたがってるし予定を組んでおこう。


 あ、そういえば冷凍庫の中のアイスが尽きかけてたな。新しく買っておかないと。帰りにでも買うとしよう。

 そんなことを考えてたら、なんか店の前に人集りが、なんかやってんのかなと覗いたら見覚えのある後姿が見えた。先輩だな。ここは、ゲーセンか、おいおいこの時期にこんなところにいていいのか? 受験生。


 俺は2年生なので先輩は3年生、つまり受験生だ。受験生がこの時期にこんなところにいていいのだろうか?


 どうやら人だかりの理由は先輩の連勝記録だそうだ。あのゲームは確か向かいに別のプレイヤーが座って行う1vs1の格ゲーだったはずだ。現在15連勝中で、この店の最高記録は17連勝らしい。


 うん、春香だな。17連勝という文字の書いてあるプラカードを持った写真が飾ってある。あのゲームの練習によく付き合わされた。あの妹はいつの間に17連勝なんてしたのだろうか?


 あ、また勝った。これで16連勝だ。


 さあ次は誰だと言って周りを見る先輩と不意に目が合った。

 しまった、見つかった。手招きされて道が出来た。これでは逃げられない。仕方ない、観念して相手をするしかないか。


「神無月先輩、受験生じゃないんですか?」


「あいにくと私は既に推薦で大学は決まっていてな。こんなとこで遊んでいても十分余裕があるんだよ」


 神無月咲夜先輩、彼女とは中学一年生の時に出会った。

 前々から俺に興味があったらしいが、俺としては何のことかわからなかった。

 小3の時? なんかあったっけ? ああそういえば年上をボコボコにしたことがあったな。でもあれはあいつらの動きが遅かっただけだしな。他には……特に思い当たる節はないな。


 出会ってから、事あるごとに絡んできて今では軽口を叩けるくらいには親しくなった。

 ちなみにその時俺は知らなかったが先輩の家はかなりの大企業で先輩は正真正銘のお嬢様らしい。

 学校でその話を聞いた時はかなり驚いた覚えがある。逆に光輝たちは何で知らないんだよみたいな顔をしていたが。

 いやほんとに知らなかったんだよ。だって先輩この人重度のゲーマーだし。Eスポーツの大会にも何度か出場して入賞したこともあるらしい。 


 そう、先ほども言った通りこの人は重度のゲーマーなのだ。もちろんこのゲームもかなりうまい。でなきゃ16連勝なんて出来ないだろう。

 そしてこのゲームの17連勝目に俺が選ばれたというわけか、まあ指名されたのなら相手しよう、できる限り粘るとしよう。

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