第41話 戦闘狂達による駆逐

 コウです。只今、西の森に来ています。



 ドゴンッ!!

 ズガンッ!!

 バコンッ!!



 ん? 今の音は何かって?

 何ちょっと、二本のメイスが宙を舞い、指輪が光って水や火や風が飛んで行っているだけさ。


 ちなみにナツメは後方の敵を相変わらずの調子で一撃で屠り、ラルミィは6匹に【分裂】し3匹が【捕食】残りの3匹がそれぞれ護衛している。


 ……いや何なのあれ!


 指輪の効果が高いのはよく分かった。でも何でこんな地獄絵図になってるの?

 いや地獄絵図ってのは違うな、さっきからモンスターを一体も見てないんだけど。一体も見てないのにモンスターの悲鳴とメイスが振り下ろされて何かに当たる音と魔法が着弾した音が聞こえてくるんだよね。お前らどうしたのその索敵能力!


 っていうかあの指輪付けたら戦闘狂バーサーカーにでもなる効果が付いてるの? リューヤはおいといてミキやルカの目がさっきっから怖いんだけど。


 そんな状態が30分続き、更にその後エルダーウルフの周回に付き合わされた。あれ、リューヤ。何でナツメとラルミィを【送還】してるの?


 10周目が終わり、ようやく落ち着いた三人リューヤ・ミキ・ルカ。いや、あそこまで何もしてないボス戦は初めてだよ。


 俺の前のフォレストウルフは後ろから火と水の広範囲攻撃魔法が飛んできてHPとともに吹き飛び、反対側を見れば風とともにものすごい速さで動いている剣がフォレストウルフを刻んでいる。


 あれ? フォレストウルフってこんなに簡単に対処できたっけ? 最初の時って確か、このメンバーにナツメを入れても押されてなかったっけ? 俺何もしてないのに対処できてるんだけど、どゆこと?


 その後は、フォレストウルフが出てこなくなった(エルダーウルフのHPがリューヤによって半分になった)後エルダーウルフに集中砲火を浴びせて終了。


 あれ? 俺何もしてないような……


『コウはレベルが上がった』


 あ、レベル上がった。

 何もしてないけどレベルが上がってくれて助かるわ。


 ……っていやそうじゃなくて。

 一体何があった!




 ◇




「調子に乗ってやったわ。反省はしていないわよ」


「指輪の効果が強い上にMPの回復が目に見えて早いからつい」


「最近暴れてなかったからその分」


 うん、こいつら全く反省していない。ミキに至っては反省していない宣言をしているし。

 現在は落ち着いたがつい先ほどまで森の中のモンスターをこの三人戦闘狂が駆逐してしまったためモンスターが一体もいないという事態が起きてしまった。おかげで森の中でレベル上げをしていた人はかなり被害を受けた。


 とりあえず掲示板でうちのパーティーメンバが暴走したことを謝罪と一緒に報告し今は落ち着いていると言って何とか事なきを得ている。もちろん指輪のことは秘匿しているが。このままだと気付くやつがいてもおかしくない。というか確実に気付かれる。

 まあ、ミキが杖を持ってない時点で指輪の存在に気付く奴はいるだろう。とはいえ俺たちが語ることはないし、指輪を作っているリューヤが尾行に気付かないとは思えないからしばらくは大丈夫だろう。


 他のやつが【錬金術】を見つけないとは限らないけど【錬金術】には【魔力操作】が必須らしいし、そうそう見つかることはないな。

 今の俺って結構好感度にビビってるよな。まあ目の前で1週間の牢屋暮らしの宣告を受けたやつを見ればそうなるのは必然かもしれないが。


 とりあえず、指輪の効果がすさまじいのは分かった。今回はそれで良しとしよう。


「そうだリューヤ聞きたいことがあったんだ」


「なんだ?」


「ラルミィについてだ。あのスライム【光属性魔法】使えたよな。前に聞いたかも知れないが、【光属性魔法】は神官しか覚えられない魔法だ。でも従魔は、職業が選べない。ラルミィは種族スキルに【光属性魔法】を覚えているのか?」


「いや、種族スキルに【光属性魔法】は無い。スキルソードを使ったんだ」


「スキルソードを使っても【光属性魔法】は本来神官しか使えないぞ」


「そうなのか! 知らなかった」


 ナツメとラルミィを【召喚】する。


「ラルミィ今の聞いてたよな。どうして使えるんだ?」


『わかんない』


 ラルミィが分からないとなると残る望みはこの世界のことでは博識のナツメだけだ。


「それは、ラルミィがスライムだからじゃな」


 ナツメが言うには、スライムはどのようなスキルでも習得し覚えることが出来、更に使う事が出来るらしい。だだ問題もあって。たとえ【龍魔法】のスキルを覚えたとしても。龍に擬態でき無ければ、使うことはできないように、色々と使うには条件があるそうだ。


 ちなみに初期の属性魔法には制限がないらしい。

 ラルミィにはタンクになってもらいたいのだが、魔法の方が良いだろうか。いや魔法で言えばナツメがいるし、ラルミィにはタンク兼魔法支援になってもらおうかな。


 疑問が解決した所で三人と別れた。


「そういえば二人はメンバーの方はどうなった?」


「こっちは土曜にはみんな来れるって」


「こっちも同じ感じね」


「そうか、俺の方も同じ感じだ、今週一杯って感じだな。このパーティーで狩りをするのは」


「別れても負けないからね」


「リューヤはどうするの?」


「とりあえずぱ野良パーティの時は放置で正式加入の時は俺たちに連絡してからにしれもらえるように頼んどいた」


「そう、ならまあ大丈夫ね」


 リューヤのやつをパーティーに誘いたい奴は多いだろう。あいつは強いうえにいろいろな情報を持っている。はっきり言って物凄くほしい人材だ。リューヤの力を悪用して儲けようと思うやつもいるだろう。


 実際βの時にリアルマネーで物を交換しているグループがいて問題になったことがある。あいつにはできれば、そういうことには関わらせたくない。


 だがあいつにはパーティーの勧誘がほとんどない。理由は俺たちがあいつの知り合いだと、友達だと掲示板やら何やらで語っているからだ。


 俺たちはこの世界では一応トッププレイヤーと呼ばれるほど強い。その俺らの友達を悪用したらどうなるかはわかったもんじゃないのでパーティに勧誘することをためらうやつが多いのだ。


 リューヤが騒ぎを起こしてくれたのも実は結構助かっている。そのおかげで俺たちの関係も広まっている。


 リューヤは召喚士なのでいずれパーティ枠は召喚獣で埋まるだろうけどその間に何があるかわからないので、パーティに誘ってレベリングもしに行ったりした。今回のでもレベルが上がったらしいしもうすぐ3体目が呼べるだろう。


 そうなればさらにパーティーに呼びずらくなる。いずれはパーティーへの勧誘もなくなるだろうけど一応保険はあったほうがいいのでパーティに入るときは俺たちに言うように言っている。


 まあ、その心配もそろそろなくなるので、βの時のパーティーメンバーに連絡を取ってそろそろ元のパーティーに戻るという話になったのだ。


 とは言えリューヤのことだからこれからも俺らの度肝を抜くようなことを平然とやってのけそうなんだよな。

 俺たちがいるにしろ、いないにしろ、アイツの周りはトラブルが起こりそうだな。


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