第40話 デュアルマジックリング

ミスリルの指輪(魔法道具アーティファクト)


ミスリルで作られた指輪

魔法道具アーティファクトのため杖の代わりにもなる


INT+5

魔力回復速度上昇(中)

火属性魔法威力上昇(極小)

水属性魔法威力上昇(極小)



ついに完成した。

うん、これならきっとミキも喜んでくれるだろう。


「名は付けるの?」


エマが訪ねてくる。


「名? これの名ってミスリルの指輪じゃないのか?」


アイテムを【鑑定】するとミスリルの指輪と書いてある。


「システム名とは別に名を付けることが出来る。そうすると他の人から名前しか見えなくなって装備の秘匿性がましたりする」


PVPなどでは【鑑定】で相手の装備を見て戦い方などを予測して戦法を考えたりするが、名を付ければ予測が出来なくなったりする。


たとえばミスリル性の武器に銅の武器なんて名を付けて、相手を油断させたり出来るらしい。この世界では武器の性能はかなり重要になる。名を付けるだけで大きなアドバンテージになるというわけだ。


まあ、先ほどのようにミスリル性の武器を銅の武器と名を付けても武器の色なんかでバレて仕舞うが今回の指輪のように誰も知らないものに付ける場合は材質などは特定されにくい。


今回ミキにこの指輪をあげたとして杖を持っていないミキの魔法の威力を見た誰かが、ミキの指輪を鑑定しないとも限らない。もし指輪の性能を見られたらどんな影響が出るかも分からないな。

もしかしたら朝、光輝と話したようにここに人が押し寄せる、なんてことが起こるかも知れない。出来ればそれは避けたい。


ていうか今、エマがシステムとか言ってたよな。NPCにシステムって概念があるんだな。


それはともかく、名を考えないといけないな。


とは言えもう今日は寝よう。明日名を付けて渡せば良いしな。

と言うわけでその後ログアウトして就寝。







翌日、学校から帰ってきてログイン。


「あ、いた」


今日は、三人と一緒に狩りに行く予定にした。ミキに渡したかったのもあるが。やはり指輪の性能も見ておきたかった。


「ミキこれ上げるよ」


ミキに指輪を渡す。


「これって、デュアルマジックリング?」


ミキが指輪を見て言った。


「【鑑定】使ってみな」


現在ミキが指輪を持っているので【鑑定】を使えば性能を見ることが出来る。

ミキは言われたとおり【鑑定】を使う。


「……………」


「……………」


どうしたのだろうか? 指輪型が気に入らなかったのだろうか。


「………ねえ」


「どうした?」


「これ他に誰かに見せたことある?」


「いや、俺とミキを除くと、作る時に手伝ってくれたNPCだけだな」


「そう、みんなこっち来て」


そう言うとミキは、ギルドに向かって歩いていく。

どうしたのだろうかと首をかしげながらコウとルカを見るが、二人はまたかという感じでミキについていった。


「またなんかやったのかリューヤの奴」


「この前ミキ姉の使う魔法の属性聞いてきたから多分それ関連だと思うよ」


……何か言ってるけど二人は心当たりがあるのだろうか?

取りあえず俺も二人の後について、ギルドに向かった。


ギルド内でミキが受付の人と話している。

コウに聞くと部屋を取っているらしい。ギルドにはいくつか個室があるらしく、周りに聞かれたくない話などはその個室などでするらしい。ちなみに中で生産は会出来ないそうだ。


「さて、話を聞きましょうか」


ミキが個室の中にある椅子に腰掛けて指輪を机の上に置きながら言った。


「何の話をだ?」


「そうね、リューヤにはそこから話さないとね」


「ミキ姉ちょっと見せてもらうね。【鑑定】」


ルカが指輪に向けて【鑑定】を使う。


「ふむふむ……へ? MP回復速度上昇ッ!! 魔法威力上昇ッ!! これって」


「こりゃまた恐ろしい物を作ったなリューヤ」


ルカがやけに驚いているけどMP回復速度上昇や魔法威力上昇ってそんなに凄いのか? そういえばアーデさん達が杖に鉱石を埋め込むと、威力が上がるとは言ってたけど、宝石のことは何も言ってなかったな。


俺がエマから教えてもらったことを、今はどれくらいのプレイヤーが知っているんだろう。


「取りあえずリューヤは何が凄いのかをいまいち分かってなさそうだから言っておくけど、このデュアルマジックリングの効果であるINT+5、これはまだ良いのよ。今の時点で出来るアクセサリーで言えば最高品質なんだけどね。問題はこのMP回復速度上昇と魔法威力上昇よ。いままで一つのアクセサリーに二つ以上の効果が付くなんて事は無かったの。それがこのアクセサリーは4つよ。この効果は狙って出したのかとか、一体どうやって出したのかとか、色々聞かせてもらうわよ」


何で俺はプレゼントを渡しただけなのに尋問されているのだろうか? これって渡さない方が良かったのでは?


結局、エマや【錬金術】、魔法道具アーティファクトや【付与魔法】、宝石のことなどすべて話した。


「【付与魔法】にそんな使い方があったなんてね。でも錬金術か……そのエマってNPCのことを考えると公表はしないほうがいいわね。下手すれば好感度が一気に下がりそう」


「ああ、それは助かるな、あそこ静かだし何よりエマと話すのは楽しいからな。そういえば【付与魔法】のことなんだけど、あれって1.1倍ってホントか? 俺使ってるとそれ以上に感じるけど」


「それはリューヤが天使族だからよ」


「天使族? ……ああ、種族スキルか!」


「そう、天使族は種族スキルに【付与魔法】がある。前に話したと思うけど、種族スキルは普通のスキルよりも効果が高いからね。だからリューヤの【付与魔法】は普通の【付与魔法】より効果が高いのよ」


種族スキルに【付与魔法】を持っている種族は今のところほとんどいない。いたとしても生産職とは限らないし、アイテムエンチャントを生産中に使うなんて普通は考えない。そして【付与魔法】は不遇だからスキルを覚えようとする人もいない。おそらくアイテムエンチャントを使って防備を作ってるのは俺くらいだろう。


「【付与魔法】についてはまだ公開すべきじゃないかもね」


「なんでだ?」


「【鍛冶】やってるなら分かると思うけど、インゴットなんかを作る時ってMP使うでしょ。今はまだ生産職が育ちきってないから【付与魔法】で追加効果が出せるなんて情報を出すと、みんなこぞって【付与魔法】を取り出して、結局MPが足りなくなって生産ペースが落ちるのよ。リューヤは種族とかレベルの関係上MPが足りなくてインゴットが作れないとかいうことはないんだろうけどね。公開するなら来週の週末くらいにしたほうがいいわね。でもアーデさんとかトップの生産職なら、いいと思うわよ」


「わかった。アーデさんとそこらへんは相談してみるよ」


「さて、じゃあ早速これ使ってみましょうか」


そう言ってミキはデュアルマジックリングを装備する。


「そうだ、ルカにもこれ」



ミスリルの指輪(魔法道具アーティファクト)名:ウインドマジックリング


ミスリルで作られた指輪

魔法道具アーティファクトのため杖の代わりにもなる


STR+5

魔力回復速度上昇(中)

風属性魔法威力上昇(小)



これは昨日作った時に出来た失敗作だ。INTを増やしたかったのだが、何が増えるのかランダムなのでうまくいかず、これはSTR∔5になってしまっている。ミキにはあまり意味がないが。魔法剣士のルカには効果があるだろうから。エメラルドをはめて、作ってみた。上昇値が(極小)ではなく(小)なのは、宝石を一種類しか使ってないからだろう。


「これ私の! ありがとうリュー兄」


「俺にはないのか?」


「魔法を覚えてこい」


まあ鬼人族が魔法を覚えたところで威力が低すぎて使い物にならないだろうがな。


「二人とも使ってみた感想を教えてくれ。後ミキは、武器が欲しくなったら遠慮なく言ってくれ」


もしデュアルマジックリングが気に入ってもらえたら杖を持つ必要はない。つまりナツメのような魔法主体の両刀アタッカーになれるわけだ。

あ、でも大楯をもって固定砲台なんかもありだな。でも高いSTRとVITを求められるから狐の獣人のミキじゃ無理か。


ここは無難に武器だな。杖を使ってたし杖術かな? たしか進化の派生に棒術があったし棒がいいだろうな。作るとしたらなるべく軽いほうがいいだろうし、リンカさんにも頼もうかな。先端のほうにだけミスリルを使えばそんなに重くならないだろうし。


まあそれもデュアルマジックリングしだいか。


ここんところ鉱石掘ったり鉄叩いたりであんまりバトルしてなかったし久々に暴れるか。





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