第42話 フライビルフィッシュ戦

 さて三人とも別れたし夕飯を作るのはもう少し後でも良いから何をしようか。


 さっきまで狩りしてたし、生産でもしようかな。

何しようか、【鍛冶】かな。あ、そういえば【錬金】全然やってないな。

 エマと一緒に作るのも楽しいけど、頼ってばっかなのも悪いし【錬金】を伸ばすことにしよう。


 と言うわけで部屋を借りる。

 【鍛冶】のレベル上げの時に【錬金】の簡単なレベル上げの方法も教えてもらった。


 錬金板を置きその上に石を二つ置く。


「【上位変換】」


 【上位変換】は、【錬金】スキルのアーツの一つで、同じ物を一定数錬金板の上に置き、使う事によって上位のアイテムにすることが出来る。



 大きな石


 大きな石。大きいので手の中に収まらず

 投擲には向かない



 数少ない石の用途が減ってないか? と思いはしたが取りあえずはこれで成功だ。

 気を取り直して次だ。


「【下位変換】」


 こちらも【錬金】のアーツだ。効果は【上位変換】真逆で今錬金板の上には石が二つ転がっている。


 ここまで来れば分かるだろう。後はMPが尽きるまで錬金板に魔力を流しながら、【上位変換】と【下位変換】を繰り返すだけだ。使ってるのは石なので、簡単に手に入るから失敗しても問題ない。








「龍兄はあの後どうしたの?」


 そう言ってラーメンをすする春香。


「【錬金】のレベル上げだな。春香達は?」


「そろそろ船が作れそうって話だから木を攻撃しまくって木材にしてた」


 船か。と言うことはそろそろ南の攻略が始まるな。


「じゃあ俺はこの後、船が出来る前に南のボスでも倒そうかな」


「えーずるい。私も連れてって」


「そうだな。片付けを手伝ったら連れてってやる」


「………………分かった」


「なっ!!………」


 春香が手伝っただと! そんなことあるはずが! いや、だが現に今春香は台所で食器を洗っている。明日は槍が降るかもしれないな。


「龍兄、何考えてるかは大体分かるけど流石に槍はないよ」


 うん、確かに槍はないな、ぜいぜい地震くらいだろう。


「私の行動一つで天災が起きたりはしないからね」


 なんか俺の考えてることが筒抜けな気がするんだが。


「うん筒抜け。ていうか顔に出すぎだよ」


 なるほど、ついに春香は読心術を手に入れたか。


「顔に出すぎだって。読心術じゃないよ」


 読心術じゃないだと。となるとエス……


「エスパーでもないからね」


「いやなんで顔だけでそこまで分かるんだよ」


「…………なんとなく?」


 うん春香がわからないものを俺が分かるはずがない。こういう時は考えないのが一番だ。


 とは言え春香は片付けを手伝った。春香も連れて行かないといけないな。








 と言うことでやってきました南の海。


「じゃあ行くか」


「おー」


 とは言えやることと言ったらルカをお姫様だっこしてボスエリアまで運ぶだけなんだが。


 というか今更だけどクラーケン戦の時みたいに足場があると良いな。本来は船の上で戦う物らしいが。


 まあいざとなったらルカを海に捨てて戦うかな。


「と言うわけで安心しろ。骨ぐらいは拾ってやる」


「ねえちょっと! 安心できる要素がないんだけど! それって要するに足場がなかったら私に死んでねって言ってるんだよね! 後、骨を拾うって何? 死んだら骨すら残らずお金を失って始まりの町に戻されるんだけど! この話って普通飛ぶ前に言う話じゃないの!」


「ああ、だって飛ぶ前に言ってもなんやかんやあって結局今とあんま変わらない状況で行くことになるだろうし」


 たぶん解決策として船を待つことになるんだろうな。それなら俺は先に行くしそういえばルカは、やっぱ行くって言って今と同じ状況になっていた。


 結局そのまま行くならこの方が速い。


 ボスエリアはクラーケンが居た所のさらに少し先。二人分を持ち上げているので少しMPの減りが早いな。一応余った、マジックリングを付けているが、【光属性魔法】と【闇属性魔法】の効果が上がる宝石を俺は知らないので、取りあえずダイヤモンドをはめている。


 まあ今回重要なのは、MP回復速度上昇だ。どうにか効果を大にまで持って行きたいが現状は俺自身のレベルを上げる以外の方法が思いつかない。


 にしても効果が想像以上に高いな。大体1.5倍くらいの速度で回復するな。


 この指輪があればクラーケン戦も楽だっただろうな。まあクラーケンのインクがなければ作れなかったんだけど。

 そういえば効果って重複したときどうなるんだろう? 効果が上がるのかな? その辺は後で調べれば良いか。


 そろそろ着くな。足場があることを祈ろう。

 その方が俺も戦いやすいし。







「ホントに空を飛ぶんだな。でも飛ぶって言うより泳ぐの方が近いな」


「足場があって良かった。海に落ちたらツラヌキ魚に蜂の巣にされるとこだった」


 足場があったのでMPを温存できる。なるべくMPは【ヒール】に回したいしな。


「【クイックチェンジ】タイプ刀」


 取りあえずまずは刀から行ってみる。


「【壱ノ太刀・刹那】」


 取りあえずアーツを放ってみたがあんまり減らないな。なら……


「【クイックチェンジ】タイプメイス【スキルチェンジ】【インパクトシュート】」


 メイスのアーツをたたき込む、これは効いたな。打撃は効くのか。後は槍と魔法だな。


「リュー兄、ナツメちゃんとラルミィちゃんは?」


「今回は出さない。初見だしな。エルダーウルフの時は既に出してたから成り行きで出してただけだし」


「えーナツメちゃん達のこと当てにしてたのに。【ウインドブースト】【ウインドアーマー】【スラッシュ】」


 ルカのスラッシュがフライビルフィッシュに向かって放たれる。うん、やっぱり斬撃はあまり効かないな。【ウインドブースト】は、確かAGIを【ウインドアーマー】は、MNDとVITを上げる魔法だったっけ。


 槍の攻撃もあまり効かないし今回はメイスで行くか。


 フライビルフィッシュの攻撃だが突進が多い。恐らく船に乗ってくるのが前提だったから本来はもっとせまい船上で避けずらかったんだろうけどあいにくと俺は飛べるしルカも【風属性魔法】でステータスをブーストして足場の岩を跳び回って居るので当たらない。これなら飛ぶのにMPを使っても問題なさそうだ。【空歩】なども使ってMPを節約すれは回復速度の方が上回るだろう。


 とは言えフライビルフィッシュの動きも中々速い。【壱ノ太刀・刹那】に迫る速さだ。本来はタンク役などが足止めする必要があるのだろう。


 ……まあでもこの程度なら問題ない。


 この程度の速さなら避けて攻撃を加えることくらい出来る。



「……相変わらずぶっ飛んだPSプレイヤースキルしてるなー」


 一体どうやったら避けながら攻撃など出来るのか。

 普通フライビルフィッシュに攻撃するタイミングは旋回中の速度が下がった時なのだが。


 現在、リュー兄のメイスが与えているダメージが多いためこちらにタゲは来ていない。

 万が一こちらに来た場合も避けること自体は出来るだろうが、それだけで攻撃を加えることなど出来ないだろう。


 本来フライビルフィッシュ討伐には、タンク役が必須だ。

 フライビルフィッシュは速さはエルダ―ウルフを超えるが、攻撃はそれほど強い物ではない。タンク役が攻撃を受けフライビルフィッシュが止まった所に総攻撃を加えるのがセオリーだ。


 だがリュー兄はそのセオリーをこなす手札を持ちながら、軽がるとセオリーとは違う方法で物事を行い、成功させる。

 とは言え、ここまでやる必要はあるのだろうか? ナツメちゃん達を出さない理由は本当にそれだけか? その時リューヤの顔が見えた。


 それはそれは楽しそうな笑顔だった。


 ……その時私は思った。





 ……もしかして、私の兄は戦闘狂だったのかもしれない、と

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