第4話

少女は泣き崩れてミナの足に縋り付いた。


「どうすればいいのでしょうか?」


と、ミナが困り果てていると、サバがフォローをしてくれる。


「どうされたんですか?」


「兵士におわ……」


少女が話始めると、兵士が2人ほどこちらに走ってきた。


「すみません、勇者様。その女を迎えに来ました。」


少女はビクビクしている。そして、兵士は少女の腕を掴むと、少女は引きずられながら必死に抵抗していた。


この子、もしかして奴隷? 兵士とちょっと話してみるか。


「おい、ちょっと待て」


「はい。ピノ様何でしょうか?」


「そいつ、貰っていいか?」


「すみません、いくら勇者様でもそれはなりません」


「なぜだ?」


「プリスティン公爵様のものだからです」


貴族か……なるべく関わりたくは無かったが、この際はしょうがない。最悪戦闘になっても少女を助けるためだ。それに獣人族を手に入れたい。


「サバよろしく」


サバは少女を掴んでいる兵士の右手首を掴む。


「少し痛いですけど、我慢してくださいね」


その瞬間、サバが右腕を背中に持って行き、関節を外した。


「がぁぁぁぁ!」


すると、もう一人の兵士は剣を抜いた。


勝てるわけが無い相手に向かって剣を抜くとは、その勇気凄いな。尊敬する…


「サバ様、これ以上の横暴は許しません」


兵士はサバの頭上、もとい俺に向かって斬りかかってきた。思いっきり振ったであろう剣は、サバの人差し指だけで、防がれていた。


「なっ…!!?」


サバは兵士の股間を蹴り、気絶させた。玉の保証は出来ないが…可愛そう…


「はい、おしまい!」


「流石です!サバ様!」


と、ミナが賞賛した。サバは、転んでいる少女に手を差し伸べた。


「擦り傷、大丈夫ですか?とりあえず、私たちの家に来てください。消毒しますので。あと、君に是非仲間になって貰いたいのだけれど…」


「はい!喜んで!」


『ケモ耳少女が仲間になった』と言う音声が何処からともなく流れてくるような感じがした。


俺らは祭りが惜しいけれど、路地を抜けて、家に向かった。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


と、いつものように出迎えてくれるメイド達。見慣れない光景のせいか、少女は挙動不審になっていた。すると、メイド長のローリンが食堂にある椅子に少女を座らせ、傷の手当てをした。


「そういえば、君の名前はなんて言うんだ?」


と、サバが少女に聞いた。


「私はアメ、年は14歳」


「分かった。俺…いや、私はサバ、私の頭の上に乗っかっているスライムはピノ、椅子に座っている奴がドラゴンのミナだ。詳細を伝えると、私とピノは勇者だ。そして、ピノは人間になれる」


「分かりました!不束者ですがよろしくお願いします」


ローリンはアメにこれから過ごす部屋を案内して、再びアメと共に食堂に戻ってきた。


「サバさんとピノさんの部屋と、ミナさんの部屋の真ん中の部屋でした」


「よかったですね!!!」


ミナはなんか怒り気味だ。何でかは…察しが付くが…俺は、あえて触れないでおく。


「明日は王様のところへ行く。ちょっと用事があってな」


と、俺は言った。


その後、自分達の部屋に戻り寝る準備をする。


「ピノ、王様のところへ行って何する気なんですか?」


「パソコンを作ってみようかな、と思ってな」


「パソコンですか? 作れるんですか?」


「あぁ、俺は、向こうの世界で小学生の頃からパソコンを自作しててな。プログラミングもお手のものだ」


「パソコンを作れても、インターネットはどうするんだ?」


「実はな、俺らが召喚される前な俺のズボンのポケットにポケットWi-Fiを入れていたんだ。そして、この世界に転生されて俺はスライムになった。俺の研究結果、スライムの特性で収納魔法が使えるんだ。その偶然と奇跡が重なり今はこの通りだ」


俺は収納魔法を使い、ポケットWi-Fiを取り出した。


「いや、ポケットWi-Fi持っててもWi-Fi使えないんじゃ無いですか?」


俺はスライムから人間になる。


「残念ながら、使えるんだ。それは、パソコンを作ってからのお楽しみだ」


そして、布団に入り、翌日。


俺とサバとミナとアメは食堂に集まり、朝ご飯を食べている。


「今日は、ピノと俺でお城に行ってくるから、2人はちょっと待ってて!」


「了解です!」


2人は同時に返事をした。


俺はスライムに戻り、お城に行くと警備兵が二人立っていたが、俺らが勇者であることから簡単に通してくれた。すると、王様の執事が許可を取ってくれた。


「王様、勇者様方が来ました」


「通せ」


俺らが中に入ると、王様は王子らしき人とチェスをしていた。


「今日はどうしたのだ?」


王様が考えながら、俺らに話かけてきた。


「今日は、鉄鉱石が取れる鉱山と、鉄鉱石を加工できる工場を一軒貰いに来ました」


「そんなことか、持って行け」


「ありがとうございます」


易々と許可を貰ってしまった。


もっと、突き詰められるのを覚悟をしていたが…まぁ、ありがたいな…


すると、王様の執事が許可証を作り、王印を押して鉱山と工場に届けてくれた。


その後、家に戻ると兵士が押し寄せていた。メイド達やアメが兵士達によって拘束されていた。ミナは外出中だったらしい。


「勇者か! よくも私の奴隷をノコノコと連れ去ってくれたな!」


「お前か! 私の仲間をノコノコと連れ去ろうとしているのは!」


俺が貴族が放った言葉を真似て言った。


「スライムの分際で!なめやがって!」


貴族は手で『殺れ』と合図が兵士達に送られて、一斉に斬りかかって来た。


「大地よ!我に力を与え世界を滅び尽くせ!ファイヤーボール!」


と、やはりサバは詠唱のセリフが厨二臭いセリフを吐く。すると、頭上に巨大な火の塊が兵士と貴族に向かって、その場で大爆発を起こした。庭が広かったせいか、家は無傷だった。


俺はスライムから人間になり、紐を解いていく。


「こいつら、どうするんだ?」


「王様に引き渡す?」


と、サバが答えたら、メイド長のローリンが来た。


「ありがとうございました。こいつらは私から王様に引き渡しますね」


「大丈夫なんですか?」


サバが心配そうな顔をしていると、ローリンがサバの肩に手を乗せた。


「私は以前、王様のメイド長をやっていたので、王様の信頼が厚いのです。自分で言うのも恥ずかしいのですが…」


言葉と裏腹に顔は紅潮してはいなかった。


「では、よろしくお願いします」


サバが言うと、ローリンが笑顔を返してくれた。俺らはアメと一緒に食堂に向かった。アメは俯いたまま黙り込んでいたので、俺がすかさず話しかけた。


「さっきのは気にするな。俺らは仲間だから仲間に助けられるのは当然だ」


「いえ……ありがとうございます!」


アメは何か言葉を詰めらせたが、すぐに言い換えた。俺はそれに気がついたが、気にしないようにした。

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俺と部下が異世界に召喚されて世界を変る 〜 英雄章 〜 きぷれす @kipures

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