第3話
「急いでお城に来てください!王様に呼ばれています!」
レベッカがいきなり食堂に入り込んで来た。
「なんで?」
柴田は変な用事だったら行く気もないのか、マイペースな回答をした。
「昨日のドラゴンの事件の鎮静化を国民の前で表彰したいとの仰せです!こんなのは一生に一度も無いですよ?」
だが、俺らは誰も動かなかった。さらにテーブルに突っ伏した。
「俺らは、そう言うのは嫌いなので行かないです。あと、面倒くさいので」
柴田が拒否をしたが、レベッカが柴田とミナの右腕を掴み、引きずって行った。
「ダメです!行きますよ!」
引きずられながら外に出ると、馬車が待っていた。馬は白馬だった。柴田は行くのが嫌だったのか、最終手段に出た。首を傾げて右手を口に当てて泣きそうな顔でレベッカを見上げた。
「早く乗ってください!いくら勇者様と言えど、そんな可愛い顔してこっちを見つめてもダメなものはダメなんですからね!」
すると、柴田が「チッ…」と舌打ちを鳴らし嫌々馬車に乗った。
しばらくすると、商店街が見えてきた。馬車が商店街を通ると、商店街の住民が手を振ってくれたり、歓声を上げてくれた。その人混みの中を馬車が掻き分けてお城に行くと、王様が外で待っててくれた。
すると、レベッカが急いで馬車から降りて膝をついた。
「王様!何故ここにいらっしゃるのですか!」
「この王都を救ってくれたのは勇者達だ。余も救ったのも同然だ。だから、余も救ってくれた者に足を運ばせるだけではいかんだろう」
「それは……おっしゃる通りですが……」
不満そうな顔をするレベッカだったが、俺らが馬車を降りると、街の人たちがまた歓声を上げた。
すると、王様が俺らに話しかけてきた。
「勇者達よ!余と民を救ってくれて感謝する。勇者達には救ってくれた感謝として、国宝である好きなアイテムを1つ受け取ってくれ」
すると、王様の執事がアイテムを3つほど俺らに見せてくれた。右からペンダント、真ん中が杖、左が白い石だった…
「なっ…このアイテム全て、ゲームの時運営が期間限定で配信していたチートアイテムじゃないか!」
柴田が言うには、ペンダントは1度だけ自分の容姿を再設定するもの。杖は使用者と周りにいる人のレベルを杖の使用者と同じになる。白い石は、持っているだけで1日3度だけ敵から受けた攻撃を無効にしてくれるものらしい。
柴田が選んだのは、容姿を再設定できるペンダントだった。
後で理由を聞いたが、このペンダントを使うと、俺が自由に人間になれるとの事だった。
ありがとよ! 柴田! 俺はいい部下を持てて良かったよ! でも、移動するときや、戦闘するときはスライムのままにするけどな! キリッ
「これでいいのか?」
「はい、これでいいのです」
と、柴田が言った。その後、表彰なんかや、宴会なんかに誘われて、俺らは拒否したが、レベッカに無理矢理連れて行かれた。
家に帰ると、早速柴田がそのペンダントを俺に掛けた。すると、ペンダントの中に入っていた赤色の宝石が割れた。
「これで、自由に人間になれますよ!やってみてください!社長!」
俺は人間になると、いつもは不完全な感じがしていたが、今はそんな感じはしなくなっていた。
「いつもより、調子いいかも」
「じゃあ、成功ですね!」
すると、ミナが話しかけてきた。
「あの、お二人は社長とか柴田とか呼んでいますが、あれは何なんですか?」
との質問だった。
「え、えーと、お、俺らは…いせ……じゃなく、互いの愛称として呼んでるんだよなっ?柴田!」
「あ、あぁ!そ、そうだとも! 決して深い意味は無いのだよ!」
「そうなんですね!」
俺らは焦ってしまい、片言になってしまったが、上手く誤魔化すことができたようだ。だが、これ以降気をつけるように心がけねばならないな。
日は登り、翌朝、俺らは社長や柴田ではなく、ピノ、サバと呼ぶようになっていた。そして、俺はスライムに戻っては無かった。
「ピノ!今日は何する?」
「サバ!商店街に行こうか。ミナも付いてきて」
「はぁい!ピノ様のお願いならば喜んでぇ!」
と、あからさまに名前を強調して言っている。しかも棒読みにもなっているので、かなり不自然だ。なのに、ミナはそんなの気にせずに俺にデレデレだ。
お出かけするので、俺はスライムになりサバの頭に乗った。商店街に行くと何やら騒がしかった。
商人の人に聞いてみると、どうやら祭りが行われているらしい。この祭りは毎年2回行われていて、収穫祭と言う祭りらしい。夏の祭りと、冬の祭りがあるから驚きだ。
「お祭りかぁ…懐かしいな…そういえばチョコバナナが食べたくなってきたな」
「ピノ様!これですよね!これはピノ様とサバ様の分です!」
ミナが二つチョコバナナを持っていたのを俺らに渡した。いつの間に買ったのやら。
でも、俺は人にならないと食べれないので、裏路地に行って食べた。何故なら、人目があるところで人の姿になると、面倒くさいからだ。
すると、ミナが突然疑問を投げつけてきた。
「ピノ様?ピノ様の喋り方って年齢相応じゃないですよね」
「そうか?」
それはそうだろう。自分でも分かっていたが、年齢相応って言うのがイマイチ分からん。
「そうですよ! 練習しましょう!まず、私に向かって、おねえたん!大好き!って言ってみてください!じゅる……」
「おねえ…たん…だい…すき…」
「もっとはっきりと!」
「おねえたん!だいす……って言える訳無いだろうが!変態ロリコンドラゴン!」
ノリツッコミをした俺だったが、ミナは急に態度を変えやがった。
「チッ…」
「いやいや、舌打ちするな!」
とのやりとりを俺とミナで繰り広げていると、犬の毛の耳少女が俺たちのところに走ってきた。
「あ、あの!助けてもらえませんか?」
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