第1話
俺らは教会を出ると、辺り一面石畳の街で、イギリスと似たような街並みだった。そして、人が沢山歩いている。
「この街、人がやけに多いな」
俺は柴田の頭の上でピョンピョン飛び跳ねながら言った。
「はい、ここは王都ですので、それなりに人は居ますよ」
辺りを見渡すと、奴隷と見受けられる子供が奴隷商人によって鞭で叩かれていた。
「奴隷か…」
「はい、奴隷です。具体的には、お金がない所の子供が売りに出されて奴隷になるケースがあります。その中でも獣人族の子供の方が多いですね」
そう言えば、そうだな、よく見なかったから分からなかったが、改めて見ると耳が頭から生えてるな。
こんな話をしていると、目の前に大きな城が現れた。
「お城に着きましたよ。私はここまでですので、あのお方に続いて、勇者様達は中へ入ってください。」
城門前に来ると、メイトがそう言って一歩後退した。すると、ガタイの良い男性が挨拶をしてきた。
「初めまして、勇者様。ピノ様とサバ様で御座いますね。私はエンスと申します。噂は聞いていますので。それでは、城内へどうぞ」
すると、門が開くと真ん中にレッドカーペットが敷かれていて、周りには楽器を持っている人が立っている。俺らが歩き始めると演奏が始まった。どうやら歓迎してくれているようだ。
柴田はレッドカーペットの真ん中を歩いて王様の元に行った。そして、エンスさんが膝をついて王様に言う。
「勇者様達がいらっしゃいました」
「一人では無いのか?見た感じ一人の様だが… もしかして、そのスライムか?」
「はい、左様で御座います。紹介します。こちらの方はサバ様です。そして、サバ様の頭に乗っていらっしゃるのがスライムのピノ様です」
「ほう、なるほどな。歓迎するぞ勇者達よ。余は歴代の勇者が一人だったから、勇者は一人だとは決めつけん。歴史は覆るものだからな。実はお主達を召喚をしたのは理由がある。簡潔に言うと、魔王を倒すためだ。だが、魔王はもういない」
周りにいた貴族達が騒ぎ始める。
「余もつい先程知ったばかりなのだ。原因は分からないが、魔王は消滅したらしい。だから、勇者達よ! せっかく召喚されたんだ。 この世界で有意義に過ごしてくれ」
「「はい」」
「それと、余はそなた達の為に余の別荘を譲渡する。そこで、暮らすが良い」
「「ありがとうございます」」
俺と柴田は一応返事をした。その後、俺らは王様の別荘である所に行った。
何と言うか、凄かった。2人では住み足りないぐらいの広さだった。何と言っても周りは、木々が生い茂り幻想的な雰囲気を醸し出し、八の字型の広いプールがあった。
「なぁ、俺らはこんなん貰っても良かったのだろうか」
「社長!王様がくれたのだから、俺らはそれを貰うだけですよ!」
柴田はポジティブに行きましょう!ポジティブに!とか言ってやがるが、少しは躊躇うべきだったとこの時になって後悔した。
家の中に入って見ると、メイドが6、7人で迎えてくれた。その中には、お城に案内してくれたメイドさんがいた。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
お城まで案内してくれたメイドさんが一歩踏み出した。
「今日からメイド長を務めさせて頂きます。ローリンと申します。何かありましたらお気軽に呼んでくださいませ。御夕飯が出来ていますので、どうぞ、食堂にいらして下さい」
俺らはローリンに連れられて食堂に行くと、そこには100畳近い広さの中に高級な長いテーブルと椅子がぽつんと置いてあった。
俺らが椅子に座ると、料理が出てきた。
「お先に、滑らかなクリームとかぼちゃのコーンポタージュで御座います。そしてこちらがトマトの温野菜サラダ。最後に、鹿肉のステーキでございます」
高級感がある料理が出てきた。俺ら2人とも唾をゴクリと飲み食べ始めた。
柴田は右手にナイフを持ち、左手にフォークを持って、もぐもぐと食べているが、一方俺は手や口が無いので食べようもなかった。
「柴田…俺食べたいのに食べられないのだが……どうしたらいい?」
「確かスライムは人間にもなれますよ?確か、やり方は人間の型を想像すれば良いだけだった様な気がします」
「ナイス!では、やってみる」
俺はすぐさま、目を閉じて人間の形を想像した。
う〜んと、髪の毛は青色で、目はくりくりした青く澄んだ目。身長は適当に小さくしておこう。
俺は目を開けると、目線が高くなっていた。そして、自分の身体を見ると裸だった。しかも、女の子。俺の顔は赤らんでいった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その声は、高らかに響いた。そして、女の子の声になっていた。
メイドはすぐに、俺に合う服を持ってきてくれた。
「社長!!俺より幼女じゃないですか!年齢は6歳と言ったところですね!とてもかわいいですよ!」
「柴田…お前後で帰ったら減給な」
「えぇ!? 何でですか! そりゃ無いですよ…」
俺は手が生えたのでナイフとフォークを持って鹿肉をナイフで切ってフォークで刺した。鹿肉を口の中に入れると、舌でお肉が溶けていった。そして、他の料理も頂くと、それはそれは絶品だった。
俺らが食べ終わると、俺らのお世話するメイドが俺たちの口元をナプキンで丁寧に拭いてくれた。すると、メイド長のローリンが来た。
「これから、ご主人様達の寝室、浴室、図書室などを案内しますね」
俺らを連れて食堂を出る。浴室は1階の食堂の隣の部屋だった。中を見てみると、温泉見たいな広さで、上や側面がガラス張りになっていて、晴れた日には星が見えるのだそうだ。
続いて、図書室は、2階に上がり右に曲がった先にあった。これも、高校の図書室の広さを想像して頂ければ分かるだろう。
最後に、寝室だ。これは、図書室と同じ2階にあり、30畳ぐらいの広さだ。ポツンと、ベッドがあるだけの部屋だった。
部屋の案内が終わると、辺りは暗くなっていたので、俺らは浴室に入ってお風呂に入った。
「柴田、この体ってスライムに戻るよな?」
「はい、制限時間があると思いますよ?夕飯から2時間経っているから2時間は大丈夫だと思うのですが、その後どうなるのか、様子見た方が良さそうですね」
柴田の目がキランと光るとお風呂に入っている俺を襲ってきた。俺はそれを跳ね除けようとするが、力が違う。そう、レベル差だ。
「社長!なんでこんなに小さくなってしまったんで・す・か? こんな可愛い子をみると、狩猟本能がくすぐら・れ・る!」
俺は柴田にモフられた。
「おい!柴田!やめろ!ちょっ……」
こんな事をやったら元いた世界では逮捕だ。それと、全国ニュースで報道されているだろう。
その後、俺らは寝室に行き、柴田はピンク色のパジャマと、俺は黄緑色のパジャマを着て寝た。メイド曰く、それしか無かったのだそうだ。
翌朝目覚めると、スライムに戻っていた。すると、俺らの寝室にノックが聞こえる。
「失礼します。ローリンです。サバ様、ピノ様にお客様がいらしています」
「分かりました!今、行きます!」
と言って、柴田は急いで着替えた。柴田が着替え終わると、俺が柴田の頭の上に乗って柴田と共に、玄関付近に行った。そこには、剣を持った女性の人が立っていた。
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