第二章:冷たく燃ゆる熱き男

12話:語り継がれる物語

―――――――  2  ―――――――



冠省かんしょう――



 知っているだろか。

 ――国士無双制覇グラン・ランブル

 それが、かを。

 それが、如何いかなるかを。


 知るわけがない。

 知っていようはずもない。

 その筈。

 何せ、この世界ではしか知らないのだから。


 いや、当然、知らなくてもいい。

 生きて行く上で、毛頭もうとう必要のない事。

 我々われわれの、君達きみたちの、お前らの生活に、いとなみに、人生に、露程つゆほどの影響もあるまい。

 あってはならない。

 そう云う

 ごくわずか、ごくごく僅かの、一部の、ほんの一握ひとにぎりの英雄・勇者にのみ知られ伝わる事実、事象、事件――いや、栄光はえある出来事、祭りか、伝承か、あるいは、地獄か、監獄か。


 知る必要はない。

 まったく、だ。

 必要こそはないが、無論、知っておいてもいい。


 ――そう。

 好奇心こうきしん――

 知的欲求とは、比較的知能の高い生物に限られた根源的欲求。

 むしろ、を求める事が知性のあかし、そうっても過言ではなかろう。

 違うか?

 知性とは、わば、欲求なのだ。

 欲求とは探求。

 探し、探し、探し求め、追い、追い、追い求め、その先に、その先にこそにある。

 違いない。

 に来たのも、そう、それはまさしく好奇心であったに違いない。


 愚鈍ぐどんなるものは立ち去るがいい。

 蒙昧もうまいなる者は目をふさげ、耳を塞げ。

 でいい。

 いっそ、がいい。

 こそが、清々すがすがしい。

 さようなら、名も無きおろか者ども

 また、で――



 ――ん?


 立ち止まるか、そこの。

 、知恵ある者よ。

 ぞ、知性あるよ。

 達観たっかんなる智恵者ちえものよ。

 かな、賢者よ。


 何をかくそう、も求めていたのだよ、君を、君らを、君達を。

 欲求――

 そう、欲求はなにも君達だけのだけではない。

 もまた、同じなのだよ。

 君も、も大差ない、同じ。

 大差はないのだが――

 ――違う。

 違いは、ただ一つ、決定的。


 は能動的に自らの意思で君らを求め探し出す事は出来できぬのだ、決して。

 残念、だ。

 実に、残念、だ。

 には、そのがないのだ。

 そのすべが。

 実に、なげかわしい。

 あわれ。

 という存在は、くも小さき存在なのだ。


 しかし、しかし、だ。

 君には、君らには、君達には、がある。

 求め彷徨さまよい、探し出す事が、いや、のだ。

 君らには、そのがある、意思がある。

 そのこそ、意思こそ、が追い求める

 君らこそ、あるなのだ。


 傑作けっさく、だ。

 国士無双制覇グラン・ランブル唯一ゆいいつ知るに、そのは無い。

 併し、君らにはそのがある。

 ある、それが英雄、それが英傑、それが英霊、それが勇者、そして、それこそが君ら。

 君達にこそ、国士無双制覇グラン・ランブルを知る権利がある。

 いや、知らなければならない。

 そうだろう?

 か弱く無きに代わり、語りいでもらいたい。国士無双制覇グラン・ランブル伝承はなしを、英雄達のうたを、英傑達のおもいを、英霊達の生きざまを。


 興味があれば、申し訳ないが、君の人生ときいくばくかに分けてはくれまいか?

 勿論、今ではない、、でもいい。

 いつでも、どこでも、にいるのだから。


 国士無双制覇グラン・ランブルを知るには、少し、長くなるかもしれない。

 もしかしたら、君の人生ときの幾ばくかを無駄にしてしまうかもしれない。

 本当にすまないと思う。

 でも、これだけは間違いない。

 君のは、本物、だ。

 これだけは、確か、明らか。

 君の好奇心は、正に知的ちてき素直すなお素敵すてき、そして、そのはもう、無敵むてき、だ。


 さあ、始めようか。

 国士無双制覇グラン・ランブル物語ものがたりを。

 せつなくいとしき英雄の伝説ものがたり、そして、血生臭ちなまぐさい英霊の抒情詩ものがたり。


 その前に、もう一度だけ。

 ――

 ――を探し出してくれて。

 見つけ出してくれた君に、からの感謝を!


 、そして。


 君を“”と呼べる、そのときまで、きざもう国士無双制覇グラン・ランブル


 さあ、知るがいい、国士無双制覇グラン・ランブルを!!!


 はじめようショーダウン国士無双制覇グラン・ランブル



――不一ふいつ

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