10話:遺跡の王、死す
―――――
<アンジュ!>
――だれ?
い、一体、コレは――
――ば、馬鹿な……
槍先を止め、目を
「アンジュ!アンジュなのね!?」
「か……母さん??」
――どういう事なの?
目の前にいるのは、
ファラオは?
ファラオはどこに消えたの?
これはどういう事?何が起こっているの?
腹と胸を
「見守ってきた――ずっと、
「――え?」
――不思議。
母さんと別れたのは、私が幼児の時。
記憶なんて残ってる
なのに、なのに、
その表情、その声、その
潜在意識にすり込まれた母さんの記憶が
寺院で
「覚えてないかも知れない、分からないかも知れない、でもね、アンジュ。わたしは貴女の事、忘れた事なんて一度もない」
「――…」
おかしい――
何もかも、おかしい。
おかしい事は分かっている、認識しているし、意識もしている。でも、理性が反論しても、感覚が、感性がそれを否定する、全力で。
幻術、幻影、
なのに、実感。
有り
何故なら、今目の前にいる彼女は、余りにも、あまりにも私の知っている母さんそのものだから。
「強くなったのね、アンジュ。誇らしい我が子、アンジュ…」
「……母さん」
両手を拡げ、目に涙する母ジョシュカ。
なぜだろう、私も
「強くなった貴女には分かっている
「母さん、それはなに?」
「
「――うん」
母さんの“想い”だ。
強く
手紙にいつもあった。
忘れよう筈がない。
「もう勝敗は決したわ。彼を、
「恨んでなんていない。戦う
「いい子ね、アンジュ。本当に、いい子に育ってくれたわ、アンジュ」
「ありがとう、母さん」
「さあ、アンジュ。
唐突に――
――違和感。
「え!?――故郷に?」
「そうよ、アンジュ。貴女は十分強くなりました。もう恐れるものは何もない筈です」
「――でも、今の私では部族を救えない…
「さっきも云ったでしょ、恨んではいけない。仮に敵であったとしても、誰一人、恨んではいけない」
――違う…
「――…誰一人……」
「そう、誰一人として、恨んではいけない」
「……母さん、も?」
「……」
私が母さんと離ればなれになった原因は、月の民との
父さんを恨むな、と母さんはいうが、
大神エイラーンの徳に生きた戦士であった母さんは、そんな生ぬるい事を云う筈がない。
母さんは、私の、私の
そう
敵を、状況を、今を恨むな、恐らく彼女は、そう語るだろう。でも、その分、自分を恨め、と彼女は云う、そうに決まっている。
母さんは、本当に強い
目の前にいるこれは、母さんでは、ない!
母さんの優しさとは、こんな弱さではない、こんな脆さではない、決して。
母さんは、強く、そして、優しいんだ!
――ドシュッ!
母さんの
目を見開き、驚愕の表情を浮かべる母さん、いや、ファラオ。
眉間から
「――な……なぜ――…か、
「凄い術だった。とても、私一人では破る事はできなかった」
「な、なんだと……では、な、ぜ…?」
「お前が…
「そ、そんな…馬鹿な……我が術を、我が術で破る――だと…」
「さようなら、
「や……や、やめろーーーッッッ!!!」
鮮血が舞い、
タイ・カの王、死す。
終わった――
――英傑達の戦いはまだ、始まったばかり。
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