第6話

それからは、時が過ぎるのがめちゃくちゃ早いように感じた。カフェの方は相変わらずお昼時は目まぐるしい忙しさだ。だけど、ストーカーの確保に関しては、あまり進展していない。2人の容疑者がいなくなったことで、一気に調べて情報を得るのが難しくなった。

作戦会議から6日目の昼、カフェは休業日の為、皆リビングで思い思い調べていた。夏海さんは西岡さんとお出かけだと言って、朝から出て行った。


「あぁー!全然進まねー!」


もともと、デスクワークのようなじっとしている仕事が苦手な風也。それに加え、情報が全然集まらない事に痺れを切らしたらしい。


「落ち着いてください、風也さん。お茶でも一杯いかがです?」

「悪ぃな…取り乱しちまった。」

「しょうがないよ。今までにないくらい進まないもん。春馬も疲れてんでしょ?一旦休憩しよ。」


皆この悪い状況に飲まれ、疲れた顔をしている。そんな時、いきなり悠が大声で叫んだ。


「あーーーーーーーっ!」

「うるさいよ、悠。何があったの?」


悠は使っていたタブレットを見せながら、僕たちに説明してくれた。


「ボクは香水の線から調べていたのです。この香水は有名なブランドのもので、多少お高いのですけど、自分で好きな香りを作れるということで人気のある代物なのです。」

「その香水が、どうかしたの?」

「襲った男は、西岡さんと同じ香水を使っているのです。夏海さんが嗅いだ匂いから分析するに、香水に使われた花は、アイビー、黒薔薇、スグリなどだったのです。ですけど、その花言葉が…。」


悠がタブレットをスクロールする。アイビーの花言葉は“死んでも離れない”、黒薔薇の花言葉は“貴方はあくまで私のもの”、スグリの花言葉は“貴方に嫌われたら私は死にます”と、どれもこれも狂愛じみていた。


「うわ、怖〜い。」

「でも、ストーカーをする人って大抵そんな感じですよね。」

「これだけか?犯人を特定するのは難しいままだぞ。」

「ちゃんと話しを聞くのです!夏海さんが襲われた現場が、監視カメラに映っていたのです。襲った男を逃げるのを監視カメラを追って追跡していくと、途中で立ち止まって何かの瓶を見る仕草をしていたのです。その瓶はあのブランドの香水だったのです。その仕草をよく見てみたら、香水の瓶に“N.K”と刻まれていたのです!頭のいい春馬ならわかるのです。」


N.Kと聞いて、思い当たる人物は一人しかいなかった。


「N.K…西岡…健二郎…」


僕が呟いた言葉に、皆ハッとした。


「おい…今夏海さんって西岡と一緒じゃなかったか?」

「どこに行くって言ってた?急がないと夏海さんが危ないよ!」

「確か、川崎の方へ行くと言っていました!あまり人気がないけど、隠れた名店があるって。人はいないけど、西岡さんがいるから大丈夫だって…。」

「今から行って間に合うかどうか…いや、暗いことを言うのはやめるのです。」

「行こう、夏海さんを助けに!」

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