第3話

全員戻ってきてお昼御飯を食べカフェをオープンしたのは、それから3時間後の事だった。調べて得た情報はまた夜中の作戦会議で聞くとして、今はみんなカフェの仕事に集中して取り組んでいる。


「カルボナーラ仕上がったぞ~!」

「ベイクドチーズケーキが焼き上がったのです!」

「お待たせいたしました、こちらトマトの冷静スープパスタになります!」

「子供用スプーンはこちらになります!熱いからふーふーして食べるんだよ?」

「ありがとうございました、またのご来店お待ちしております!」


風也と悠が料理やスイーツを作り、僕と稜樹で運び、玲音が会計をする。忙しいお昼時はいつもこの流れ。ゆったりくつろげるように、座席数を少なくしているから、作るのも運ぶのも会計するのも、あまり切羽詰まらなくて済む。ただ、その分多くのお客さんがやって来るから、忙しいことにかわりはない。

 ようやくお昼時のお客さんを捌き終えたと思ったら、もう2時間も経っていた。今度はスイーツを目当てにくるお客さんでいっぱい。特に、この時間帯は学校を終えた学生が多くやって来る、まさに風也の苦手な時間。僕たちはシャツの胸元に、お客さんと気軽にお話しできるように、自分の名前を示すカードをつけている。


「ねえねえ!あの人···ハルマさん?かっこよくない!?」

「それより、リョウキさんの方がカッコいいから!」

「いやいや、ここはレオくんでしょ!」

「さっきちらっと見えたんだけどさ、奥の厨房にいるフウヤさん、めっちゃイケメンだよ!」

「それな!隣にいたユウくんも負けないくらいかっこよかった!」


なんて言う会話もちらほら聞こえてくる。それを聞くたび、僕と稜樹は心の中でガッツポーズしているが、どうやら風也が女子が苦手な理由がこれらしい。女子は色んな人にカッコいいやらイケメンやら言うから、何が本当なのかわからなくて怖いそうで。だから、この時間帯は厨房に籠りっぱなし。スイーツが出来たという呼び掛けも悠に任せている。店長としては、ここにくるお客さんの7割は女性だから、何とか慣れて欲しいんだけど···。そう思っていると、いきなりお客さんがざわつき出した。お客さんの目線を辿ると、珍しく風也が厨房の外に出てきていた。


「珍しいね、どうしたの?」

「···実はさ、あいつらから着信があったんだ。」


風也は武道の達人なだけあって、ケンカも強い。それに、兄貴肌な事もあって不良系の男たちに慕われやすい。彼らが厄介事を起こさないように月1で彼らに会いに行き、面倒を見ている。たまにそこから情報をもらってきたりする事もある。でも、そういう時は休みの日に行くはずなんだけど···。


「厨房悠に任せっぱなしで大丈夫?」

「さっき稜樹に臨時で入ってもらえるように頼んだから大丈夫。それよか、何やら緊急事態らしいんだ。」

「緊急事態?」

「あぁ。何回もかけてたみたいで、着信履歴がえげつねえ数だった。」


それってヤバイんじゃ···。


「とにかく早く行ってあげて!」

「おう!」


鞄を肩に担いで孟ダッシュで走ってった。稜樹が代理で入ったって言ってたけど、大丈夫かな…?

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