第2話

次の日の朝、被害者である日向夏海さんがやって来た。リーダーである僕が話を聞く。


「日向夏海さんでいらっしゃいますね?」

「はい…。」

「ではまず、事件の経緯を教えてください。」

「最初は、ただ後をついて来るだけでした。けれど、それが1週間続くと、出したゴミが漁られたり、隠し撮りした写真が大量に送られて来たり…とにかく怖いんです。」

「なるほど。それに関して、何か心当たりは?」


この質問に、夏海さんは2枚の写真を取り出した。


「心当たりがあるのは、次の2人です。まず、右の写真の男性は笹野文幸さん。元カレで彼の浮気が原因で別れたのですが、その後1カ月間毎日ずっと連絡してきました。左の写真の女性は新庄舞さん。元カレの今の彼女で、1カ月間私に連絡を入れていたことを知って、私に敵意を抱いてるようなんです。」

「笹野さんはいいとして、新庄さんとは会ったことはありますか?」

「一回だけ、偶然会った元カレから紹介されたことがあります。その時も、睨まれていた気がして…。」


その後、カバンの中に「これ以上文幸に近づかないで」と書かれた紙が入れられていたという。


「最近は連絡が来なくなったんで、大丈夫かなと思ったんですが…。」

「わかりました。では、ストーカーについて、背格好はわかりますか?」


すると、夏海さんは更にもう1枚写真を取り出した。


「男友達に遠くから撮影してもらったものです。えと、男友達は西岡健二郎といって、高校生の時からの付き合いなんです。前にバッタリ会って話をしているときに、ストーカーに気づいて撒いてくれたんです。一番最初にこの事で頼ったのも彼です。」


写真には、約170センチはある男が写っていた。上はグレーのTシャツに黒い半袖のミリタリーシャツ、下は薄汚れたジーパンに使い古しているであろうスニーカー。それプラスつばの大きいキャップにマスクをして俯きながら歩いている。


「この写真、いただいてよろしいですか?」

「大丈夫です。」


その写真を悠に渡し、パソコンなどにデータとして取り込んでおくように頼む。


「わかりました。では、こちらにお名前と住所、電話番号を書き込んでいただけますか?万が一の事があったときにすぐ駆けつけられるようにしたいので。それと、先程お話ししていただいた西岡健二郎さんの連絡先も出来れば教えていただきたいのですが···。」

「私のは全然大丈夫ですけど、彼のは…ちょっと連絡してみますね。」

「お願いします。」


その後、西岡さんから無事に許可を得て、連絡先をいただいた。


「…これで、いいですか?」

「はい、結構です。」

「あの、料金はおいくらですか?」


ここでは警察から依頼を貰っているため、料金が警察によって決められていて、その料金に調査費用等を少し上乗せする。だから大きな仕事ほど、僕たちに振り込まれるお金も多くなる。これについては、上乗せする金額を決めている経理係の玲音が説明する。


「今回はストーカー退治ということで···大体これくらいかと思われます。」


そう言って、電卓を見せる玲音。


「これなら大丈夫です。」

「承知しました。」

「他に何かありますか?無ければ、もうお帰りいただいて結構です。」

「特には、何もないです。」

「わかりました。また、何かあったらご連絡ください。1人でお帰りになられますか?従業員を護衛につかせることも出来ますが···。」

「いえ、さっき連絡した西岡くんが車で迎えに来てくれることになったので、結構です。では、失礼します。」


夏海さんを見送り、早速計画をたてる。今回は何回か経験のあるストーカーの確保だからか、すぐに案がポンポン出てきた。


「ここは、西岡さんにも協力してもらった方がいいのではないのです?」

「もちろん、そうしてもらうよ。さっき連絡をいれといた。」

「それは良いとして、他はどうします?」

「いつも通りでいいんじゃね?悠がパソコンやらタブレットやらを使って情報を集め、玲音と稜樹で関わりがある人に話を聞き、俺と春馬でストーカーを捕まえる。いつもそんな感じだったじゃねーか。」

「そうですね。では、早速日向さんの近所の人に話を聞きに行ってきます!」

「遅くても11時には帰ってきてよ?仕込みは代わりに僕がやるから。」

「ありがとうございます。それでは、行って参ります!」


玲音が出ていった後、悠も自室にこもった。これは悠の癖で何か調べたいことがあったら、自分の気が済むまで調べ尽くす。終わるまでに丸1日かかった事もある。


「さてと。春馬、俺たちも仕込み始めるぞ。」

「うん。あ、稜樹はどうする?」

「俺はクリーニングに出した皆のカフェエプロンを取りに行ってくるよ。」

「あ、ならついでに日常品買ってきて!最近ティッシュがなくて···。あと、洗濯用洗剤も!」

「了解!じゃ、こっちも行ってきまーす!」


みんなに聞こえるように大声で挨拶し、車で颯爽とスーパーに向かった。それを見送ってから、僕たちは仕込みに取りかかった。

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