最弱戦士は妹のために英雄になりました。

藍坂イツキ

序章《自己紹介》

 序章 《妹が大好きな俺と兄思いの妹との物語》

 

 俺は妹を愛している。

 皆さんは、どんなに自分が弱くても、愛する者を守り抜けますか?



 俺の名前は、矜持(キョウジ)=ラナンキュラス。矜持が名前で、その下が代々受け継がれてきたラナンキュラス家の名である。ちなみに俺の父、クロウ=ラナンキュラスはこの国の王国戦士団の団長様だったらしく、弱い俺とは違ってめちゃめちゃ強かったそうだ。

 ここ、地球には色々な種族が住んでいる。人間族、猿人族、竜族……と多くの種族がともに手を取り合い共存している。そして俺がいるこの国がブライダルベール国という、人間族が作った小さな国。魔術や科学が発達し、いろいろなところで活用されている。科学よりかは魔術が発達しているか。だから、ほぼ魔術を応用して組み込んだものが多い。宙を浮いて走る車や目が開けられないほど明るい電球、光線(レーザー)を出す銃、持ち主の思い通りに形が変わる万能の剣など。

 そんな魔術入りの最先端の武器を使い、国の中や外の事件を解決し、クエストを受けるのが俺たち『戦士』の仕事である。クエストは難易度によって報酬の値段も変わるな。

 俺ら戦士にはランクがあり格付けがされている。そのランクや実績により日々の給料が違ったりもする。ランクはDからSSまであり、Sを超えると国王から、国王任命の最強戦士になることができるが、もちろん最弱な俺には届くはずもない。そんな俺のランクは言うまでもなく、Dだ。順位も最下位。ただのポンコツで、国の中でできるクエストをこなし、毎日を繋いでいる。

 そんな俺でも死なずにやってこれたのは義妹(いもうと)の琥珀(こはく)のおかげであろう。

 琥珀は今から十二年前、俺が四歳の時に父が拾った少女である。

 琥珀が父に拾われたのには理由がある。話せば長くなるが……まあ、話すことにしよう。

 今から百年前、この国の近くに地球最強とも謳われる竜族の王、『神竜』が住んでいた。その神竜は、悪いことなどするはずもなく人間と協力し、平穏に住んでいた。だが、とある馬鹿な人間族の若者が、当時小さかった神竜の子をいじめ、遊んで、けなしてしまった。当時の人間はその竜が神の使いである神竜だとは知らなかったらしい。

 しかし、神竜はそんな事情も知るはずもなく大いに怒った。

 そして十二年前、成体になった神竜は、最も罪深き、自分の名を汚した人間族を滅ぼそうとホープ国に攻撃をしてきた。

 攻撃なんて甘いレベルではなく、地球すらも壊せるような力を余すことなく使う神竜に、人間が勝てるはずもなかった。

 それはただ被害を増やし、人が続々と死んでいく史上最大の竜族と人間族の戦争になったのだ。

 しかし、その強さも打開する策を人間族は見つけることができた。それは、魔術を利用した弱体化魔術、封印魔術。それを何とか神竜の攻撃を掻い潜り、打ち込む。すると眩しく光り、大きな爆発が起こり、その場から消滅した。だがその爆炎と光の中、一人の女の子の姿があった。頭には角が生え、背中には白い翼があり、神竜の羽毛のような、光沢のかかった白い髪を垂らし地面に横たわる少女。その姿を見た人間族の兵士は怯えていたが、俺の父はその子を無言で抱え、連れ帰ってきたそうだ。それが俺の義妹、琥珀である。その後、琥珀には、記憶もなく、神竜らしさもなかったので国王は罪はないとし、父が我が家に連れてきた。

 っていうのがその理由で俺の可愛い妹の話。



 そして、今、彼女の奥底で、神竜の血が動き出しているのも知らずに、その時に少しずつ近づいていく。




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