act.45 最終決戦に向けて

 目を覚ましたララは時計を見る。まだ午前4時。外は真っ暗なはずだがここは地下。外の明るさなど分かろうはずがない。

 テーブルの上で休止状態であったソフィアが再起動する。

「ララ様。まだお起きになる時間ではありません。お休みください」

「いや、構わん。少し運動するよ」


 ララは柔軟とストレッチを始める。一通り全身をほぐした後、合唱して両手に力を込めた。


 バチバチと電気火花が飛び散る。ララの前身は紫電に覆われて光っていた。その光も消え静寂となる。


「ソフィア」

「はい」

「私のやり方は正しいのだろうか?」

「正誤の判断は今なすべきではないと考えます。しかし、ララ様の姿勢がプリンセス・フーダニットに強い影響を与えたことは間違いないでしょう」

「私は必死で、それこそ相手を殺す気で戦ったのだ。死ななかったのは相手の能力が優れていたからであって私の人徳ではない」

「わかっていますとも。それでも彼女を引き付ける魅力がララ様にはあったということでしょう」

「……そうかな」

「そうです。では朝食の準備をいたしましょう。ララ様、お手伝いいただけますか?」

「ああわかった」


 30㎝人形から人の姿に変形したソフィアがエプロンを身に着ける。ララとソフィアは厨房へと向かい朝食の準備をはじめたのだった。


 暫くして皆が起きて集まってきた。朝食としては豪勢なオードブルが並べられていた。サンドイッチ各種と白ご飯と焼き魚とみそ汁と豆腐も用意してあった。誰がこんなに食べるんだかとか言いながら、ララはサンドイッチを頬張りながら白ご飯を茶碗一杯に盛る。みそ汁と焼き魚はソフィアが用意した。

「自分で用意した分味わい深いな」

「いつ見てもいい食べっぷりですね」

「うるさい。腹が減っては戦はできぬ。おまえは黙ってみていろ」

「はいはい。おや、皆さま起きられたようですね」

 旭とシュナイゼルが顔を出す。

「おはようございます」

「ああ。おはよう。遠慮せずに食べていい。早い者勝ちだ」

「では遠慮なく」

 そう言って食事を始めたのは旭。

「私はフィーレ姫を起こしてまいります」

「馬鹿者。乙女の寝起きを襲うな。貴様も遠慮するな」

 シュナイゼルも渋々食事を始めた。

 ミサキ、フィーレ、グスタフも顔を出す。フィーレ姫の車いすはミサキが押していた。ゾン子はフラフラしながら、眠りながら姿を現した。完全に眠っている感じなのだが、食べ物の匂いにつられて屍のように這い出してきたようだ。眠ったまま極太ウインナ―をガリガリかじる。

「皆集まったようなので今後のことについて伝達する。我がアルマ帝国は強奪された鋼鉄人形の回収を終了した。また、人質となっていた人員の救出にも成功した。よって、本日12時を持って私には撤退命令が下される予定である。社長戦争は本日12時、開戦より48時間を持って終了の予定だ。ただし、その時点では決着がついていないと思われるため、希望する代理に関しては継続しての戦闘が24時間認められる。ここで該当するのは私を旭さんだけだ。私は上司の命令通り撤退する。旭さんは自由意志の基づき継戦か撤退かを選択してほしい。その他、ベルを失ったメンバーに関してはさらに24時間後、つまり明日の正午だが、生存している者は強制回収される。明日まで居残りたくない者は私と一緒に撤退することを認める。社長戦争の運営にかかわりなく、アルマ帝国が責任をもって元の世界へと送り届ける。以上だが質問はあるか?」

「食べ物はありますか?」

 寝ながら質問するゾン子だったがララは即答する。

「心配するな。腹いっぱい食わせてやる。他はないか」

 グスタフが挙手をし、おどおどと話し始める。

「ララ様にはご迷惑かもしれないのですが、私の師匠のことがまだ未解決なのです。リラ・シュベルベのことです」

「私の体に関しては大変感謝しております。しかし、リラ師匠をお救いしなければ元の世界へと戻ることはできません」

「フィーレ姫と同じく、私もリラ・シュベルベをあのビンイン・ジ・エンペラーから解放するつもりです」

「私もあのベルグリーズの“災厄”、リラ・シュヴァルベとの決着はつけるつもりだ。策はある」

「ララ様はリラ・シュベルベの解放にお力添えしてくださるのですね」

「ああ、そうだ。きっちりとケリをつける」

 ララの言葉に頷くグスタフとフィーレ、シュナイゼルであった。

 

 一行は原子炉区画を後にし、再びクルックスの研究所へと戻っていた。

 東の空は白み始め、だんだんと明るくなっていく。

 研究所の外では黒猫とミハル、玲香、ヒナ子が待っていた。修理の済んだアスラとランディス、そして玲香用のトリプルDレプトンが届いていた。


「さあ行こうか。王城にいるリラ・シュベルベをぎゃふんと言わせてやる」


 朝日を受けながら一行は行動を開始した。





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