act.33 白騎士登場
数千メートルを超加速で一気に駆け抜けたララはパンゼをぶん殴って吹き飛ばす。身長2.5mの重装甲を誇るこの対人専用の自動人形は腹部に大穴が空き沈黙した。周囲にいた十一体の赤い三つ目がララを捉え一斉に襲い掛かって来る。機関砲とビーム砲を放ち、見事な連携を図る。決して同士討ちはせず、ララを追いこみそして捕まえようと手を伸ばす。しかし、ララは捉えられず、逆に稲妻をまとう右脚の蹴りを喰らって上半身が吹き飛ぶ。
74式戦車はララを無視してそのまま突き進んでいくがララも相手にはしていられない。光剣を抜き切りかかって来るパンゼの腕を掴んで投げ飛ばし三体が折り重なったところを稲妻の拳で打ち抜く。三体がまとめて爆発した。
上空に舞い上がったヴィオレット・ツァオバラーに
ミハルの乗るアカンサス・クロウだが、走りながらブースターを吹かしてジャンプし、一気に数千メートルの距離を詰めてきた。隊列の最後方にいるアカンサスに接敵し重装型の頭部をビーム砲で粉砕した。殴りかかって来る格闘型のパンチを盾でいなし背中にビーム砲を撃ち込む。倒れたアカンサスに2~3発ずつビーム砲を撃ち込んで止めを刺す。相変わらず手際が良い。その時、十二体目の自動人形の胴体にララのパンチが炸裂し大穴が空く。自動人形パンゼは全て沈黙した。
「AIならこんなものですね」
「戦車も向かってくると思ってたんだけど当てが外れた。おや、グスタフが突出してるな」
「援護しましょうか」
「背を撃たれなければ大丈夫だろう。鋼鉄人形での初陣を見守ってやろう。ミハル中尉とフィーレ姫は周囲の警戒。これで終わるとは思えん」
「了解」
「分かりました。ララ様」
グスタフの携行していた47㎜砲では戦車の正面装甲が撃ち抜けなかった。接敵して上部か後方を撃ち抜くか、実剣で戦うかの選択を迫られるグスタフだが、迷わず実剣を抜刀し戦車へと向かっていく。74式は停車してから姿勢を制御し、そして主砲を発射してきた。グスタフは
ララが接敵してからわずか2~3分の出来事であった。
「信じられない。我が戦力をこうも簡単に全滅させるとは」
黄金色の光をまとい、着地してきたのは「ベルグリーズ最高峰の盾」シュナイゼル・ヘルト。彼の操る白騎士ことランディスであった。
「あなた方をこれより先へ進めるわけにはいきません。ここで食い止めます」
「お前の話は聞いている。降りて来いシュナイゼル・ヘルト」
「貴方の事は噂になっていますよ。強すぎる金髪の女児、ララ・アルマ・バーンスタイン様」
「ならば戦うよりは話し合う方が得策ではないのか」
「いえ。私も防御でしたら自信があります。貴方の攻撃は全て受け止めて見せますよ」
「結構。ところで我々はいつの間にか大所帯となってしまった。私も最初は徒手空拳であったのだが、今は仲間が大勢いる。貴様の相手をミハル中尉にさせ、知らん顔をしてここを通り過ぎることもできる」
「ララ姫。それはやり方が汚い」
「ふん。お前に言われる筋合いではない。フィーレ姫の護衛役であればそれに徹すればよいのだ。何故フィーレ姫と敵対するような行動をとるのだ」
「それは言えません。わが主を裏切る事になるからです」
「ここで言わないことが裏切りになるのではないかな?」
「違います」
「そこにいるフィーレ姫が偽物だと言い張っているようなものだな。仕方がない。私が相手をしてやる。グスタフ。鋼鉄人形から降りろ。私が乗る」
「火砲は先ほど投棄してしまったので、今の装備は実剣と盾だけしかありません」
「構わん。鋼鉄人形はそれだけで十分戦える」
「分かりました。お気をつけて下さい」
グスタフはインスパイアのハッチを開き昇降用のワイヤーを使って下に降りてくる。ララはグスタフを待たずに操縦席へ飛び乗った。
「さあ白騎士さん始めようか」
「承知した」
「デュエル承認されました。プリンセス・フーダニット陣営の代理、ララ・アルマ・バーンスタイン様とソリティア・ウィード陣営の代理、シュナイゼル・ヘルト様のデュエルを開始します。5……4……3……2……1……開始です」
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