act.29 vsゾン子 (=^・・^=) 猫耳仲間

「いや、私はどちらかというとカンパニーの敵だ。むしろゾン子の方がカンパニーの手先になっているぞ」

「うそ。俺っち懸賞に当たってここに来たんだけど。コンパニ―ってとこに呼ばれた」

「何勘違いしてるんだか。カンパニーの現社長が貴様のボス、モナリザ・アライなんだよ」

「ラスカルさんってカンパニーの社長なの? コンパニ―じゃなくて」

「ラスカルってアライさんの事か? そのコンパニーがカンパニーの事だろ。騙されてるんだよ。懸賞に当たったっていうのは大ウソだ。貴様を戦力にするためのな」

 咄嗟に頭を抱えしゃがみ込むゾン子だったが、猫耳に仕込まれた刃で自分の手を突き刺してしまう。手のひらが盛大に切れ、血が噴き出す

「いて、痛ててて。この猫耳刃を仕込んであったの忘れてた」

「馬鹿だな。手当しよう」

「いらない。俺っち全然再生できるから」

 ゾン子の手のひらは見る見るうちに再生されていき出血は止まる。手のひらをペロリと舐め、ララに向けるゾン子。

「ほら。もう大丈夫」

「その猫耳は危ないだろ。ソフィア替わりの物は無いか?」

「ええ、ここにございますよ。ピンク色の猫耳フリル付きでございます。祝賀パーティーでララ様に装着しようと用意しておりましたが、ゾン子様に差し上げてよろしいのでしょうか」

「構わん。つけてやれ」

 血の滴る白銀の刃を持つ猫耳を取り外し、ピンク色の可愛らしい猫耳を付けてもらうゾン子だった。

「これ、可愛いニャン。ララちゃんの分は無いのかニャン」

「色違いの物を用意してございます。白と黒がございますが」

「私は黒で、白いのはフィーレ姫に付けてやれ」

「ありがとうございますニャン」

 白い猫耳を付けてもらったフィーレもノリノリでニャンニャン言っている。そしてララの頭にも黒の猫耳がつけられる。

「ララちゃん可愛いニャン」

「可愛いですわニャン」

 ゾン子とフィーレ、二人の熱い視線がララを射抜く。観念したララも恥ずかしそうに口を開いた。


「ニャン……」


「キャー! ララ様って可愛いですニャン!」

「ララちゃん似合うニャン。可愛いニャン!」


 いつの間にか猫耳を付けた少女三人がじゃれあっている。グリーン系の迷彩服に猫耳といった特異なスタイルなのだが案外様になっている。


「ところでゾン子。私と戦うのか? どうするんだ?」

「え? どうしようかな。ララちゃんはカンパニーの敵なんだよね。だったら俺っちの味方」

「でもゾン子のフレンズを焼いた張本人だ」

「あーそこんとこはムカついてる。カリスマ君のダンスは神がかりだったから特に」

「そして、そこに侍らせている死体の男は火葬して埋葬する」

「ダメ。フーちゃんは大事なペットだから俺っち離さない」

「だったら答えは一つだ。戦うしかないな」

「それは……違うんじゃないの。味方同士は戦わない」

「カンパニーは関係ない。しかばねもてあそぶ貴様の性根を叩き直してやる」

「げっ! ララちゃんマジになってる?」

「私は最初からマジだ。戦わない条件は三つ。その男を埋葬する。貴様はこの世界ではしかばねもてあそばない。ベルをこちらに渡す」

「じゃあ、俺っちが勝って皆殺しにしたら、ここにいる全員をペットにするよ」

「構わん。行くぞ」

「さあ来い」

 その瞬間にララは踏み込んでいた。右ストレートがゾン子の左頬に炸裂する。ゾン子はその場にへたり込んだ。首は70度位斜めに曲がっている。ゴキゴキと骨を鳴らしながら両手で頭の位置を治すゾン子。

「ララちゃん今の凄く痛かった」

「じゃあもっと痛いのをくれてやる」

 今度はいかづちをまとった右脚で鳩尾みぞおちを蹴りこむララ。バチバチと感電しながら浮き上がって仰向けに倒れたゾン子。髪の毛は逆立ち、全身に軽いやけどを負っていた。


 そしてゾン子は動かなくなった。


「マユ姉様。ゾン子のデータを」

しかばねの神です。神の使い方を間違えているわ』

「異世界の話でしょう。私達の常識は通用しません」

『それもそうね。資料では虹蛇の神格「アイダ・ウェド」と愛の神格「エジリ・フリーダ」を同時に所持しているとなっていますね。自身が生ける屍であり、屍を召喚・使役します。不死身であり怪力であり「水のタリスマン」を自在に操る……とあります。愛の神格が意味不明ですけども』

「水のタリスマンって何?」

『恐らく水の精霊術であろうと思います。水を自在に操る能力の事でしょう』

「なるほど。では、あの程度の攻撃で動かなくなることはあるでしょうか」

『このデータを見る限りあり得ませんね。カンパニーの戦闘実験には深くかかわっている様子で、その戦闘力は屍神を名乗るだけの事はあります。他の代理と違いカンパニーはゾン子さんの事を熟知していますね。情報が豊富です。えーっと得意技に「死体の死んだふり」がありますよ。これは見分け方が分かりませんね。まあゾン子さんは死なないので動かないイコール死んだふり確定です』


「だとよ。死んだふりはもう止めろ」

「ちっ。バレてるか。ララちゃんの攻撃は痛すぎ。あのパンチ一発で実力差を達観したよ。どうしてそんなに強いのさ」

「数千万年の修行の成果さ。私は輪廻の記憶を全て携えているんだよ」

「歳は?」

「二十歳」

「それで? 十歳位じゃないの?」

「私の国では皆成長が遅いんだ。地球人の倍かかっている。その代わり寿命も倍だ」

「ふーん。でも二十歳なんだよね。それで数千年の記憶持ってるの? 訳わかんないや」

「理解不能な人が多いだろうから普通は説明などしない」

「もう止めた。俺っち痛いの嫌い」

「じゃあベルを渡せ」

「うん。わかった」

 首に下げた巾着袋からベルを取り出してそれを握り締めるゾン子。

「ララちゃん。さっきの条件は全部聞くけど、そのかわり一つお願いしていいかな?」

「何だ?」

「俺っちもついて行っていい? 強い奴が襲ってきたら助けてくれる?」

「構わん。ただし社長戦争の間だけだぞ」

「うん」

 そう言ってベルをララに渡すゾン子。

 ララはベルを受け取り握りつぶした。


「只今、モナリザ・アライ陣営の代理、ゾン子様のベルが破壊された事を確認しました。繰り返します。モナリザ・アライ陣営の代理、ゾン子様のベルが破壊された事を確認しました。デュエルの勝者はプリンセス・フーダニット陣営の代理、ララ・アルマ・バーンスタイン様です。デュエルの勝者はララ・アルマ・バーンスタイン様です」

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