act.22 vsグスタフ(後編)&フィーレ姫登場

 アカンサスから放たれる20ミリ炸裂弾は魔術障壁に阻まれ命中寸前で炸裂する。斜めに走りながら距離を詰めるアカンサスにアズラは火球を放つ。

「もらった!」

 アカンサスの行動を先読みしてその場所へ放った強力な魔術の火球だったが、火球が爆ぜた場所にはアカンサスの姿は無かった。

「後ろ!」

 すぐさま後ろへ向き六本の腕で独鈷杵どっこしょの連打を叩きこむ。

 しかし、手ごたえは無かった。

「どうしたんだ。まるで幻と戦っているみたいだ。幻術をかけれらた気配はないのに……」

「気に入っていただけたかしら。これが残像系の分身術よ」

 不意に背後から体当りをかまされ吹き飛ばされるアズラ。たまらず空中に退避し距離を取った。

 背中の青い宝玉から放出される魔術。蒼い炎で形成される翼、炎の翼を広げ空中で停止するアズラ。しかし、すぐさま20ミリガトリング砲が撃ち込まれるが、今度の射撃は正確に目を狙ったものだった。魔術障壁に守られているとはいえ、目を狙われて思わずガードしてしまう。アズラは自身の六本腕でガードするものの、それは同時に自身の視界を塞いでいた。

 そこへアカンサスの斬撃が襲う。

 六本の腕でガードするものの、二本は切断された。

「まさか、空を飛べるのか!」

 アズラは再び魔術の火球を放つが、今度はアカンサスを捉えた。大きい盾と実剣が炎に包まれて地面に落下する。

「盾と剣だけ? まさか?」

 背中に回り込んでいたアカンサスはアズラの後頭部にビームライフルを突きつけている。ゼロ距離でビームを発射し、青白い光線がアズラの頭部を貫いていた。

 ゆっくりと地上に着陸し、擱座するアズラ。眼光は消えその機能は停止した。


「只今、リンド陣営の代理、グスタフ・シュネー・アイゼンヘルツ様のベルが事故により破壊された事を確認しました。繰り返します。リンド陣営の代理、グスタフ・シュネー・アイゼンヘルツ様のベルが事故により破壊された事を確認しました。デュエルに関しましてはグスタフ・シュネー・アイゼンヘルツ様は失格。プリンセス・フーダニット陣営代理のララ・アルマ・バーンスタイン様は戦闘に参加していない為、このデュエルは勝者無しの判定といたします」


 アズラのコクピットから降りてきたグスタフであったが、意気消沈している様子だった。

「済んだな。おいグスタフ、生きているか?」

 ララの問いかけに俯いて答えるグスタフ。

「大丈夫です。僕は魔術師としてはそれなりに強いつもりでした。しかし、格闘戦においては確実に経験不足だったと思います。ララさんと戦っても魔術をうまく使えず翻弄されて負けていたと思います」

「そう思うか?」

「はい。僕はまだまだ未熟者だと痛感しました。この大事な事を教えてくれたララさんに感謝しています」

「まああれだ。今回の戦いを仕組んだのはミハル中尉なんだ。ミハルに感謝しろ」

「アカンサスのパイロットの方ですね」

「ええそうよ。私がミハル。グスタフ君が可愛いから気に入っちゃった。キャー!」

 ミハルは大はしゃぎしながらグスタフを抱きしめる。ミハルの豊かな胸に顔を挟まれ、熟れたトマトの様に赤くなっているグスタフだった。


 そこへ紫色の光弾が近距離に着弾する。

 紫色の閃光が周囲を覆う。魔術攻撃だった。


 遥か東方の上空に大型のロボットが浮遊している。

 明るいベージュで細身の機体は女性的で美しい。


『ララさん。新たな敵ですよ。あれはソリティア・ウィード陣営のフィーレ姫の機体“ヴィオレット・ツァオバラー”です。連戦大丈夫ですか?』

「マユ姉様。お久しぶりな感じですけど、どこか行ってらっしゃましたか?」

『お昼ご飯と花摘みに……』

「バケツプリンはお願いしますよ。帰ったらしこたま食べるんだから」

『分かってますよ』


 そうこうしているうちに、そのベージュの機体は急接近してきて目の前に立ちふさがる。

「グスタフに手を出すことは許しません。このエロ女!」

「エロ女って私の事? ショタは趣味じゃないんだけど」

「ショタって何よ! さっきからその大きなおっぱいでグスタフをたぶらかしてたじゃないの」

「確かに、貴方よりは大きいかも?」

「私の胸のサイズは関係ありません」

「じゃあ、グスタフ君にどの胸が好きかって聞いてみる? ねえ、グスタフ君。ミハルお姉さんの胸、大好きだよね」

「あ。えーっと。嫌いじゃない……です……」

「ほーら。大好きだって」

「嫌いじゃないって言ってるだけです。好きとは言ってません」

「ああいうのは照れ隠しなんだって。嫌いじゃないは好きって意味なの。知ってる?」

「そんなの知りません」

「まあまあ、長くなりそうだから降りてきて話し合おうよ」

「むむむむむ。分かりました」

 ヴィオレット・ツァオバラーの胸が開き中から少女が飛び出してくる。

 白いドレスをまとった金髪の少女、フィーレ姫だった。長い金髪を後ろで一本に束ねていた。空中をゆっくりと浮遊しながらゆっくりと地上に降りてきた。

「あの体形は私とたいして変わらんな。おっぱい勝負にならんぞ」

 ララがぼそりと言う。

「だから、私の胸のサイズは関係ないって言ってるでしょ。ねえグスタフ。そのお姉さんよりは私の方が好きだよね」

「いや、そんなことは答えられないよ」

 赤くなってモジモジするグスタフである。

「おや、グスタフ君はもしかして、同年代のララ様が好きなのかな?」

 ミハルの一言に更に赤くなるグスタフは消え入るようにぼそりと言う。

「言えません……」

「ほほー、これはこれは追及したくなってきましたよ。まさか……リラ師匠とか?」


「……」


「え? マジ!?」

「超年上趣味だな」

「聞きたくなかった!」

 

 顔を見合わせる女子三名。

 しかし、その場の空気が読めなかった旭はキョトンとしていた。ヒナ子はお腹が空いて来たのか周囲の草むらで昆虫を漁っていた。


※フィーレ姫ですが、年齢は10歳。身長140㎝、体重37kgの美少女としています。胸のサイズは聞かないで! 一方、リラ・シュヴァルベは23歳です。身長167㎝、体重54kg、BWH=93H、55、87です。帝国の面々は魔術により年齢詐称しているのではないかと疑っています。高名な魔術師の肩書を、若き天才ではなく年季の入った超絶ベテランだと解釈したようです。ちなみにミハルは地球人的見た目年齢では26歳でハーゲンとリオネよりちょっと下、黒猫よりはちょっと上です。

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