act.17 vsリラ・シュヴァルベ&オラケル
王城に突如浮上した大型ロボット“オラケル”。その分厚く横幅の広い装甲に包まれた姿は正に“動く城”である。操縦者は異世界の国ベルグリーズの高名な魔術師“リラ・シュヴァルベ”。強大な魔力を自在に操るその力は“災厄”と呼ばれているそうだ。
「撃ち方止め! アカンサス・シンは高度を保ち現状維持、アカンサス・クロウは砲身冷却と給弾。弾種は
『了解』
ララの指示にマユが答える。マユの精神会話を通じて部隊へ伝わる仕組みだ。
「旭さん。ソフィアは此処から動かない。ヒナ子もな」
「ピヨ?」
旭とソフィアは頷いている。
首をかしげるヒナ子に頬ずりをしてこぶし大の石を拾うララ。
砲撃地点を認識したであろうオラケルがそこへ動こうとするその瞬間に、ララは先ほど拾った石を投げた。
ララの投石は10㎞先のオラケルの眼、カメラアイに命中した。
ララ流の宣戦布告だった。
十数メートル走って荒地に突き出ている岩の上に立ち、堂々と胸を張って宣言をする。
「私はララ・アルマ・バーンスタインだ。プリンセス・フーダニットの代理として参戦している。いざ勝負せん!」
ララの宣言を受けオラケルは急接近してきた。10㎞を僅か5秒で飛翔しララの眼前に立ちふさがる。
「徒手空拳で私に戦いを挑むあなたは狂っています。しかし、私は受けましょう。それが最愛の主、ビンイン・ジ・エンペラー様に対する私の忠誠なのです」
「デュエル承認されました。プリンセス・フーダニット陣営の代理、ララ・アルマ・バーンスタイン様とビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、リラ・シュヴァルベ様のデュエルを開始します。5……4……3……2……1……開始です」
「なあ、リラさん。そのごっついのから降りて戦う気はないかな?」
「無い」
「そんなデカいのに乗って、こんなちびの私と戦うのは恥ずかしくない?」
「恥ずかしくはない」
「不愛想だね」
「……私は貴方が私の前に出てきた理由を考えている。異国の姫よ。貴方がアルマ帝国最強戦力だという情報は知っている。多くのものは貴方の姿を見てそんなはずはないと油断するだろう。しかし、私は違う。私はベルグリーズ最高の魔術師。決して油断はしない」
(かかった)
これはララの思惑通りだった。高名なものであればこそお互いが名乗り、お互いの立場を理解してから戦うものだと。
「そして私はこう考える。私がこのオラケルを降りた瞬間に、貴方は遠距離から砲撃を加えるだろう。このオラケルの唯一の弱点。私の魔力供給の無い状態の場合にのみ破壊可能だからだ」
「ふふーん。バレちゃあしょうがないな。では、参る」
その瞬間、ララの姿は見えなくなり、オラケルの顔の前、右目の前に跳躍していた。オラケルのモニターにはララのアップが映っている。
ララはニヤリと笑い、渾身の一撃を右目に放つ。
「はあ!!」
霊力を込め稲妻をまとった拳はオラケルの右目を粉砕した。
クルリと宙返りをして地上に降りるララ。
「リラさん。そのガラクタから降りた方が良いんじゃないの?」
「まさか、信じられない。素手でこのオラケルの右目を奪うとは……。しかも、何だこれは。警告だらけでまともに動かない」
オラケルのモニターは概ね右側の30%が真っ暗になっていたが、それよりも様々な警告がモニター上に表示されてる。
「この……」
オラケルは剣を抜きララに斬りかかるのだがララは死角へ走る。そうはさせないと体をひねった瞬間に左目の前にララがいた。
「はあ!!」
再びララの渾身の一撃が放たれる。今度はオラケルの左目を粉砕した。
両目が破壊されたオラケルのモニターはブラックアウトし何も映らなくなった。本来は予備のカメラが作動する事で、解像度は落ちるもののブラックアウトする事は無い。
「どうしたオラクル。何も見えないぞ」
「残念でした。そのロボットの頭の中、既に衝撃波で破損してるよ。降りてきて勝負した方が良いんじゃない?」
「それは出来ない」
「じゃあどうするの」
「見えなければ見えるようにするだけだ」
胸部の三重になっている装甲が開きリラが姿を見せる。
「これで見えるようになったぞ」
左手にボウガンを構えララに向けて矢を放つ。
しかし、矢の刺さった場所にララはいなかった。
その瞬間、光剣を構えたララがコクピットに侵入し、リラの胸元を光剣で突いていた。
光剣はリラの胸のブローチを破壊したが、その先は貫けなかった。光剣は闇の魔術で機能停止し、その刀身は消失していた。
ララは即コクピットの外へ飛び降りたのだが、彼女の両腕は黒ずんでいて感覚を失っていた。
闇の魔術エナジードレイン。その効果範囲に侵入するすべてのエネルギーを吸い取る恐るべき魔術だった。
「只今、ビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、リラ・シュヴァルベ様のベルが破壊された事を確認しました。デュエルの勝者はプリンセス・フーダニット陣営代理のララ・アルマ・バーンスタイン様です。繰り返します。勝者はプリンセス・フーダニット陣営代理のララ・アルマ・バーンスタイン様です」
その場に流れるアナウンスはララの勝利を告げるものだった。しかし、ララは苦悩していた。
接近戦が得意なララにとって、接近する事で命を奪う魔術障壁は相性が悪すぎる。
(もう両腕は使えない。このままでは殺される)
即時撤退すべき事案である。
しかし、救出完了の知らせは来ていなかった。
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