act.13 vs押し寄せる理不尽ネイとさらに押し寄せる理不尽が二つ?
ララの体格と比較して巨大すぎるハルバード。ララはそれをネイに向かって軽々と投げつける。ネイはそれをハルバードで叩き落すのだが、その刹那、天翔ける馬の前にジャンプしていたララは光剣でその首を叩き切っていた。
鮮血をまき散らしながら丘の上に落下する天翔ける馬とネイ。難なく着地したネイだったが、その愛馬は動かぬ肉塊となっていた。
「ナイトメア!」
変わり果てた愛馬の姿に目を奪われたネイの隙をララは見逃さない。再び瞬間的に接近したララは光剣で切りつける。その剣撃をハルバードで受けるネイ。反応はすこぶる良い。しかし、ララの剣撃にハルバードは真っ二つになった。返す刃でネイの左手首を切断する。
「馬鹿な、その光る剣は切れすぎる!」
右腕で咄嗟にサーベルを抜くネイ。しかし、ララは容赦なく斬りかかる。
ララの光剣をサーベルで受けるネイ。しかし、その刀身も真っ二つに斬られてしまう。そしてネイの右手首も斬り落とされた。
『ララさん。そのサーベルの
「分かりました」
ネイの手首と一緒に落下していたサーベルの鍔をララが光剣で貫く。その瞬間アナウンスが流れる。
「只今、モナリザ・アライ陣営の代理、ミハエル・ネイ様のベルが破壊された事を確認しました。デュエルの勝者はプリンセス・フーダニット陣営代理のララ・アルマ・バーンスタイン様です。繰り返します。勝者はプリンセス・フーダニット陣営代理のララ・アルマ・バーンスタイン様です」
開始から1分。ネイが何もしないうちに速攻で決めたララの勝利であった。
「このような理不尽な敗北など認めん」
「まだやるのか。死にたいならかかってこい」
「上等だ!」
ネイの両手は既に再生していた。恐るべき再生速度だった。
ネイは武器を持たず、ララに対して肉弾戦を挑む。神速とも言うべき拳をララの顔面に叩きこむ。ララは腕を十字に組み防御するのだが、軽量であるが故吹き飛ばされる。その時、光剣はララの手を離れ、その光る刀身は消失した。
ネイの猛攻はさらに続く。跳躍してララに飛び蹴りを浴びせるがそんな大技はさらりとかわすララ。そして、ネイの右フックを左腕で受けるララだったが、また吹き飛ばされてしまう。ネイの攻撃はどちらかと言うと単調であったが、その速さと重さは尋常ではない。帝国最強戦力と言われるララを防戦一方に追い込むその膂力は理不尽の一言に尽きる。
『ララさん。防戦一方ですが大丈夫ですか?』
「大丈夫です。まだ十分に余力はあります」
ララとマユが通信しているのもお構いなくネイが攻撃をしてくる。
ネイの突撃をかわしたララは脚を引っかけネイを転ばせる。そして、ララは右拳に霊力と稲妻を込めた渾身のパンチをお見舞いする。
ズドン!
まるで砲弾が炸裂したような轟音と地響きが鳴る。
ネイの鎧は胴体部分が完全に粉砕され、全身は稲妻に撃たれて焼け焦げていた。
しかし、この攻撃でも決着はつかない。
ネイは何事もなかったかのように起き上がり、全身の火傷も急速に治癒していく。
「化け物だな」
「貴様と同じだ」
二人がにらみ合い、ネイがにやりと口角を上げた瞬間ララの背後から巨大な狛爪が出現し、ララの背中を切り裂く。
「グッ。他にもいたとは迂闊だった」
ララは数メートル飛ばされ、しかも背からは鮮血が噴き出ていた。
ララの背にいた巨大な狛爪の持ち主は、夜中に戦ったあの大悪魔シトリーだった。黒い翼の生えたライオン型の獣人。しかし、今回は体高12~3mにも巨大化しており、もはやその姿は怪獣そのものであった。
「小娘。傷が癒えたので遊びに来たやったぞ。もっともっと可愛がってやろう」
「この小娘は私の獲物だ。邪魔をするなこの化け物が」
ネイとシトリーが対峙している。この隙に、旭とヒナ子がララの前に立ちふさがる。
「これ以上は手出しさせない」
「ぴよよよよよ!!」
その姿に警告を発するシトリーとネイ。
「何だ?雑魚はすっこんでいろ」
「死にたく無ければ帰るんだな」
「それは私の台詞ですわ」
そのセリフにその場の動きは止まってしまう。突然その場に現れた女性。長い銀髪をたなびかせた豊穣の女神を思わせるその姿はララの姉、ネーゼだった。しかし、服装はララと同じ迷彩服を着用していた。
「私の大切な妹をいじめる輩には容赦しません。これ以上、場外乱闘での狼藉を働くのならこの場で始末します」
「お前が本物か?何故私が
そう言ってネーゼに襲いかかるシトリーだが、その胸を一本の光線が貫いた。
光学障壁を解除して姿を現したのは、朱に輝く鋼鉄人形リナリアだった。
「ぐは。アルマの鋼鉄人形ごとき、我の力でバラバラにしてやる」
リナリアに向かっていくシトリーを見ながらネーゼは穏やかに言う。
「ハーゲン。排除しなさい」
「はい。ネーゼ様」
リナリアは実剣を抜刀し構え、シトリーと対峙する。
そして、旭とヒナ子はネイと対峙する。
今、それぞれの戦いが始まろうとしていた。
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