二日目の戦闘(前篇)

act.12 vs日向旭♡のハズだったのに押し寄せてきた理不尽

 夜明けと同時にヒナ子が活動を始めた。昨夜用意したミディアムレアのミミズステーキを美味しそうについばんでいる。ソフィアも朝食の準備を始めたようだ。旭がそれを手伝っている。

 ララは大口を開けあくびをしている。

「朝ごはんは何?」

「す〇おいし〇すごく〇いしいチ〇ンラーメンですよ」

「沢山作ったので遠慮なく」

 眠そうだったララの眼が途端に輝き始める。

「はい。食べます。直ぐ食べます。伸びる前に食べます」

 ララはこういったインスタント食品にも憧れているのだ。カップ麺やカップ飯にも同様の反応を見せる事だろう。

 ドンブリに山盛りに盛られたチキンラーメンと受け取ったララは、早速ズルズルと麺をすすっている。それを見ながらクラッカーをかじっている旭。コーヒーを片手にララの食べっぷりを眺めている。

「ところでララさんは、どうしてこの戦争に参加されたのですか?」

「それは一言で言うと、帝国の威信を示すためです」

「国の為に?あなたのような幼い方が戦うというのですか?」

「ええ。頭の切れる総司令がいるんですよ。実力的に私は目立つだろうと」

「確かに」

「帝国国内の話ですが、大量の装備と数名の人員が何者かに強奪されたのです。それらがこの社長戦争に参加する事と判明しました。別働体がその人員の救出と装備を回収するべく行動しています。そちらを目立たなくする為に、私はとにかく勝ち続ける必要があります」

「国民が拉致されたのですか。それで国の威信をかけて戦っているんですね」

「そう、それと装備の回収も重要なのです。決戦兵器が大量に強奪されました。大型のロボットが十数機もです。まだ遭遇していませんが、あんなものを投入して何がしたいのか疑問です」

「大型のロボットですか? 確かに、代理同士のデュエルとは趣向が違う気がします」

「それは恐らく、勝った陣営が残った他陣営の勢力を殲滅する為だと考えています」

「そんなものが出てきてはお手上げですね」

「ええ。別働体が対処する予定ですが、目の前に現れた場合は戦うしかありません」

「ロボットと戦うのですか?」

「そうです。私は親衛隊の隊長。決戦兵器を素手で排除できる実力があるから任命された役職なのです。私の事を化け物のようだと思ってますよね」

 少しばかり黙っていた旭は素直に答える。

「人間離れしていると思います。だからと言って化け物ではありませんよ。心が人であるならばそれは人なのです」

「ありがとう旭さん。お優しいのですね。でも、私達は敵同士。貴方がモナリザ・アライ陣営にいる限り」

「敵ですか」

「総司令の命令です。カンパニーに関与する者は全て排除せよと」

「なるほど。しかし、僕もモナリザ・アライさんに約束をした。彼女を助け彼女と同じ理想を実現すると」

「そうですか」

 ララは俯く。戦うしか道が無い関係である事を嘆いているかのように。

「僕たちは戦うしか道はないという事ですね」

「肯定します。では30分後に。ここの片づけをしますので」

「分かりました」

 旭は頷いた。


 空は晴れているが、青空ではない。

 光化学スモッグのような、白い煙のような大気に覆われている。


 30分経過した。

 ソフィアとヒナ子は丘のふもとへと退避させた。

 今、旭とララの決闘デュエルが始まろうとしている。


「私はプリンセス・フーダニットの代理、ララ・アルマ・バーンスタインだ。いざ勝負せん!」

「僕はモナリザ・アライの代理、日向あ!」


 ドカッ!


 二人の間に大柄なハルバードが突き刺さる。先端に槍と斧がついている長尺の武器だ。


「その喧嘩、私が買った。私はモナリザ・アライの代理、ミハエル・ネイだ。ララ姫! 勝負だ!!」

 その声に反応しアナウンスが始まる。

「デュエル承認されました。プリンセス・フーダニット陣営の代理、ララ・アルマ・バーンスタイン様とモナリザ・アライ陣営の代理、ミハエル・ネイ様のデュエルを開始します。5……4……3……2……1……開始です」


 天翔ける青鹿毛の馬に跨り空間を疾駆する騎士。銀色の甲冑に身を包んだその姿は女性そのものだが頭頂に突き出た猫耳が人外だと示唆している。水色のくせ毛をなびかせ地に降りてきた。その輝く黄金の瞳に強い意志を感じる。

「横取りするなんて理不尽じゃないか。何を考えているんだ!」

 怒りをあらわにする旭に対してせせら笑うネイ。

「私の通り名は『押し寄せる理不尽』だ。異論反論は受け付けんぞ。フフフ」


「マユ姉様。見ましたか? 横から割り込んできて、その割り込んできた方とのデュエルが承認されたのです。これ、戦っちゃっていいんですよね」

『見ました。あの人、ネーゼ姉様よりも厚かましいわ。規約では、複数が同時に遭遇した場合は、先に名乗りを上げた方とデュエル開始となるようです』

「ではあの猫耳騎兵と戦えばよろしいのですね」

『はいそうです。ララさん頑張って!』

「はい姉様」


地面に突き刺さったハルバードを引っこ抜きブンブンを振り回すララ。ネイもどこからか取り出したハルバードを構える。


空中に制止した騎兵と丘の上の小柄な歩兵が対峙している。

今、デュエルが始まった。






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