act.14 決着☆押し寄せる理不尽。旭とヒナ子vsネイ&リナリアvsシトリー

「ぴよよよよ!」

 ヒナ子の嘴からビーム砲が発射される。

 この巨大な小鳥の攻撃を予想していなかったネイはそのビームの直撃を受けてしまう。高熱に焼かれ激しく燃え上がるネイ。しかし倒れない。

「……我が身は陽を宿す者……重ね重ねて、束ね束ねて……」

 旭も祝詞を唱え始める。

「その陽は灼け衝く無謬の裂光……」

 旭の言霊により再び出現した九つの陽光。その眩い光芒は太陽と見まごうばかりだ。


「おのれ。鳥の分際で生意気な」

 ヒナ子に襲い掛かろうとするネイに向かって旭は右手をかざす。

 眩い光芒の一つがネイに衝突し更に大きな業火となる。

 それでもネイは倒れない。

 さすがに不利と感じたのか数十メートル後方に下がって空中からハルバードを取り出す。

「小童。お前たちは必ず殺す。生かすことは私にとって屈辱だ」

「回復はさせません。来たれ炎の竜……かの敵を食らいつくせ」

 旭の右手より太い火炎の奔流が流れ始める。それは龍の姿をとってネイに巻き付いていく。ネイは再び業火に包まれる。そこにヒナ子のビームが命中する。更に高温の炎に包まれるネイ。

 しかし、倒れない。

 ハルバードを握っている腕が炭化して崩れていく。ハルバードも落下した。

 そこへ再び光剣を握ったララが突入する。

 光剣はネイの眉間を貫いていた。

 

 殆ど炭化したネイであったがまだ倒れない。

「相手が悪かったようだ。これ以上は戦えない。今回は退散するとしよう」

 そう言い残して消えていった。


 一方、シトリーは空気中から剣と盾を生成しそれを構えてリナリアに突進していく。リナリアより一回り大柄な肉体。そしてその剣もリナリアの物よりは大きく太い。巨体の膂力を生かしてその大剣を振り回すのだがリナリアは受けもせずかわしていく。

「どうした。私の剣が怖いのか。受ける事すらできないのか」

「いや、貴様には剣の素養が無い。剣を交えることなど不要と判断した」

 ハーゲンの一言に激高したのか、シトリーは剣をリナリアの操縦席に向け突撃してきた。

 その剣を盾でいなしシトリーの喉に剣を突き刺すリナリア。

「剣を携えるなら中身を鍛えんと意味が無いぞ」

 シトリーの喉から剣を抜く。

 鮮血の滴る刀身が次第に光を帯び輝き始める。

「まだ負けていない」

 口から血をこぼしながらシトリーが斬りかかって来るがその剣を剣で受けるリナリア。しかし、シトリーの剣は砕けてしまった。

 シトリーは盾を構えて後ずさりをするがその盾を真っ二つに切り裂く。そしてその心臓に光る剣を突き立てる。

「グググ……何故だ。なぜ勝てぬ」

「イミテーションでは本物に敵わない。そういう事だ」

 リナリアの剣はその輝きを増した。

「ヴグアアアア……」

 シトリーの体も光に包まれる。断末魔であった。

 シトリーは灰となり崩れていく。


「ララさん。大丈夫ですか?」

「多少出血してますが致命傷ではありません」

 ネーゼの問いかけに強気で答えるララであったが、明らかに無理をしている様子にネーゼは困り顔をしている。

「その出血では多少とは言いません。姫様、さあ治療しますよ」

 そう言ってララを抱え上げる女性士官はミハル・ジュドー中尉だった。

「エクリプス少尉は周囲の哨戒をお願いします」

「了解しました」

 実体化したのは宇宙軍用装備の戦闘人形ロボット兵器アカンサス・シンだった。灰色のスリムな偵察型ロボット。その大気圏内でも自由に飛び回れるよう重力制御ドライブ搭載をした改良型は一気に上昇し見えなくなる。


 そこへ地中から戦闘艦が浮き上がって来た。帝国の特殊艦ケイオンである。

「こら、ミハルはなせ。くすぐったい。私は大丈夫だ。離せったら離せ!!」

「暴れてはダメ。出血止まってないじゃないですか」

 暴れているララを軽々と抱え艦内へ運ぶミハル中尉だった。

 ネーゼは旭に向かって頭を下げた。

「旭さん。ララを助けていただいてありがとうございます」

「いえ、とんでもない」

「そしてヒナ子さん。あなたにも感謝しますわ」

「ぴよ。ぴよよよよよ!!」

 ヒナ子は嘴を天に向けて体をブルブル震わせている。これで喜んでいるみたいだった。


 社長戦争が開始され約20時間が経過した。

 終了まで約28時間。


 ネーゼは旭の手を握っていた。

「日向旭様ですね。お話は伺っています」

「何時の間に?」

 怪訝そうに首をかしげる旭だった。

「申し訳ありませんが、ララさんの意識をずっとトレースしていたのです。あなたの事はララさん以上に理解しています。そこでお願いがあるのですが、この社長戦争が終了するまで、ずっと、ララさんと一緒に行動していただけませんか?」

「僕とララさんでは立場が違います。先ほどは敵同士としてデュエルするはずだったのです」

「知っていますよ。それでもお願いしています。ララさんの事を見てやっていただけませんか?」

「僕はモナリザ・アライ陣営の代理です。約束を違える事は出来ません」

「そうならないようにすればよい事。違いますか?」

「それはどうでしょうか」

「今から私達はビンイン・ジ・エンペラー陣営の拠点を襲撃します。そこに、拉致された人員がいると判明しています。その救出を手伝ってほしいのです。貴方はモナリザ・アライ陣営の代理。その他の陣営の力を削ぐ為なら約束を違えるわけではない。そうですよね」

「そうですね」

「では決まりです。ビンイン・ジ・エンペラーの拠点を攻略し、人質救出のお手伝いをしていただく」

「はい」

「ありがとうございます!」

 ネーゼがぎゅっと抱きつき、その爆乳が押し付けられる。


(この感触に男は無力化する……)


 強引なネーゼの勧誘にあっさりと白旗を挙げた旭であった。

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