act.4 戦場へと赴く
一行がたどり着いたのは三ツ星一流ホテルだった。
「ララ様、ご出発まではお時間がございます。何かおやつでもお召し上がりになりますか?」
ソファーでふんぞり返っているララに向かって金森が話しかける。機嫌でも取ろうというのだろうか。
「ふむ。何かあるのか?」
「とっておきのスイーツがございます。これはグ◯コのプッ◯ンプリンです。本日、近所のスーパーで特売がございまして3個セットが98円でございました。安かったので沢山購入しております。如何ですか?」
プッチンプリンと聞いてララの眼が光った。庶民的なものに憧れているというプロフィールの情報を把握していて正解だったと胸をなでおろす金森だった。
「姫様。このプッチンプリンの食べ方をご説明します。カップの底についているこのポッチを折って空気を入れ、お皿にのせて食べる……のは邪道なのです」
「何だ、ではどうして食べるのだ?」
「これはですね。封を剥ぎ取って、その中にスプーンを直接差し込むのです。底のカラメルを最初に攻略するか、最後まで温存するかは姫様の自由です。さあ、さあお召し上がりください」
震えながらスプ―ンを握り、プリンをほおばるララ姫であった。ササっと一個食べるとすぐにお替りを要求してきた。
「金森氏。これは最高だ。もう一つ良いかな?」
「どうぞどうぞ。プリンだけではありませんよ。フルーツヨーグルトにミックスフルーツゼリー、ポテチにキットカットにおっとっとにたべっこどうぶつなど、姫様の為に大量に購入しております。心置きなくお召し上がりください」
「金森氏。貴方という人は……」
目に涙を溜め金森の両手を握り締めるララであった。
そこへマユが入って来る。
「あら、ララさん良いものをお召し上がりですわね。ほどほどにしないと夕食が食べられなくなりますよ」
「はい姉様。この一個でおしまいにします」
「あら、おやつも沢山。金森さん。ありがとうございます」
「どういたしまして。この程度、お安い御用です」
それはそうだろう。スーパーで特売のプリンやゼリー、チョコやスナック菓子を買ってきただけでこんなに喜ばれるとは思いもしなかった。
傍らでは暗殺用の自動人形ソフィアが装備のチェックをしている。食料や水、テントと寝袋、キャンプ用のコンロや燃料、食器など。武器はサバイバルナイフ2本と光剣、日本刀だけである。これでは心もとないと金森は考えた。
「拳銃やライフルなどを用意いたしましょうか?」
プリンを食べているララに代わってマユが返事をした。
「それは結構です。ララさんの体格で扱える銃器など役に立ちませんし、ソフィアではとても扱えません。ララさんが気分よく元気でいる事が最大の戦力であり武器なのです。その事を勘違いされませんようお願いします」
「そうだった。そうですね。分かりました。では移動は明日の正午となります。それまではご自由にどうぞ」
「分かりました」
一礼をして金森が部屋を出ていく。
一つ残ったプリンに手を出そうとするララはマユと目が合いその手を引っ込める。
「姉様。こちらのプリンをお召し上がりください」
気まずそうにプリンを譲るララ。
マユは笑顔でそれを受け取った。
時間は過ぎていき、翌日の正午、ララが戦場へ転移する時間となった。
金森は背広ではなく緑系の迷彩服を着こんでいる。そして軍用のヘルメットも被っていた。
マユもソフィアもララも皆迷彩服で固めている。ララだけ半袖で巨大なリュックを背負い日本刀も背負っている。
「ところで金森様。ソフィアはその姿のままで良いのでしょうか?」
「はい結構です。戦闘には関係のない自動人形で、ララ様の装備品として登録してあります。問題ありません」
「それは良かった。それからソフィアさん。おやつの開封に関しては私との約束を守って下さいね」
「承知しています。お任せください」
荷物になるからとおやつを半分にされ、一度に食べないようにとソフィアに一回の個数を制限させたのだ。マユの差し金であったが、ララは何故かマユの言う事だけはよく聞く娘だった。
「ララ様このインカムを装備してください。それとベルです。くれぐれもなくさないようお願いします」
小型マイクの付いた片耳のインカムとコイン型のベルを吊るしたペンダントを受けとる。ララはインカムを右の耳に取りつけ、ペンダントを首にかける。
「ではこちらへお進みください」
金森が示したのは大きい円筒状の特殊な装置だった。これで戦場へと転送するのだろう。
「行先は既定の戦場内です。着地はランダム設定ですのでどこに降りるかは不明です。地図端末をお持ちですね。それを常に確認してください」
「戦闘する相手はヴィランと呼ばれる社長候補の代理です。前にも説明しましたが、なるべくベルを破壊して失格させる戦い方が高ポイントだと思います。ヴィランとの闘いに関しては双方の承諾が必要とされます。承諾の確認が済んだ後カウントダウンが始まり戦闘開始となります。不意打ち闇討ちはありません。しかし、現地の盗賊や犯罪者、代理のヴィランを支援する雑兵エネミーの存在もあります。こちらは承諾なし、カウント無しでいつ戦闘に突入するかは不明です。十分にお気を付けください」
ララは頷いた。
「全て私に任せよ」
そう言って転送装置の中へ入る。ソフィアがそれに続く。
12:00ジャスト。転送装置が光り輝きララとソフィアはどこかへ消えてしまった。
社長戦争の戦場へと転送されたのだ。
「さあ、オペレーションルームへ行きましょう」
「ええ」
金森とマユがオペレーションルームへ向かう。
今、異世界社長戦争が始まろうとしていた。
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