26話 私は今クエストを受注します
冒険者ギルドを出た後、
「やっぱりクエストとか受けたほうがいいかなー」
「魔魂は小さいものを多く集めるよりも大きいもの1つのほうが価値があると聞くからの、大物を狙うのでもよいのではないか?足を引っ張るようであればワシらは後ろで見ておるでの。なぁテン?」
「うん。今回のボスもそうだったけど正直クロ1人で余裕だよね」
「えーなんか寂しいじゃんせっかくパーティーなのに...」
「まぁ、1つの案じゃ。考えておいておいてくれ。その時は戦えぬ分色々と頑張るでの」
「え?色々してくれるの?」
黒は手にしていたパンを投げ捨てんばかりの勢いで視線をレェーヴへと顔を移す。
「別に変なことはせんぞ...」
「変なことってなにかな?」
ニタァっと黒がレェーヴへと笑いかける。
「その顔ムカつくのぅ...」
「デュフフ...」
「な、なんじゃその気持ちの悪い笑い方は...」
本気でレェーヴが引いているようなので、ふざけるのはここまでにしておこうと黒は顔を普通に戻す。ちなみにシュテンはこちらの様子をちらちら確認しつつご飯に夢中だ。
「本題に戻すけど、明日はクエストを受けてみよっか」
「そうじゃの」
「いい?シュテンちゃん?」
「もぐもぐもぐ!」
「テン、口の中の物を食べ終えてからで大丈夫じゃぞ」
「...ゴクン、うん、大丈夫」
「じゃあ決まりだね」
こうして明日の予定が決まり、話は真面目な話からどうでもいい話へと変わり、談笑しながら食事を楽しんだ。
◯●◯●
次の日、日課である水浴びを済ませた黒達は冒険者ギルドを訪れていた。クエストを受けるためだ。
「どれがいいっかなー」
クエストの内容が書かれる紙が多く張り付けられているボードを眺めながら黒は考える。今日はレェーヴとシュテンも一緒だ。シュテンの鼻には紙が詰めてある。酒酔い防止だ。
「いっぱいあるね」
シュテンが鼻声で話しかけてくる。見た目風邪を引いてしまった子供なので可愛らしい。
「そうだねー。でもやっぱりDランクのクエストじゃ報酬微妙だねぇ...」
冒険者ギルドに正式登録されたパーティーにはランクが設けられ、黒達は最高SSSまである中のDランクにあたる。
「受付の者に聞いてすぐランクが上がりそうなクエストを見繕ってもらったらどうじゃ?」
「それいいかも、いこいこ」
レェーヴの提案で黒達は受付嬢の元まで足を運ぶ。
「というわけでして、何かありますか?」
「そうですね...少々お待ちください」
黒から話を聞いた受付嬢は手元の書類をパラパラとめくる。
「ちなみに、これまで倒したダンジョンのボスで一番レベルが高い魔物は何ですか?」
「えっと、グリーンボールです」
「なるほど、あれを倒されましたか...それではこちらはどうでしょうか」
そう言って受付嬢は1枚のクエスト紙をこちらに手渡してくる。
「冒険者になりたての方々が集まってパーティーを結成することがあるのですが、そういう方々に限って自分たちのレベルに合わないクエストを受けようとするんですよね...そのためこれはボードには張り付けてないクエストなんです。Cランク相当なのですが、上からの指示でDランクのクエストとなっていますので、これがこなせるのであればCランクへはすぐに上がれると思いますよ」
確かに最初の頃というのは何事もテンションが上がるもんなーと黒は思いながら話を聞いていた。よく黒も初めてプレイするゲームでいきなり難易度の高いステージや敵に挑み、負けまくっていたことを思い出す。
「不審人物(魔物)の捕縛あるいは討伐...不審人物?」
黒は渡されたクエスト紙に書かれた内容に首をかしげる。
「はい。この国から北東に3日ほど歩いたところに音無しの森という場所があるのですが、そこに入った冒険者がみんな何者かにボコボコにされているらしく...今のところ亡くなった方はいませんが結構酷い有様みたいで。やられた人が言うには気付いたらやられていたとかそういう話ばかりで、詳しいことは分からないんです」
「なるほど...どうする?」
「報酬はいいのかの?」
「金貨1枚と銀貨5枚だって。Dランクのクエストにしては破格だよね」
「そうじゃの、ワシは別にそれでもよいぞ」
「私も」
レェーヴとシュテンの了承を得たので、クエストを受けることにする。
「じゃあ受けます」
「有難うございます。正直ちょっと困ってたんですよ、このクエストの報酬がいいのはやられた冒険者の方々が敵を討ってほしいとラタを寄与されていったからなので、出来るだけ早く解決してもらいたかったんです」
Dランクのクエストにしては報酬がいいなと思っていたがそういうことかと納得する。恐らくこんな確証もないことにDランクよりも上のランクのクエストとして張り出すのものギルド的には微妙だったのだろう。しかし、受けたDランクパーティーの人達は総じてやられて帰ってきた。それで扱いに困っていたというところだろう。
「それでは、あなた方に楽しき日々があらんことを」
受付嬢のその言葉を聞き、冒険者ギルドを後にする。毎回別れ際に言われるので何かと聞いたら、神界にいるとされる神の教えらしい。宗教みたいなものか。確かアリシアも言っていたような気がする。
「早速出発しようと思うんだけど、なにか準備するものとかある?」
「ワシは大丈夫じゃぞ」
「私も」
「じゃあ出発!」
そうして、黒達3人はクエスト・不審人物(魔物)の捕縛あるいは討伐を達成すべく、歩き出すのだった。
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