25話 私は今初の宝箱を開けます
「この扉の先にいわゆるお宝ってやつがあるらしいね」
そう言って黒は扉を開けて、中に入る。ダンジョンで唯一宝箱が発生するのはボスを倒した先にある通称ご褒美部屋だけらしい。黒が言えたことではないが、ギルドでその名前を聞いた時はネーミングセンスに突っ込みを入れたくなった。
「思ったよりも小さい部屋だね」
シュテンが言う通り、ご褒美部屋は結構小さい造りであった。黒は部屋の大きさを言葉で表すのは得意ではないが、恐らく6畳ぐらいだろうか。目につくのは如何にも宝箱ですと言わんばかりの箱と、入るときにも見た渦を巻くゲートだけである。
「これが宝箱かの」
「そうみたいだね」
「罠とかないの?」
言われてみれば宝箱には罠もつきものである。職業に罠者というものがあったはずなので、確実に罠に関する何かはあるのだろうと想像できる。それが宝箱に対してか、ダンジョンに仕掛けられたものに関してかは現時点では分からないのだが。
「そういえばそこらへんは何も聞いてなかった...ごめん...」
「んー大丈夫ではないか?」
「レェーヴちゃん分かるの?」
「獣の感というやつじゃ」
「な、なるほど...」
レェーヴが尻尾をもふもふさせながら言う。基本的にこういったほかの人に見られる心配がない場所では、尻尾などを隠すようなことはしていない。その方がやはり楽らしい。シュテンも今は角を自由にさせている。
「じゃあ開けてみよっか...」
「うむ」
「うん」
意を決して宝箱に手をかけ、上に押し開く。鍵などは特に掛かっていない。
「おっ?....ん???」
宝箱の中には緑色のもさもさしたものが収められていた。宝箱いっぱいに。
「なにこれ?」
「おそらく先ほど倒した奴の皮じゃな」
「皮...」
「結構手触り気持ちいいよこれ」
シュテンが早速それを広げてもさもさしている。
「魔物の皮を剥ぐのは大変じゃからな、ボスはより困難じゃ。じゃから宝としてボスの何らかの素材が収められているのではないか?」
言われてみれば、ゲームのように素材がドロップするわけでもないので皮を取るのはかなり大変そうだ。死んでしまったら魔魂になってしまうので生きながら剥ぐことになる。
「そう言われると確かにお宝だ」
「じゃの」
「そっちのゲートは入口に繋がってるのかな?」
「おそらくそうじゃろうな」
「じゃあ今日のところは帰ろっか」
「うむ」
「うん」
黒はシュテンからグリーンボールの皮を受け取り、
◯●◯●
「1日でこんなに倒したんですか?凄いです!」
黒達はダンジョンを出た後、イルミールへと戻り、今は冒険者ギルドで魔魂の換金を行っていた。今日手に入れた魔魂の半分を出したつもりだったが、それで褒められるレベルだとは驚いた。
「普通はこんなに倒さないんですか?」
「そうですね、ここまでの数を倒して魔魂を集めて持ち帰るのは大変なので、だいたいは大きな魔魂を少数な感じですね。それよりもよくこんなに持ち帰れましたね?契車でも使ったんですか?」
契車とは黒の世界で例えると馬車のようなもので、魔物と契約し操ることが出来る者がその魔物を使い荷車を引くものだそうだ。街で何回か見かけたので、興味本位で聞いてみたことがった。
それよりも多く倒したのに驚いたというよりは、こんなに持ち帰るのが結構珍しいということだったらしい。
「いや、そんな大層なものじゃないですよ。あはは...」
空間魔法を使える人は少ないとレェーヴも言っていたし、出来るだけ喋らないほうがいいと判断し、黒は言葉を濁す。
「?是非どうやったのかお聞きしたいところですが、しつこすぎると嫌われてしまいますね。どうぞ、こちらが今回のラタです」
「有難うございます」
黒は受付嬢からラタ、この世界のお金を受け取りそそくさと冒険者ギルドから出る。今回も外にレェーヴとシュテンを待たせているのだ。
ちなみに得られたラタは銀貨6枚だった。思っていた以上に渋かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます