18話 私は今話し合いをします

 小夜世 黒さよせ くろたち3人は水浴びを終え、宿の部屋に戻っていた。


 「冒険者ギルドに行ってパーティー名を申請する前に、やりたいことがあるんだけどいい?」


 「なんじゃ?」


 「なーに?」


 「戦闘についての話し合いなんだけど」


 「あーそうじゃったな。やったほうがいいじゃろうな」

 

 「そうだね」


 「私がまず色々聞きたいんだけど、いい?」


 「よいぞ」


 「うん」


 「2人は私のステータスを知ってるから分かると思うけど、普通は1対1ならまず負けないじゃん?」


 「そうじゃのぉ。そこらへんの奴等なら傷を付けることさえままならんじゃろうな」


 「だね」


 「でもこの前の...えっと、強欲?って人にはボコボコにされたじゃん...?」


 「そうらしいの...ワシらは顔を上げることができんかったから詳しくは見れなかったが」


 「ね...本当にあの時は私のせいで...ごめんね...」


 「気にしないでよシュテンちゃん、もう終わったことだし、こうして無事だし...ね?」


 「うん、ありがと」


 「それでなんだけど、私は元々戦闘に縁のない世界からやってきたせいで近距離に張り付かれて上手くやられると魔法も使う暇もなくああなっちゃうんだなって」


 「そうじゃの、それはクロに限る話ではないがの。ワシだってそうじゃ。ヤツは相当の手練れみたいじゃったから、ちょっとした隙を見せるとは思えんしの。じゃから基本的に遠距離を得意とする者は何かしらの対策をしておる」


 「そうそう!そういうの聞きたかった!」


 「私はそういう知識に詳しくないから...レーちゃんにお任せするね?」


 「うむ。それでな、ワシの場合は戦闘が始まる前に自身に幻術を纏わせるんじゃ。そうすることで相手の認識をずらすことで魔法を放つ隙を作っておる」


 「なるほど...」


 「クロは何かそういうところで思いつく魔法はないか?自身で思いつく魔法のほうが修得しやすいのでな」


 「そうだなぁ...」


 黒はこれまでみたアニメや漫画などから、使えそうな魔法を思い出す。


 「そういえば魔法で壁みたいなの作るのは普通?」


 「障壁か。そうじゃの、使うものがおるにはおるな。じゃが白魔法じゃから使えるものが少ないの」


 「黒以外はみんな使えるんじゃないの?あ、魔法の色ね?」


 「大丈夫じゃ。分かっておる。それでな、クロの認識は間違っておるな」


 「結構自由って聞いたけど...」


 「自由という認識は間違っておらん。じゃが、黒以外の魔法を使えるかというと使えぬな。人によって扱えぬ色の魔法が存在するからの。ワシの場合は白、茶、緑が使えん」


 「使えないってどうやったら分かるの?」


 「そうじゃな、先ほど自由というたじゃろ?じゃからみな最初は魔法が使えると分かると色々と試してみるんじゃ。じゃが、どうしてもイメージ出来ているのに発動できない魔法が存在する。それで使える色を知るのが普通じゃと思うが、使える色が分かる魔道具なんかも売られているみたいじゃな」


 「そうだったんだ」


 「うむ。クロのその話しぶりじゃと、今のところは使えぬ色は存在せぬようじゃな」


 「うん。だいたい思いついたやつを出してるんだけど、今のところ全部出せてるかな」


 「あと、それもじゃ。イメージできた魔法を実践レベルで即使用できるのは結構異常じゃぞ。普通ならば、最初に発動できる魔法は緑であればロウソクの火を消す程度じゃ。イメージしたのが暴風であってもな」

 

 「なるほど...じゃあ私、天才ってことかな?(ドヤーん)」


 「その顔はむかつくが、まぁそうじゃな。イメージの積み重ね、魔法の試行錯誤をすることによって、本当に己が使いたかった魔法を行使することができるのが普通じゃ」


 「私は褒められて伸びるタイプなので」


 「う、うむ...凄いぞ...」


 「ありがと!」


 「オホンッ、それでじゃな、何でも即座に使えるというのであればここじゃ危ないのでな、ダンジョンに赴き色々試してみるのがいいと思うのじゃが。そこで話の続きもしたいの。陣形とかも話合わなければならんしの」


 「そうだね、私も色々と使えそうな魔法思いついたから試してみよっか。シュテンちゃんもそれでいい?」


 「うん。私、クロの魔法見たいな!」


 「そういえばまだ見せてなかったっけ」


 「一応見てないことはないがの」


 「?」


 「?」


 「まぁ口で説明してもクロの場合は分かりにくいからの、ダンジョンに行った時の楽しみにとっておくといい」


 「わかった!」


 「じゃあまずはギルドでパーティー名を登録して、丁度よさそうなダンジョンを聞いて出かけよっか。その前に何か買っておきたいものとかある?」


 「そうじゃな...短剣を一振り欲しいかの」


 「シュテンちゃんは?」


 「私は大丈夫。基本パンチだから」


 「なるほど...」


 「別れて行動してもいいけど、カーサイブリースのこともあるから一緒に行こっか」


 「そうじゃな。今日も一応街中では角と尻尾を隠しておくぞ」


 「よろしくね」


 「ありがとレーちゃん」


 話し合った結果、街中などの人が多い場所では外見的特徴を隠すことに3人は決めていた。

 魔量を消費するし、せっかくのチャームポイントなので黒は隠したくはなかったが、安全を取ったほうがいいに決まっている。


 このころから黒の内心ではカーサイブリースを殲滅することが決まっていた。慈悲はない。


 「じゃあ出発!」



 こうして3人は冒険者ギルドへと向かった。 

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