17話 私は今パーティー名を決めます
夕食を食べ終えた
「やっぱり個室は落ち着くねぇ」
「そうじゃのぉ」
「ですねぇ」
引きこもり体質3人による個室に入れたことによる安心のため息コーラスが起こる。
「じゃあパーティー名決めちゃおっか」
「そういえばまだ決めてなかったの」
「今のところは阿修羅だね」
「そ、そうだね...」
「う、うむ...」
「ちょっとかわいい感じがいいかも?」
「かわいいかぁー...例えば何かないの?クロ?」
「うーん...黒猫の屋敷...とか?」
「猫要素はどこから出てきたんじゃ...」
「可愛いじゃん?」
「かわいい...かの?」
「うーん...」
「え?2人とも、もしかして猫苦手?」
「おそらくじゃがクロの思っている猫とワシらが思っている猫は違うかもしれんぞ?」
「そうだね...私はあれを可愛いとは言えないかな...」
「そ、そうなんだ...そういえば街中とかで見かけないなぁ」
「あんなのが街中におったら事件じゃぞ...」
「いっぱい人が死ぬね...」
「えぇ...」
どうやらこの世界には黒の知っている猫はいないらしい。黒は動物全般が好きだが、モフれる動物はもっと好きなのだ。なのでそれを聞いてがっかりしたが、今はレェーヴがいるので我慢できそうだ。
「そんなことより名前じゃ。やはり適当でよいのではないか?こういうのはパパっと決めたほうが良いものであったりするぞ?」
「そうだね...レェーヴちゃんがパパッと決めるとしたらどんな感じ?」
「ワシか...そうじゃな、クロの家、かの」
「えぇーなんかそれ恥ずかしいよー」
「クロがおったから今こうしてみな揃っていられるんじゃ。別に悪くないと思うんじゃが」
「レーちゃんそれいいかも!」
「えぇー...」
「2対1で決まりじゃな。よしこの話は終わりじゃ」
「ずるい!うそー!やだぁー!」
内心ちょっと誇らしいが、それをギルドに報告するときや他のパーティーに聞かれたときの反応を想像すると恥ずかしすぎる。それだったらまだ阿修羅のほうがいいかもしれない。
「駄々をこねる子供か...ほれ、尻尾を触らせてやるから寝るぞ」
「そうだよ、もう決まったんだから一緒に寝よ?」
「....寝よっかー!」
少し考えたが、上目遣いのシュテンからの申し出に屈してしまった黒だった。
◯●◯●
朝になり、日課の水浴びを3人でしている。そういえば3人一緒にするのは初めてだ。ちなみに、外でフルオープンでやっているわけではなく、宿の設備に水浴び場があり、きちんと周りが囲まれて外からは見えなくなっている。
「シュテンちゃん...」
黒は無言で手を差し出す。
「?」
シュテンはよくわからないながらも、握手に応じる。
「はぁ...」
その様子を傍から見ているレェーヴはため息を溢した。
「やっぱりシュテンちゃんは見方だったんだね...レェーヴちゃんには裏切られたから...よかったよ...」
しみじみと黒はシュテンに語り掛ける。
「???」
シュテンはなんのことか分からずにひたすらはてなマークを頭の上に浮かべる。
「胸の大きさのことじゃぞ、テン」
「あぁー。確かにレーちゃん胸結構あるよねー」
「クロはそれを妬いておってな」
「なるほど」
「シュテンちゃんはもしかして気にしないタイプ?」
「うーん...その人の良さは胸の大きさじゃ決まらないから、ね?小さいのもいいし、大きいのもいいんだよ」
そういうシュテンは満面の笑みで。黒の汚れた心を焼き払わんとこちらに光を放ってくる。
「ぐぁぁあああ」
「なにしとるんじゃ...先にいっとるぞ」
「私もー」
そう言って2人は部屋から出ていく。
「....」
1人残された黒は空を見上げる。水浴び場の上には屋根がないので空が見える。天界の下の層、つまりここから見える天井は青いらしく、普通に青空に見える。
「いくか...」
1人でいると、学生をしていた頃の気持ちをついつい思い出してしまう。あの頃はこんなに綺麗に空が見えていなかった...と思う。人は心に活力がないと、見える世界は色あせる。あの頃の私はまったくもってそれだった。
「待ってよ2人ともー!」
黒は灰色の感情を振り払うように、頭を振り、レェーヴとシュテンを追いかけた。
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