15話 私は今親睦を深めます
「じゃあまずはパーティー名決めちゃおっか」
「そうじゃの」
「なんかいいアイデアとかある?」
「ワシはなんでもよいと思っておったからの...」
「シュテンちゃんは?」
「えっと.........................」
「思いつかなかったら無理に出さなくてもいいからね」
「あ、1つ思いついた.....です」
「お?、なになに?」
「阿修羅...とかどうでしょう...です」
「あ、あしゅら....」
「ワシらそんなに鬼気迫る顔しとるかの...」
「あ、ダメでしたら...いい....です....」
「ダメっていうか、うん!いい名前だね!候補に挙げとこっ?ねっ?レェーヴちゃん?」
「そ、そうじゃの...強そうで良き名前だと思うぞ?うむ」
「よかった....です」
「クロはなにかないのか?」
「うーん...」
こういう名前にはついつい凝ってしまう。ゲームを始めるときの主人公の名前はいつも使っていたハンドルネームみたいなものがあるので早いが、パーティー名は別だ。1週間かけて決まらなかったことがあるほどだった。
「うーん...」
「これは先にこれからの方針を決めたほうが良いのではないか?」
「そうだねー。そうしよっか」
「うむ」
「はい」
「私はしばらくこの街でクエストを受けたり普通にダンジョンに潜ったりしてお金を貯めてから、層ダンジョンを上って天界に行こうかと思うんだけど、どう?」
「そうじゃの、いきなり層ダンジョンに挑むのではいくらクロが強くても危なかろう。じゃからその方針に賛成じゃな。特にワシはやりたいことはないしの」
「私も賛成...です。あと....クロさん....ってそんなに強いの....です?」
「そういえばシュテンちゃんとはステータス見せ合いっこしてなかったね」
「そういえばそうじゃの」
「ちょうどいいししちゃおっか」
「そうじゃの」
「はい」
そういって、まず黒とシュテンが額を合わせる。ちなみにシュテンの角は額上からではなく、頭の左右から生えているので、ぶつかることはない。
「いきます...」
「うん、大丈夫」
そう受け答えした後、黒の額が少し熱くなるのを感じる。レェーヴの時と同じだ。そして、そのあと黒の脳内にシュテンのステータスが浮かぶ。
シュテン Lv.24
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
筋力:98
魔力:0
魔量:0
精神力:78
物理耐久力:73
魔力耐久力:29
俊敏力:45
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
スキル:狂化A
特殊パラメータ:筋力補正50
:物理耐久力補正50
「おぉー。さすが鬼って感じだね」
「ありがとう....です」
「典型的な前衛タイプじゃな。クロはどちらかというと後衛向きじゃし、ワシは中衛タイプじゃから丁度いいパーティーじゃな」
「たしかに凄い巡り合わせだよね。それじゃ今度は私のステータス送るね?」
「はい」
そう言ってシュテンは額を差し出してくる。
「ゴクリッ」
「なに生唾飲んどるんじゃ...さっさとせんか」
「分かってるよぅ。よいしょっと」
そう言って、シュテンの額に黒は自分の額をくっつける。しばらくして額が熱を持つ。
「なんかこれ....おかしい...です?」
「それで合っておるぞ、テン」
「でも...私より...力つよい...」
「まぁ、そうそうおらんじゃろうな...」
「それに...魔量とか...」
レェーヴにはそれとなくこれまでの経緯を話していたのだが、丁度いい機会だ。2人にちゃんとこれまでのことを聞いてもらおう。そう決めた黒は2人にこの世界に来た経緯を話した。
「にわかには信じられんがの...まぁ色々と見せられておるしの、信じるぞ」
「私も...クロさんは嘘つかないって...思うから」
「ありがと2人とも」
あっさりと受け入れてくれたことに戸惑いつつも、2人の暖かな思いやりを感じて頬が緩む。
「レーちゃんのも見せて?」
「よいぞ」
そう言って2人はステータスの見せ合いを始める。
(シュテンちゃん、レェーヴちゃんと話すときはあんなにたどたどしくないんだけどなーちょっと寂しいなー)
そんなことを思いながら2人を見守る。
「レーちゃん...ごめんね、私のせいで...」
どうやら、シュテンはレェーヴのレベルの高さからこれまでのことを察したらしい。
「もう過ぎたことじゃ、こうして今は楽しい。それでよい」
「うん...本当にありがとね、レーちゃん」
「うむ。....で、何を膨れておるんじゃ」
「なんかいいなーって。混ぜてほしいなーって」
「まるで子供じゃの...」
「子供心を忘れないのが楽しく生きる秘訣だと私思うんだよね」
「まぁそれは分からんでもないがの」
「だから今日は3人で並んで寝ようね?」
「しょうがないの...」
「喜んで...」
ズガンッ!!!
「ちょっ!?クロ!?」
黒はというと、シュテンの言葉を聞いて頭から思い切りテーブルに突っ伏していた。
「ごめん、なんでもない」
「なんか最初に合ったときと随分と人が変わっておらぬかおぬし...」
「それだけ気を許してるってことだよレェーヴちゃん」
「まぁ...良いことと捉えておこう...」
決して嘘ではなかった。家族の前ではこんな姿見せられないし、かといってこれまではこんな姿を晒せる友人はいなかったのだ。まさか自分でもこんなになるなんてと少し驚いているぐらいだ。
「あの...クロさん」
「ん?どうしたのシュテンちゃん」
「......」
「?」
「私も
「もちろんだよぉシュテンちゅあん!!!」
「うん、ありがと、クロ」
ズガンッ!!!
「もうそろそろ店を追い出されるぞクロ...」
「こ゛め゛ん゛....」
「ふふっ」
そんなことをしていると、料理が運ばれてくる。まず、黒の頼んだマルヴァンヌ、次にレェーヴの握り飯と野菜盛り合わせ、シュテンのムーポの丸焼きはまだ少し時間がかかるようだ。
結局まだパーティー名は決まっていないが、3人の仲がより縮まったことを感じる。黒の心は温かい気持ちでいっぱいだった。どうやら、2人も同じ気持ちのようだった。
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