13話 私は今パーティーを結成します

 「冒険者登録ですね?3人ですか?」


 「いえ、私以外の2人でお願いします」


 今、小夜世 黒さよせ くろ達は冒険者ギルドの2階で冒険者登録手続きをしていた。


 「かしこまりました。役職はお決まりですか?」


 「そういえば、そんなものもあったかのぅ。決めておらなんだ」


 「そういえば...シュテンちゃんも寝てるし」


 「よろしければ未定でも大丈夫ですよ。役職を得たい場合には、基本役職であれば冒険者ギルドへ、特殊役職であればその定められた方法と場所で行って頂ければ。ちょっとした自己紹介の役割ですので、パーティーを組まれている方でしたらあまり意味はないと思いますから」


 どうやら役職は名刺のようなものらしい。私はこんなことが出来ますと周りに示すことによって、パーティーを結成する際や共闘する際に役立てるのだという。


 「じゃあそれでお願いします」


 「かしこまりました」


 「あっ、それとレベルを見られたくないのですが...」


 レベル50を超える冒険者はギルドが確認している限り3人らしい。しかし、この前戦ったあの男は確実にレベル50を超えた強さであったし、レェーヴも超えているので公言していないだけで恐らく一定数はレベル50超えのいわゆる極級は存在するのだろう。

 だが、レェーヴのレベルを見れば少なからず話題になってしまうと考えられるので、カーサイブリースの件もある。隠しておいた方がいいだろう。


 「それでしたら、この判子をお渡ししますので、押した後消していただければ」


 「有難うございます」


 そういって、ナルタでエユエが黒に押したのと同じ判子を渡してくれる。


 「レェーヴちゃんはどこに押す?」


 「クロはどこにしたんじゃ?」


 「私は右手の甲だよ」


 「じゃあワシもそれでいいかの。シュテンもそれでいいじゃろ」


 「そうだね。じゃあ押しちゃうねー」


 そういうと黒はレェーヴとシュテンの手の甲に判を押していく。

 すると、2人に丸で囲まれた数字が浮かび上がってくる。


 「そういえばレェーヴちゃんのステータスは見せてもらったけどシュテンちゃんのは見せてもらってないや」


 「ワシもじゃな」


 そういって2人でシュテンの数字を確認する。


 「24かー。結構レェーヴちゃんと違うね」


 「ワシの場合は囮になってから色々とあったからの。テンはずっとあの山に籠っておったらしいからの、こんなものじゃな」


 レェーヴはさらりと言うが、レェーヴのレベルは68。シュテンと44も違うのだ。それだけでレェーヴがどれだけ大変な人生を歩んできたのかが分かる。

 ついついレェーヴの頭を撫でてしまう。


 「なんじゃいきなり...」


 「なんか撫でたくなっちゃって」


 「まぁ減るものでもないし別によいが...」


 そういうレェーヴの顔はまんざらでもなさそうだ。


 「そういえばシュテンちゃんのマーク消せないね」


 「ワシの神隠しで隠しておく」


 「ありがとレェーヴちゃん」


 「終わりましたか?」


 「はい。有難うございます」


 「この後パーティー登録もされていきますか?」


 「そんなものもあるんですか?」


 エユエにはパーティーについて聞かされていなかったので、知識がない。


 「はい。どちらかというと、冒険者はパーティー登録のほうが重要ですよ。個人がいくら優秀であろうとも、数で押されればそれまで。万能ではありません。なのでパーティーの強さがクエスト依頼などに関わってきます。パーティーでしか受けられない依頼も多いですからね。もちろん、個人の強さを見る方々もいますが、基本冒険者の方はレベルを隠されているのでやはりパーティーでの活動が冒険者での活動では主軸ですね」


 そう言われれば確かにそうなのかもしれない。一騎当千という言葉もあるが、この言葉通りの強さを誇る人はそうそういないだろう。そうなるとパーティーとしての強さを指標にする流れになるのかもしれない。


 「ということは、パーティーにも極級とかみたいにランクがあるんですか?」


 「はい、ありますよ。最初から順番にE、D、C、B、A、S、SS、SSSとなっています。こなしたクエストをギルドが査定して、それに見合ったランクに昇格致します。もちろん、降格もありえます」


 「明確な昇格基準とかは開示されてるんですか?」


 「申し訳ありません。そちらは非公開となっています。ですが、難易度の高いクエストを受ければそれだけ昇格しやすいのは確かですよ」


 「なるほどです」


 「それと、パーティーランクに応じていろいろと特典がありますよ。一覧表はギルド脇のボードにあるので確認してみてください」


 「わかりました」


 「では、パーティー登録をなさるということで宜しいですか?」


 「お願いします」

 

 「ではこちらに記入をお願い致します」


 渡された紙には、構成人数や各メンバー名、パーティー名などがある。


 「そういえばパーティー名どうしよっかレェーヴちゃん」


 「ん?適当でよいのではないか?」


 「えぇー」


 「そう言うてもの...」


 「このパーティー名は後ででも大丈夫だったりしますか?」


 「クエストを受ける前までに申請頂ければ大丈夫ですよ。無名のままでは査定対象外となってしまいますので」


 「じゃあパーティー名はシュテンちゃんが起きてからみんなで話し合お」


 「それがよいかの」


 そういうことで、パーティー名以外の記入を済ませ登録用紙を受付嬢に返す。


 「はい、承りました。パーティー名に関しましてはまたこちらに来ていただければ対応致します」


 「有難うございます」


 「あと、ちょっと聞きたいんですが...」


 「なんですか?」


 「カーサイブリースって知ってますか?」


 そう黒が受付嬢に尋ねると、受付嬢の表情が曇る。


 「何かありましたか?」


 「ちょっとだけ...」


 「彼らは闇パーティーの1つです。闇パーティーというのは名前からも分かるかとは思いますが、良くないことをする方たちで構成されたパーティーです。奴隷ではない人の人身売買や臓器売買、密漁に殺人何でもありです。その中でも構成員のレベルが高く手が付けられないパーティーがカーサイブリースです。各国で兵をあげて討伐隊を編成したりしているのですがなかなか...」


 そんなに大々的に名が知れ渡っているとは...聞く限りなかなかに厄介そうだ。それにさらりと言っていたが、奴隷制度があるらしい。実に異世界っぽいが、やはり奴隷と聞くといい気分にはならない。


 「大丈夫でしたか?」


 「なんとか」


 「よかったです...彼らに殺された冒険者は数え切れません。お気をつけ下さい」


 「有難うございます」


 そういって、一旦黒達は冒険者ギルドをあとにする。


 「今後もカーサイブリースが2人を狙ってくるかもしれないから注意だね...」


 「そうじゃの...やはりそうなるとこの尻尾はちと目立つかの」


 そういうと、ポンッという音と共にレェーヴのお尻から尻尾がなくなる。


 「なんかもったいないなぁ...」


 「もったいないってなんじゃ」


 「せっかく綺麗なのに」


 「そういうことを平然と言うでない、照れるじゃろ...」


 「照れてるんだ?」


 そう言ってにやにやしながらレェーヴの顔を覗き込む。


 「言わんでもお主にはわかるじゃろうが!」


 「怒んないでよー」


 「怒っとらん」


 「怒ってるじゃんー」


 「怒っとらんわ!」


 「もー」


 そんなやり取りをしながら、2人は宿に戻るのだった。 

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