第3話 襲撃
老人とカナタが去った直後、馬に乗った騎士団がやってきた。
「子供はどこだ。隠すとためにならんぞ。」
馬の上から、団長らしき男が恫喝する。
「あの子は街に買い物を行って帰ってきていません。あの子に何の用です。」
母親は扉の前に仁王立ちした。
「家の中か。踏み込め!」
団員たちは馬から飛び降りると、剣を振りかざして家の中に飛び込んだ。
「ドン!」
扉が閉まると同時に、家は轟音を立てて炎上した。中にいる団員たちは紅蓮の炎に包まれながら飛び出してきた。外に残っていた団員たちが助けようと入り乱れる。その中に男の子の両親の姿は無かった。
「器は見つかったか?」
城の中では、部屋の奥の豪華な椅子に座る主であろう男の問いに、戻ってきた騎士団の長は怯え言葉を詰まらせた。
「役立たず目が!」
主は、ただ小さく震え続ける男をののしった。
「まあ、よい。やつらに他の器も探させるとしよう。いずれは予言の地にやってくるのだから。」
下がうとする騎士団長に主は
「だれが帰ってよいといった。」
と一喝した。
「ペットのドーガンの夕食がまだだったな。連れていけ。」
主の命令に
「どうか、今一度、機会を。サタドゥール様。」
叫ぶ団長を、その後ろに控えていた騎士たちが引きずりながら部屋を出て行った。
カナタを連れ去った老人は、街から離れた崖の上の洞窟にいた。夜があけるとカナタを起こした。
「家が襲われた。」
目をこすりながら出てきたカナタは、老人の言葉に
「父は!母は!」
と詰め寄った。
「おそらく無事じゃ。彼らには生き残る術を数多く教えてある。彼らにはまだ役目がある。その時まで何としても生き延びてもらわねば。」
老人は崖からやってきた方を見回して、ぼそりと言った。
「わしはゼノ。しがない老人じゃ。」
「父はあなたにも植物の声が聞こえるといいました。」
カナタは静かに老人に尋ねた。
「ホラムのやつ、そんなことまでしべったのか。わしには聞こえんよ。じゃが、時々感じるのじゃ。おそらく植物たちが何かを伝えたいときにだけ。お前には聞こえるのか?」
「風のざわめきと共に、彼らの言葉を感じます。」
カナタは眼下に広がる森を見つめながら答えた。
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