普段から怪獣好き、怪獣マニアを自称してはばからぬ氏の、アニメ版ゴジラを語るエッセイ。その内容は、氏らしいマニアックで怪獣ファンならではの視点に満ちたもの…重箱の隅をつついてほじくり出す、ある種のマニア向けの高密度、高濃度なものだと勝手に思ってました。
でも、違う。
これは違う。
違うというよりも、超えている。
ゴジラを知らない人、怪獣映画に興味を持っていない人へ向けての、怪獣玄人だからこそ示せるエクスキューズに満ちている。決して同じ趣味の者同士で楽しむ、一種の専門的なムックではない。入門書にしてもいいし、同じ怪獣好きとして新たな解釈や視点を求めてもいい。そんな文章に感じました。
今、ゴジラを始めとする特撮文化が、世界中で支持され、愛されています。そんな中、怪獣王を自称するゴジラが、あえてアニメという媒体で展開され始めた。これは『事件』で、氏はそこに切り込み『現実』を切り取ろうとしている。気軽に読めて、深くはまれる、そんな文章が期待できる作品です。