第8話 ソーマのお買い物

「ところで今日は何を買うんですか?」


カグラがソーマに聞く。買い物当日。今日はカレンもお休みを貰い、4人と一匹で買い物に出かける。


「うーん、まずはアリサに言われた服かなー。後は、専門の魔導書も欲しい」


魔法とは、知識の上に成り立ち、魔力も知識に比例する。ソーマはこれからのために、知識を増やすことを目標にしている。


「カグラは?」


「私は特にほしいものはありませんが...」


「そんなこと言わないで、何でもいいんだぞ」


「しいて言うなら、王都のおいしいものを沢山食べたいですかねー。一人だと入りづらいお店もありましたし」


「じゃあ、カグラの行ってみたいお店に行ったり食べ歩きしたりするか!」


「はい!」


二人は家を出て、集合場所に向かった。どうやらアリサとカレンはまだ来ていないようだ。


「それにしてもソーマさん。そのスライムさんは私を助けてくれた時にスライムらしからぬ動きをなさってたんですが、何者なんですか?」


ソーマに抱かれる感じで胸の中に納まっているラムネを見てカグラが問いかける。最近ラムネはこの位置が気に入っているようである。


「こいつラムネっていうんだけど、俺の魔法学園の卒業試験で召喚されたんだ。最初はただのスライムだと思ってたんだがどうやらそうでもないみたいでな…詳しいことは俺にもさっぱりなんだ」


「そうなんですか…でも、ソーマさんのような一流魔術師の召喚にこたえるなんてお目の高いスライムですね」


カグラの素の賞賛にソーマは苦笑いする。


「ソーマ―!!お待たせ―!!」


そんな会話をしていると、アリサとカレンが到着した。


「アリサたちはもう買うもの決まってるのか?」


「もちろんよ!」


「よし!じゃあ行こう!」


ソーマ一行は露店の並ぶ街へ出発する。


「ソーマさん!これ!牛串!食べたいです!!」


「ソーマさん!!!焼きそば!!」


カグラの旺盛な食欲を見て一行は苦笑いする。まずたどり着いたのは、服屋である。日常生活で使える服から冒険にもってこいの衣装まで何でも取り揃えている。


「お兄ちゃん!見てみて」


カレンは、食堂で着る服を選んでいた。今の服もいいが、新しいスパイスを加えたいということだった。


『メイド服なんて最高よ』


アリサママにおすすめされていた。

お兄ちゃんはいかがわしい服は許しません!


カレンが選んだのは、そこまで主張の激しくないメイド服だった。普段着のような落ち着きもありながら、お客さんのハートもキャッチできそうだ。


「やっぱりかわいいよー。カレン」


ソーマのハートはがっちりキャッチされたようだ。


「ソーマ!!私はどうかしら」


アリサが着てきたのは、軽量化のために露出が多めになった装備である。露出は多いものの、最新素材を用いて強度にも富んだ優れものである。


なぜこんなものを選んだかというと、カレンに「お色気作戦でお兄ちゃんを落としちゃえ」というアドバイスをもらったからである。


しかし、この装備はソーマに冒険中に集中できないという理由で却下されてしまった。渋々、アリサは普通の装備にすることにした。しかし、軽量の素材が気に入ったということもあり、若干の露出は大丈夫ということで、素早い動きを可能にする装備を購入したのである。


カレンは今の衣服が気に入っているため、新しいものはいらないといったが、折角だからとアリサに促され、東の国の衣装である着物というものを購入した。


「カグラちゃん似合ってる!」


「大人な雰囲気が出てるぞ」


なんて言われて、


「えへへぇ、まだ15さいですよう」


と、非常に嬉しそうである。


さて、そうしてソーマの衣装選びが始まった。

今の衣装は、ところどころほつれや擦り切れがある。魔法学園時代から着ていたものであり大事に使ってきた。


「こんなのどうかな」


カレンがシルクハットとスーツを持ってきた。


「こっちもいいわよ」


アリサは魔力増強布で作られたローブを勧める。


「どうでしょう?」


カグラは袴という衣装を持ってきた。


「みんなありがとう。でも俺は、やっぱりこれにするよ」


そういってソーマが手に取ったのは今着ているのと同じ、普通のローブであった。


「どうして?もっといいのも買えるのに?」


アリサが聞く。


「俺は、お金を稼ぐために安いローブを身にまとい魔法学園の門をたたいた。そして今、ここにいる。その初心を忘れないためさ」


お金を稼ぐためにソーマがしてきた努力、それを忘れずこれからも努力していく。その意志の表れであった。


衣服を購入し、一行は服屋を後にする。


相変わらずカグラは底知れぬ食欲で露店巡りをしている。


「ちょっと寄ってくから、先行っててくれ」


そういってソーマが立ち寄ったのは書店であった。まだ知らない魔導書を探し店内を散策する。

ふと、ソーマの目に留まる魔導書があった。表紙はところどころ剥がれてしまい。中も相当古い紙が使われている。


「ふぇっふぇッふぇっふぇ、魔術師のお若い方。その本に目をつけるとはお目が高い」


びっくりして振り返るとそこには老婆が立っていた。


「今なら無料でさしあげますぞ」


老婆が言う。


「えっ?でも...」


「中を見てみなされ」


ソーマはページを開く


「これは…」


「その本は現代では失われた古代文字で書いてありますのじゃ。ゆえに、誰も読むことができぬ」


「でもただで貰うわけには」


「では最新の魔導書を買っていただけばいいですじゃ」


「あ…ありがとうございます」


ソーマは困惑しながらも礼を述べる。


「頑張りなされ魔術師殿。その魔導書はおぬしが本気で求めた時に力を与えるじゃろう」


その言葉を、ソーマはこの魔導書から知識を得るためには古代言語を解読する努力が必要という意味で受け取ったのである。


「もー、ソーマ、待ちくたびれたんだからね」


ソーマはアリサたちに合流する。


「悪い悪い。で、次はどこに行くんだ?」


ソーマが聞く。


「アリアちゃんと話し合って、みんなでおそろいのものでも買おうかなって話になったんだ」


カレンが答えた。


「よし!じゃあアクセサリー店に行こう」



「このペンダント可愛い!!」


「お兄ちゃんこれにしよう」


そこには魔石のついたペンダントがあった。魔石の効果で魔力の底上げにもつながる優れものだ。


「いいんじゃないかな」


「すみません、このペンダント4っ…」


ソーマがそう言おうとしたところで、ラムネがしゅんとしていることに気づく。ソーマは改めて言い直した。


「このペンダント5つください」


「お待ちどうさま」


こうして各々がペンダントをつける。ラムネは体の中にペンダントを取り込んだ。


「私たち絆の証だね」


「うん」


「ああ」


「はい」


ぽよよーん


彼らのお買い物は大変有意義なものとなったようである。

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