第7話 試験結果

「それにしても、なんでカグラは冒険者なんてやってるんだ?」


ソーマが聞いた。ソーマたちはリーフェ村を目指して移動中だ。


「答えづらかったら無理に答えなくていいぞ」


口ごもるカグラを見て、ソーマは失敗に気づく。


「い、いえ、そんなに言いづらいことでもないです」


カグラは説明を始めた。


「私の両親は、私が幼かった頃に私の前から姿を消しました…」


彼女の話を要約するとこうである。彼女は幼くして両親が行方不明になり、祖父母に育てられた。14歳になった年に、祖父が病に倒れる。そこで彼女に告げられたのは、彼女の両親はまだ生きているということ。彼女の両親がいなくなったのは彼女の治癒能力の高さにも関係があるということだ。しかし、それ以上のことは言わないと両親と約束しているということだった。真実を知るために、そして両親に再び会うために、彼女は広い世界を目指した。そして、冒険者という職業を見つけたということだった。


「それなら、せっかくだし、カグラの両親探しも一緒にやらない?」


アリサが提案する。


「い、いえ、これは私の問題ですから皆さんを付き合わせるわけにはいきません。それに、本当にまだ生きているかなんてわかりませんし…」


カグラが俯いた。


「遠慮するなって、もうカグラは俺たちのパーティーの一員だろう。困ってることは、互いに助け合わないと」


なアリサ。そう言ってアリサに視線を送る。


「そうよ!それにカグラちゃんはお父さんお母さんが生きていると信じてこんなに危ない世界に一人でやってきたんでしょ?」


アリサがカグラを見つめる。その視線にはとても強い力が感じられた。


「はい!」


アリサの視線に押され、カグラも強く答えた。


「じゃあ、利用できるものは全部使わなきゃダメ!強い意志があるんだから遠慮はいらないよ!」


アリサの言葉にカグラの目が潤む。そしてカグラははっきりと答えた。


「はい!私の両親探しを手伝ってください!!」


アリサとソーマは微笑む。


「もちろん」


ソーマたちには新たな目標ができたのだった。


そうこうしているうちに、リーフェ村の監督官の元についた。

カグラは、出発時点でまだソーマたちのパーティーに属していなかったため、昇格のためには別のマンドラゴラが必要である。ただ、今回はマンドラゴラの群生が、災い転じて吉となした。大量だったので、カグラに渡す余りがあった。


ソーマたちが大量のマンドラゴラを出すと周りが一気にどよめいた。


『こいつらマンドラゴラをこんなに』


『それで無傷なんて信じられない』


どうやら、マンドラゴラといえどもこの量は規格外らしい。


「君たち、呪いは大丈夫?」


「軽い呪いにかかっちゃったけどそこのヒーラーに直してもらったから大丈夫だよ」


「こんなに大量のマンドラゴラを相手にして『軽い』呪いで済むなんて…それにその呪いを一瞬で解いてしまうヒーラー。今回の昇格試験は有望なやつが集まったな」


隣を見ると、カグラも報告を終えたようだ。もちろんあの男たちの報告も忘れない。きっと免許剥奪くらいの処分は下るだろう。


こうして、昇格試験は見事に合格することとなったのだ。



ソーマたちは、王都に戻った。マンドラゴラは薬草としても重宝するため、余った分は売りに出した。なかなか貴重なため、市場価格も高い。そのため、なんと、中銀貨1枚を手に入れたのだ。


「カグラ、ただいまー」


「ソーマさん!おかえりなさいなのです!」


カグラは、空いているカレンの部屋を借りている。


「アリサのところに飯食べに行くぞ」


「はい!なのです」


二人はアリサの両親が経営するローウェン食堂に向かった。


食道ではアリサとカレンが待っていた。とりあえず、Cランクになってから、何をするか話し合おうということだった。


「さてどうするか…」


ソーマがみんなの顔を見る。


「はい!」


手を挙げたのはカレンだった。


「せっかくお金も入ったんだし、まずは装備を整えるべきだと思いまーす」


「そうね。確かにソーマのそのぼろ装備はそろそろ変えた方がいいかも」


「ぼろ装備とは何だ!?」


しかし、装備が重要なのは確かだ、まとまったお金もあるし、みんなで買い物にでも行くか。


「じゃあ、明後日、みんなで買い物に行くぞ!」


「「「「おおー!!」」」」


極貧生活から抜け出した喜びをかみしめるソーマであった。

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