前方部にはV字溝があったらしい
雄治は頷き、クルマを走らせた。
確認したルート通り三km弱進み、九州電力柏田変電所の北側に辿り着く。
「多分、これやっとよ」
「う~ん……。ただの林にしか見えないね」
「変電所の西側も古墳っぽく見えるっちゃけど、日高氏の本には『変電所の北側』ち書かれちょる。じゃっで、こっちン林のどこかやろな」
林の周囲はほぼ、田んぼや畑のみ。雄治は林を周回する小道にクルマを停めた。
つまり当日、短時間クルマを停める場所には困らないと判明。ただしクルマが丸見えになるため、やはり車両を覆うカバーを買っておいて正解だったかも。
二人は暫く林の外側を巡り、観察してみたが、墳丘墓らしきものは見当たらない。陽が落ち、辺りも暗くなってきたため、今日のところは諦めて引き上げることにした。
「もう一度本を借りて、記述をよく確認するわ」
と雄治が言うので、市立図書館に立ち寄り、
外が真っ暗なのを幸い、あたしと雄治はアパートの駐車場で、車のカバーを手早く被せたり取り除く練習をした。数秒でスムーズに出来るようになったので、ひとまずその日はお開きとした。
その翌日は、百円ショップに立ち寄ってシール台紙を買った後、雄治のアパートへ。
何故かというと、昨夕瓜生野の林の脇にクルマを停めた時、
「やっぱどうしても目立つよなあ……」
と、すっごく気になっちゃったんだよね。なので寝る前に色々対策を考えたんだけどさ。色々と目立つシールを貼ったり剥がしたりすれば、それだけでも結構印象を変えられるんじゃないか……って思ったの。
雄治のPCで、車のパーツメーカーのデカール画像を探し、いくつかシール台紙に印刷してみた。レース用車両みたいにそういうのをベタベタ貼りまくったら、随分イメージが変わるじゃん。
それからパンダやクマさんの画像を探し、これまた拡大印刷してみた。あと、ナイショなんだけどナンバープレートのサイズをメジャーで測り、ナンバー偽装シールなんかも幾つか作ってみた(汗)
必要に応じてそれらを貼ったり剥がしたりして、目撃者に対するイメージ撹乱を図るわけ。どれ程効果があるか、心許ないけどね。
昼前までかけてシールの準備が出来たので、ふたりは再びクルマで瓜生野に向かった。
少し離れた病院の駐車場にクルマを停め、数百m歩いて墳丘墓探しを行う。
「前方部にはV字溝があったらしい」
昨晩雄治は日高氏の本を読み、そういう記述を見つけたんだとか。それを取っ掛かりに、四時間程歩き回って一応墳丘墓らしき場所を特定した。いや、あまり自信はないんだけどね。――
あらためてクルマの駐車位置を検討し、生目一号墳からのルートを再確認した。
「今出来ることは、ここまでかなあ……」
ということで、その日の作業を終えた。雄治のアパートに戻り、計画の詳細をまとめて敬太郎君と智ちゃんにメールした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます